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ドローン空撮[技術解説] - マグネシウム合金が理想的なマルチコプターフレーム材

マグネシウム角パイプ
マルチコプター マグネシウムフレーム

ここからが機体開発の本番

既に、最初の業務機体が稼働開始。
ここで、公約通り(27) DSLR搭載機開発の一時凍結)
軽量オクトコプターの開発・制作を開始しました。

マルチコプター開発着手から4ヶ月経過しています。
今までは、「基礎的な技術蓄積」が目的です。
可能な限り市販品をベースとし、一般的なマルチコプターの信頼性・画質などを中心に研究していました。
これにより市販品の限界はある程度わかりました。
ここからは [Zero]独自の研究を形にするステージに入っています。

0 [Zero]オリジナル機体となる最初の1台目はマグネシウム合金のラダーフレーム機。
下で詳しくマグネシウム合金に関しては解説しますが・・・

軽量・高画質・より高い安全性

マグネシウムは、「この全てを同時に叶える唯一の素材」であると考えています。
材料・フレーム形状に共に特許性は無し。
制作中の状態でも、どんどん公開していきます。

フレーム重量

マグネシウム合金とは?

・実用金属では比較的軽量(比重はアルミの2/3)
・振動吸収能力が特に優れる
・比熱が小さい

これがマルチコプターに用いると仮定した場合の、マグネシウム合金の優れた点です。
振動吸収能力が高く、アルミよりも軽い
まさに、マルチコプターにベストな材料と言えます。
なお、「実用金属でもっとも軽量」などという記述がありますがマグネシウムリチウム合金の方がさらに軽量です。

←今回の機体に切り出されたフレーム材。
軽め穴などが空いていない素の状態です。

◆マグネシウム合金の欠点
・入手性が悪い
・加工に一部注意が必要(火災対策)
・薄物の制作が困難
・具体的な成功例が示されていない

調べた限りはマグネシウムフレームのマルチコプターは発見出来ませんでした。
実機では長い歴史があり、近頃は車両やパソコンなどの採用例も多い。
そして、「デジタル一眼レフのフレーム材」の定番。

私が想定できていない、隠れた欠点があるのでしょうか?

なお、肉厚を薄く出来ない事が欠点なのですが振動吸収の観点から、「設計で生かせる」と捉えました。
過去の経験からエンジンを搭載するラジコンヘリコプターのテールローター回りの振動は、カーボンよりもアルミが少ない。
アルミの場合も厚みがあるパイプほど振動は少ない。
今回のマグネシウム角パイプも、アルミ材の機体よりは総重量は軽く。
振動吸収に関する部材は長く・厚く。
この様なイメージから選定されています。
アルミより肉厚があることから、パイプフレームその物の重量は確実に重くなります。
それを、関連部材(モーターマウントなど)の省略と、合理的なフレーム配置で解消。
軽め穴が空けられる分は従来型フレーム構造よりも軽量に出来るという狙いです。

2.0kgクラスに使われているマグネシウム この機体のカメラマウント部分はマグネシウム合金(AZ31)が既に採用済み。
カメラに近い部分を中心に防振対策として、積極的にマグネシウム合金が採用されています。
なお、軽め穴が不均等に空いているのはここで左右の重量バランスを調整していたから。
高画質の為にはバランス取りなどの基本的な部分をしっかりとする事が大前提。
小手先の防振対策では結果は出てきません。

このジンバルも開発途上。
仮に、この形状が高機動タイプのベストのジンバルという事になれば・・・
キチンと作り直します。

なお、脚などは市販品のアルミ材です。
アルミと比べると濃い色になってるのがマグネシウム合金。
酸化が進むと、色はさらに濃くなります。

新規開発機体の細かな仕様

・振動伝達経路を長く
振動発生源であるモーターから、カメラまでのフレーム長を意識的に長く設計します。
これにより、カメラ側に伝わる振動を限りなく低くすることが狙い。

・防振装置のレス化
フレームに防振機能を持たせる観点から究極には防振システムを搭載しないことが目標。

・「高機動タイプ」と、「静タイプ」の両運用
撮影システムの取り付け部分を規格化。
今後開発される撮影システムは機体間での移植を前提に開発。

・折りたたみ可能
バルーン空撮との同時実施に対応するため、一部を折りたたんでペカンケースに収納。
ペカンケース(1650)発注済み。

・降雨・降雪は未対応
軽量穴が多くなる事と、軽量化の観点からカバーを用いない為。

・墜落時の衝撃吸収コンセプトの開始
軽量化の次の流れとして考えているが墜落時に衝撃を吸収するというコンセプト。
そのデータ取りをこの機体から開始。
この機体の設計時から、「墜落の際にはどこを潰すか?」をイメージしています。
※余裕が出来た段階に実機クラッシュテスト実施予定

コラム:考え抜かれた形になっていない

バルーン空撮の技術解説などで、自分でバルーンを開発した切っ掛けを
「海外製バルーンは実務で鍛えられた凄味はあるが、考えた抜かれた形状になっていなかった」と述べています。
その当時のバルーン初心者の、私の目からも開発余地が多数点在していました。

実は2012年現在のマルチコプター空撮機材にも、同じ事が当てはまります。
世界中の様々な業者が自由に機体を開発しているようなのですが・・・
本質に目を向けずに、「売れる機体」を考えているとしか思えませんでした。
マルチコプターの用途としては空撮が多い事は周知の事実。
この空撮に必要な機能を、本気で形にしようという思いが市販の機体からは伝わってきません。
※一部の個人制作機体は除く

事実として、2.0kg程度のフライト重量で、画質面で文句なしという機体は一つもありません。
もちろん、2.0kgでカメラを搭載してフライト可能な機体は難しくありません。
しかし、撮影現場で、「そのまま使える」素材の撮影は出来ません。

0 [Zero]が最初に実務を行ったのはラピド工房の3万円程度の安価な機体がベース。
調整・選別は行っていますが基本的な部分は市販品。
これに、0 [Zero]製のジンバル(磁気ダンパー採用)を取り付けただけです。
大きな差は搭載カメラ専用にバランス取りがされた0 [Zero]のジンバル。
市販品ベースの、「調整」では到達出来ないレベルです。

何を言いたいか?
機体は高価な、「○○オリジナル」の様な機体は必要ありません。
もちろん、防振システム・・・とか、不必要に高価な物も不要。
基本に忠実にシンプルな機体。
それに、そこそこ高価な自律安定システムを搭載すれば、ここまでの動画は撮影出来ます。
これにスタビライザーを付ければ、普通のプロと同等の撮影が即時に可能です。
送信機・カメラ・スタビライザーで30万円で十分と言えるでしょう(2012年3月の相場)
安全なフライト管理には最終的には自身で全てが出来なければいけません。
安価なホビー用の機体で経験を積んで、その時のご自身の考えで機体をバージョンアップしていくのが正しい方向かと思います。
0 [Zero]では総額30万円以上(Wookong_M搭載)の機体は不要であるとコメントします。

ならば、0 [Zero]はどこに行くのか?
それは軽量化を根拠とする安全性の追求です。
どこまで突き進めても、墜落の可能性はゼロになりません。
暴走などのリスクに目をつぶって飛ばすのは偽善者のする事。

プロならば全ての責任を背負って日の当たる場所で飛ばす。

この責任を取るには自身で生み出した納得出来る形状のマルチコプターしか無いと確信しています。
フレームの軽量穴の位置から、ネジの長さまで意味を持たせる合理的な機体。

最初から完璧な物などつくれませんが理想に近づいた機体がまもなく完成することは間違いありません。

公開日:2012/03/07
最終更新日:2013/02/23
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