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バルーン空撮[技術解説] - α7RⅡ狂想曲:その6 バルーンを独自開発する空撮会社

バルーン本体のセッティング修正。0 [Zero]は、バルーン開発が出来る空撮屋です。

注意:
このページを含む、「α7RⅡ狂想曲」と題される全てのページは、0 [Zero]の業務に特化して述べられています。
それは、「幅20mのパノラマ画像を近距離で鑑賞」という用途・・・
具体的には、「高層タワーマンションのモデルルーム」や「コンコース」に用いられるパノラマ画像です。
同業者には大変参考になる内容かと思います。
それ以外の方には、「こんな世界もあるんだ・・・」程度の軽い気持ちでご覧下さい。
真剣に読むと疲れると思いますので・・・

バルーンを独自開発する空撮会社
バルーンを独自開発する空撮会社

←2014年10月撮影
2015年10月に大規模な改修が入った事から、一世代前のバルーンとなりました。

2015年8月から、α7RⅡ(4,200万画素)にて数本の実務をこなしています。その結果、一世代前のセッティングでは画質面で不利となることが判明しました。
α7R(3,600万画素=旧カメラ)では問題とならなかったバルーン・スタビライザーの設定でもブレが目立ちます。
今回の、「狂想曲」は撮影枚数を多くすることにより歩留まりを良くしようという考えがスタートです。
画素数・撮影枚数が多くなることから、撮影から画像加工までの機器がすべて見直されています。
一枚の超高解像度パノラマの製作に必要な素材の容量は、従来の数倍という単位にふくれあがっています。
SDカードからパソコンまで、2015年現在で最高レベルの機材を導入することにより解決の目処は立ちました。
しかし・・・
まだ、改善の余地は残されています。
具体的には、撮影素材の歩留まり向上。
つまり、撮影機材のブレも低減させた方が良いことは言うまでもありません。
ここから、重要な撮影機材であるバルーン本体の改修に入ります。

今回の大規模メンテナンスでは、以下の様な修正が施されました。
・第2垂直尾翼の撤去
・水平尾翼の角度修正範囲拡大
・係留ヒモの調整範囲拡大
・ヒューズ位置修正

今までは、風速3m/s以下という条件下の夜景素材の歩留まりを狙っていました。
※第2尾翼は、風速1m/s以下の対策部品
この点に関しては、直近の改修で採用されたブラシレススタビライザーにより解決と判断。
ヨー軸に関しては諸事情から開発が遅れます。
ここを、バルーン側のセッティングで解決したということです。

・・・?
ほとんどの方には、ちんぷんかんぷんな内容です。
今回の改修内容の意味が理解出来るのは、自身で設計・製作の出来るバルーン空撮のエンジニアのみ。
つまり・・・国内には皆無という事になります。

実は、2015年現在では、0 [Zero]のバルーンと似通ったデザインのバルーンが国内に流通しています。
拝見したところ、2009~2011年頃に0 [Zero]が用いてたデザインをコピーしています。
ただし、重要な部分はなぜがコピーされていません。
具体的には、「迎角で揚力をコントロールする」
この際に、前後重心位置の移動機構が必要。
「水平尾翼の角度調整で、弱風から強風まで一つのバルーンで対応する」
ここは、水平尾翼のアップコントロールが必要といった部分です。
詳細に機構などは公開していないからなのか・・・
それらのバルーンには、この様な重要な機構がコピーされていません。
従来の常識よりも後端に設置する尾翼なども、重心の可変機構があって活かされる形状なのです。
素人目には似ているのですが、「0 [Zero]のバルーンの劣化コピー」と呼ぶべきバルーンになってしまっています。
なお、「車載の為に妥協しなければならなかった形状まで、コピーされています」
具体的には、バルーン本体の後端の形状(三角の部分)
車載するというコンセプトから、この長さは理想的な形状から短縮されています。
故に後端に乱流が発生しやすい。
それを整流する目的としての、第2垂直尾翼なのです。
現場でヘリウムガスを廃棄するなら、ここはもう少し伸ばしてスパッと切るのが正しい設計です。
空力を意識したハイブリットカーの後端処理を観察すると良いと思います。
コピーするにしても、この部分は避けた方が良いと思うのですが・・・
現状の劣化コピー品で、「飛びが悪い」と評価されるのは心外です。
どうせやるなら、完全コピーを目指してください。

1年ぶりのガス抜きメンテナンス
1年ぶりのガス抜きメンテナンス

←メンテナンスが完了して、車両に持ち込んだ状態です。
メンテナンスはバルーンからヘリウムガスを抜いた後に空気を充填し、数日間を掛けて実施されています。
まずは、重心位置の調整範囲の拡大の改修。
その後に、ガスストップ性能の確認となります。

この時点で実務投入から1年以上を経過したバルーンですが、ガスストップ性能も新品の状態を維持していました。
0 [Zero]でも、バルーン空撮初期には外注が制作したバルーンを用いていました。
それらは、ガスの充填から数時間もすると目視できるほどのガスの抜けが確認できる粗悪品でした。
2015年現在の0 [Zero]のバルーンは、その当時の品質とは比較にならないほどガスストップ性能が向上しています。

ガスストップ性能
ガスストップ性能の証明

←車両内でヘリウムガスの充填中。

場所は、弊社の事務所(山梨)です。
次の仕事は数日後に神奈川で予定されているのですが・・・
撮影の数日前でもヘリウムガスを入れています。
つまり、現場でヘリウムガスを入れないのです。
恐らく、同業者が驚くのは、この事実かと思います。
2015年現在の、0 [Zero]のバルーンはヘリウムガスのガスストップ性能がここまで向上しています。
仮に、1ヶ月間ガスを入れたままにしても、空気混入は0.5立米以下となることは、過去のデータから確認されています。
この程度なら、現場メンテナンスにて即時に適切なデータに戻ります。

なかなか見る機会もないかとは思いますが、アドバルーンや普通のバルーン空撮会社の撮影現場を確認してみてください。
その周囲には、長さ1mを超えるヘリウムガスのボンベが存在するハズです。
長時間の撮影では、徐々にヘリウムガスが抜けていきます。
これを補充する観点からガスボンベが用意されているのです。
なお、0 [Zero]の実務では、この逆です。
朝一番で、バルーンの最大までヘリウムガスを補充します。
その後、気温が上がってくるとガスが膨張することから、現場にてガスを抜きます。
夜景の撮影がなければ、この状態のままで夕方まで補充は必要ありません。

まとめ

撮影会社にもかかわらず、「バルーンの設計と製造が出来る」
その性能は、世界トップクラスと・・・

これが、他社と0 [Zero]の最大の違いです。
7立米クラスで恒久的な車載式バルーンを自社で開発した事が最大のトピックスです。
そのバルーンも2008年頃に一定水準に達した後は、大きな進歩はありません。
そして、今後も大きな進化は無いと予想します。
理由は、「ヘリウムガスも空気も、本質が不変だから」です。
風を揚力に変換するという設計を実現して8年が経過しています。
エバール・カーボンなどの新素材をすべて投入しました。
今後も素材の進化により、軽量化は進められますが・・・ここから10%の軽量化は非常に困難です。
100年後も、2015年現在のバルーン性能から大きく進歩しないという根拠が、ここにあります。

このページにも記していますが、0 [Zero]のデザインをまねたバルーンは、国内に普及しています。
しかし・・・肝心な部分がコピー出来ていない劣化品です。
それらにアドバイスをすると・・・

・バルーンの下腹部で迎角を設定
・尾翼や係留ロープは迎角を保持するという考えで設置
・水平尾翼は、ガス揚力と迎角揚力のバランスを取るという位置と角度へ
・バルーンの後端は、乱流を生まない形状とする
・カメラ重量と、そのときの風の強さから迎角は適時に現場修正

上記が普及している劣化コピー品の改善点です。
並び順に改善していくと、性能向上が目で見えると思います。

公開日:2015/11/09
最終更新日:2015/11/09
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37) α7RⅡ狂想曲:その6 バルーンを独自開発する空撮会社
36) α7RⅡ狂想曲:その5 レタッチャー用ワークステーションのテスト開始
35) α7RⅡ狂想曲:その4 今までは空冷でした・・・
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