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ドローン空撮[技術解説] - DJI WooKong Mのトリムズレ

DJI
DJI搭載

今回のラジコン空撮再開で鍵を握るキーワードは、「マルチコプター」
このマルチコプターの制御部分に重大なトラブルが発生しています。
専門的(同業者向け)な内容となりますがご了承ください。

DJI WooKong Mとは?

ジャイロやGPSを用いた飛行安定装置の定番です。
マンション眺望撮影や遺跡調査の従来型ラジコンヘリコプターにも多く採用されています。
パイロットの技量の差を埋めてくれる「魔法の装置」とも言えます。
納品時のトリムズレの量
納品時の疑問

←この画像は、外注先のラピド工房(外部リンク)から納品をされた当日に撮影しています。
フライト記録をみると、8分間(バッテリー2本)のフライトを終えた直後に撮影されたようです。
納品時のチェックは、問題なし。
納品直後の、私のフライト(ホバリングのみ)でも問題なし。
通しの5分間のホバリングでも、半径1mの範囲で留まっています。

納品時にトリムに関しての説明は受けています。(トリムを触らないと設定できないという内容)
従来型のラジコンヘリコプターでは、機械的に調整が可能です。
しかし、マルチコプターでは、「黙認するしかないな」と思っていましたが・・・
このズレの量は、無視する事が出来ないと感じ、この画像を撮影して外注に問い合わせていました。

結果としては・・・
この状態で、管理ソフト上(この時点での最新版と、一世代前にて確認)は、ニュートラル。
実際にフライトしても問題無しなので、ハードウェア的に問題無しという結論に至りました。

動画撮影テスト中
トリムズレを確認

12/15に、微風条件下にてフライトテストを行っています。
その時に、GPSにてホールドしていても、一定方向に走るという現象を確認。
エレベーターとエルロンに微量ですが発生しています。
これをトリムにて調整し、GPSホールドでも位置が安定することを確認。
そして、サンプルムービーを撮影しています。

この時に敢えて送電線の近くでテストを実施。
最初期のデーター取りの状態ですので、トリムズレが発生したことをフライト記録に残してテストを終了しています。

フライト前
トラブル発生

12/16の早朝のテストにて問題発生。

この段階では、マルチコプターの扱いも慣れてきたことから飛ばし方も大胆になってきています。
テスト場所は、事務所(周囲に民家無し)なので、目の前のホバリングなども挟まずに、一気に上空飛行を開始しました。

20m程度一気に上昇。
その後、上空を走らせると・・・
まっすぐ飛ばない。
そこで、高度20m程度にてGPSホールドに入ったところ・・・
結構な勢いで、想定外の方向に流れていきました。

昨日のフライトテストの様に、手動にてトリムあわせ開始。(高度20mのまま)
ピッ・ピッ・ピッ・ピッー

上空にてエレベータートリムを使い切ってしまいました。
後進方向のトリムを使い切っても、機体が緩やかに前進しています。(GPSホールドのまま)
現象を確認し、対面にして機体を戻し解析開始。
エレベータートリムを後進方向に使い切ったことが確認出来ました。

ケツホバ(後ろから見た基本のホバリング)しか出来ない方は、機体を暴走させる切っ掛けとなりえる現象でした。
「初心者は、上空でトリム調整をしないから事故にならない」と言うかもしれません。

少し思いでしてください。
前日にフライト調整をしたのが上級者。
当日に初心者が一人でフライトを行ったなら、このパターンで暴走事故が発生します。
空撮を業務とするレベルの方では、起こりえない事故です。
しかし・・・
アマチュアが河川敷で空撮。
機体は、プロ(ショップがセッティング)などというパターンで事故に成り得ます。

ショップでは、DJI WooKong Mを初心者に販売しないという方向で動いているようです。
少なくとも、0 [Zero]が使っているラピド工房はその方向です。
しかし・・・
独学で、海外からパーツを取り寄せる(近くでサポートする方がいない)などという中級者クラスが心配です。
ネット(国内)でDJIに関して調べると、「マニュアルモードで舵が入りすぎる」などというコメントを見受けます。
もちろん、フライドモード毎に適切に設定を行えば、マニュアルモードでも普通にフライトできます。
つまり・・・
従来型のラジコンヘリコプターを一通りセッティング出来ないレベルの方がマルチコプターに手を出していると判断出来ます。

マルチコプターを含めて、ラジコンヘリコプターに臨むには、それなりの技術が必要です。
基本を蔑ろにしたGPS自動操縦などは、非常に危険なことです。

公開日:2011/12/21
最終更新日:2014/12/05
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