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バルーン空撮[技術解説] - 機材開発例:レンズマウント

ペンタックスのデジタル一眼レフに、ニコンマウントのフィッシュアイレンズを取付

株式会社 0 は技術開発空撮会社です。
空撮業界では珍しい自社で撮影機材を開発している会社です。
開発は空撮用バルーンから専用車両まで多岐にわたります。
時にはカメラやレンズなどの撮影システムその物も市販品から改造を行い用いる事もあります。
ここではその様な開発業務の一部をご紹介します。

はじめに:ペンタックスニコンマウントレンズを取り付ける

Kマウントに改造されたFマウントレンズ

CubicVR撮影の必需品:シグマ全周フィッシュアイ

このレンズはバーチャルツアーなどの撮影を行う会社てば必需品とされるレンズです。

シグマ(レンズメーカー):フィッシュアイ8mmF4
航空写真ナビの全て。
パノラマ空撮などの多くはこのレンズにて撮影されています。
このレンズは非常に優秀なレンズなのですが欠点があります。
それはキヤノンとニコンのカメラ用しか販売されていないという実態です。
(他社マウントも発表されていますが販売されていません。2008年6月現在)

フィッシュアイ EFと改造Kマウント

メーカー間の互換性はありません

デジタル一眼レフのレンズはメーカー間の互換性はありません。
同じメーカーの同じ時期に販売されているデジタルカメラ間でも互換性が無いこともあります。

この写真はシグマ8mmフィッシュアイの、「キヤノン用」と、「ニコン用(改造済)」です。
取付部分の大きさや形状などが全く異なっています。
取付部分の大きさ
キヤノン > ペンタックス = ニコン

夜景パノラマ空撮の為に開発

2008年6月現在、夜景パノラマ空撮(CubicVR含む)の機材開発を行っています。
この開発は以下の3パートから形成されています。
 ・専用バルーン (夜景撮影時に上空で止まること)
 ・専用カメラ搭載システム (振動を吸収する)
 ・専用カメラ (暗くてもノイズが少なく、ブレの無い撮影する)

0[Zero]が今まで夜景分野に進出していなかった理由のほとんどは上記の3要素の中の、「専用カメラ」の成熟不足に起因していました。
2008年に入り、このデジタル一眼レフの分野で合格点が出せる物が出てきたことから、本格的な夜景パノラマ空撮に着手しました。

手ぶれ補正付のボティにはフィッシュアイが取付できない

手ぶれ補正付・暗所ノイズに比較的強いカメラが2008年春に発売されました。
ニコンにはD3という暗所ノイズに強いデジタルカメラが昨年から販売されているのですが比較的重いことと、手ぶれ補正が無いことが欠点です。
弊社でも、空撮用デジタルカメラの本命はニコンと睨んでいるのですが2008年6月現在は軽量ボディが販売されていないことから機材開発を行えません。
そこで、ペンタックスK20D(実売価格10万円程度)をテストとして採用することになりました。

問題発生
2008年6月現在はペンタックス専用のシグマ8mmフィッシュアイは発表されています。(ネット通販などでも販売されています)
しかし・・・製造がされていませんでした。
発注後に、商品が届かないことから通販店舗に確認したところ・・・「店舗に入ってくる目処が経っていません」との回答でした。
既に、弊社のホームページでは、「7月から夜景パノラマサービス開始」の告知をしています。
問い合わせなども入っていることから、「機材が揃わないので、サービス開始を延期します」とも出来ません。
そこで、ニコンマウントのシグマ8mmフィッシュアイをペンタックスに取付という、一般的にはあり得ない改造に着手することになりました。

※この種の改造をおこなうラボも存在するのですがこの程度の簡単な改造なら社内で可能と判断しています。

フランジバックの調整とマウントの一部改造で対応可能

ニコンとペンタックスは非常に似通ったマウント(レンズの取付部分)形状と、基本設計となっています。
ちょっとした改造(普通の空撮カメラマンはこの様なことはしません)で、レンズスワップが可能です。
一般的に、ニコンのレンズはキヤノンのボディへの移植が容易です。
ペンタックスのレンズもキヤノンのボディへの移植が容易です。
しかし・・・
ニコンとペンタックスは設計が近すぎる為に、スワップを行えません

今回は設計が近い事を逆手に取りました
通常なら、変換マウントと呼ばれる、各規格を橋渡しするアダプターを用います。
ニコンとペンタックスはアダプターの隙間が確保できないために使えません。
仮に取り付けたとしても、超広角レンズであるフィッシュアイではピントが合いません。

フランジバックの差は0.9mm

ニコンとペンタックスは似すぎている為にアダプターが付きません。
つまり・・・
フランジバックと呼ばれるレンズ面と受光部分の距離が近いのです。
その差は0.9mm
狭すぎる為に変換アダプターがつくれないのです。

ここから改造のポイントとなります。
バルーン開発では1mm厚のアクリル板を用います。
これをレンズ無いに組み込めば・・・理論上はニコンのレンズがペンタックスで使えるハズです。
0.1mmはレンズ内のピント調整で回避出来る範囲です。

レンズの軽量化

空撮機材は軽量化も必要

バルーン空撮を含め、空撮の機材は軽量であることが重要です。
今回はレンズの内部まで分解することになるので、同時に軽量化も行いました。
夜景撮影専用レンズと言うことから、絞りは固定値を用います。
つまり、通常の撮影では調整することが必要な絞りは触りません。
そこで・・・絞り関係の部品は軽量化の一環として外しています。
これで、13.0gの軽量化です。
ヘリウムガスの量に換算して13L。
車載式バルーンで高画質を狙う、弊社では貴重な13g軽量化です。
レンズ無いの遮光対策例

総合的な開発知識を要求されます

レンズの内部には画質を向上させるための改良も施されます。
白いテープは振動防止と軽量化の為に外光が入る可能性が出てきたため、それを押さえるために貼られました。
重量増の要素なのですが「増える重量」と、「向上する画質」の兼ね合いを考えた結果です。
この様な改造を行うには接着剤や両面テープの物理特性も理解する必要があります。
用いる材料の耐熱性能や「どのような力に弱いか?」などが具体的な性能です。

改造の結果

ペンタックスマウント対応シグマフィッシュアイ

今回の改造の結果、ニコンマウントのフィッシュアイを手ぶれ補正付のデジタルカメラ=ペンタックスK20Dに取り付けることが可能になりました。
バルーン空撮は行っていないのですが手持ち撮影では手ぶれ防止の効果が確認出来ました。

K20DはAPS-Cクラスではトップクラスの暗部ノイズの少なさを誇ります。
ボディ内手ぶれ補正も、8mmまで対応し、超広角では4段の手ぶれ補正が期待出来ます。
この様な性能向上を積み重ねると、現在メインで用いているキヤノン5Dよりも4~6段の高速シャッターを切れることが地上テストでは判明しました。

撮影内容により、3本の、「同じレンズ」を使い分ける

各種シグマ製フィッシュアイ

このレンズは全て「シグマ:8mmフィッシュアイ」です。
2008年6月現在、3本を所有しています。

右奥は、「ペンタックス・ニコン=夜景空撮用」
左奥が「キヤノン=雨天空撮専用」
手前が「キヤノン=晴天空撮専用」

同じ画角(8mm)なのですが業務では3本のレンズを用います。
撮影目的により、ベストなカメラボディとレンズは異なります。
0[Zero]では、「世界初」というコンテンツを多く独自開発しています。
その陰には有形・無形の資産の蓄積の上に成り立っています。

公開日:2008/06/23
最終更新日:2013/04/03
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