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ドローン空撮[技術解説] - 軽量マルチコプターだから出来ること

軽量マルチコプター
マルチコプター 高地対応テスト

プロペラのサイズダウン弊害の確認

この前日に、2.0kgクラス 6モーター [高機動タイプ]の比較的大規模な軽量化が実施されています。
内容はプロペラのサイズダウン。

◆メリット
・重量30g減
◆デメリット
・操縦フィーリング悪化
・対風性能低下(10m/s以上でのフライトは困難)
・夏期は高温対策が必要となる
・プロペラノイズは増大

明らかにデメリットが多い。
しかし・・・軽量化を強行している。
機体には軽量化の余地が残されています。
このタイミンクでプロペラに着手したのは夏期にはサイズダウンプロペラのテストを確実に実施したいという考えから。
開発が遅れるとプロペラの検討は半年先になってしまいます。(4月からは本格的な空撮シーズンにより開発作業は鈍化)
テストを繰り返した結果、元のサイズにもどる可能性は十分あります。
どのような結果になるとしても、キチンとしたデータ取り後の判断となります。

この日の前日にプロペラの検証を開始。
事務所にて、風速8m/sまではテストを実施。
その結果は・・・あまり良いモノではありませんでした。
趣味で飛ばすラジコンなら、即時に「不要」と判断するところです。
趣味という観点からはフライトフィーリングの悪化が最大のデメリット。
プロペラの剛性が落ちた事が原因なのか、送信機の操作から機体の反応までの遅れが増えてしまっています。
「モーターの下にゴムが入っている感覚」です。

なお、八ヶ岳は事務所の所在している山梨にありますが移動には一時間を必要とします。
この時間を掛けて八ヶ岳でテストを実施したのは・・・

プロペラサイズダウンでも高地性能が極端に落ちていないかの検証

内燃機関を用いないことと、カウンタートルクを打ち消す必要の無いマルチコプターは、理論的には高地に強い。
これを実際に確認する事が目的です。
通称「赤い橋」と呼ばれている「東沢大橋」は標高1,460m。
つまり、この場所で余力があるなら、高地対応に一定の評価を下すことが可能になります。
テスト結果としては、「問題無し」
風は1m/s前後なので何とも確定では無いのですが5m/s程度なら十分な安全マージンを持って実務に投入出来そうです。
それ以上の風は機会を見てテストを実施します。

八ヶ岳倶楽部

八ヶ岳倶楽部

赤い橋から、車で5分ほどの距離に八ヶ岳倶楽部があります。(弊社でWebサイトを制作しています)
この場所で標高1,300m。
過去にバルーン空撮のテストなどにも実施しています。

この日の二つ目の目的はこの場所での撮影の実施。
本命は夏と秋と考えていますが予行練習としてテストフライトを実施しました。

参考気象データ 2012年3月29日 11:10(大泉)
平均0.9m/s

使用機体:2.0kgクラス 6モーター [高機動タイプ]

サンプル動画:
使用カメラ : SONY cyber-shot DSC-HX9V
カメラ内手ぶれを補正 : アクティブ
モーションスタビライザー : 未使用
音声 : 未加工

八ヶ岳倶楽部

空への隙間

離陸場所から空を撮影した画像です。
まっすぐに上昇すると枝に接触することから、軒と枝を縫うように上昇していきます。

操作フィーリングの悪化はこの様な場所でのコントロール性能が落ちることを意味します。
撮影結果を見ても、スムーズにコントロール出来ていないことが自身でも確認出来ました。
操作フィーリングと機体重量のどちらを選ぶべきか?
これがテスト内容です。

撮影時は風速1m/s程度の恵まれた条件。
この様な風の中では障害物に1m以下まで接近してポジション取りをすることが可能です。
しかし、風速4m/s以上の条件では撮影は困難です。(障害物と1.5mの距離が必要)
なお、電線は樹木と比較すると撮影難度が落ちます。
人工物であることと、一定の太さがあることから視認が容易です。
この場所は太さもマチマチな枝。
枯れていますが背の高い草も点在しています。
想定外の場所に枝が飛び出している。
そして、これに接触というパターンが怖いところです。
電線などの場合は想定外が無いのが大きなメリット。

風の条件が実施の可否に大きく関わりますがこの様な場所からのフライトが可能です。

この条件ではフライト担当者も集中力を浪費します。
この日は4テイクほど同条件下での空撮を実施。
疲労度は通常の3倍程度のイメージを持ちました。
広い場所のフライトでは連続した実務撮影が可能ですがこの様な条件下ではテイク数は落ちる事をご了承下さい。

八ヶ岳倶楽部

通常営業中

撮影時も、周囲は特別な規制を行っていません。
←動画から
①の女性客
②のおじいさんと、お孫さん

YouTube動画でも、周囲の方が特別に気を張っていないのがわかるかと思います。
プロペラとモーターにより、独特の、「ウィ~ン」という音は発生します。
しかし、不快な音でないことがこの事からもわかると思います。
市街地では車両のエンジン音などにかき消されて飛んでいても気がつかない人がいるくらいです。

八ヶ岳倶楽部

飛行基準

0 [Zero]では飛行高度の1/3の範囲を立ち入り禁止としています。
最終的には操縦者判断となるのですが
30m上がる場合は機体直下の直径10m範囲に人が入らない事を条件としています。

近接空撮

八ヶ岳倶楽部 この日のフライト重量は2,015g
2,000g切り間近となっています。

使用しているカメラは十分な手ぶれ補正を搭載している60p対応として最軽量。
FPVなどと呼ばれる無線映像装置も未使用(電波法に合法な物は200g程度の重量)
まだ市販品をベースとしていますが脚部などもカーボン化完了。
十分な強風対応能力と、墜落時のダメージ軽減性能を両立。

他社は「落ちない」前提での空撮
0 [Zero]は「落ちる」前提での空撮

機体の信頼性の高さは他社とは別物であることがわかって頂けると思います。
その信頼性を生み出す研究の過程で行き着いたのが「少なくない確率で墜落・暴走は発生する」です。
それ故に、重量が4.0kgを超えるデジタル一眼レフ搭載機の開発を凍結。
実務の中で自律安定装置の信頼性に確信が持てた段階で、高画質化=重量機体 の開発を開始します。
安全性と信頼性を高いレベルに保ちつつ、世界トップの画質を極めます。

本題に入ります。
ここでのテーマは、「近接空撮」
人物や建物に接近する空撮を0 [Zero]では、「近接空撮」と呼んでいます。
実機は当然として、従来の産業用ラジコンヘリコプターでも不可能な撮影領域。
現実的な範囲の安全を確保しつつ、インパクトのある映像を撮影する。
それも、想定出来るあらゆる環境下にて・・・
バルーン空撮も含め、イベント撮影などの経験が長いからこそ、「安全性と同等にクレーム対策も大切」と考えます。
建物や人物に寄れることは当然。
それを見ている、周囲の住民などからクレームが入る事も防ぐ。
軽量且つ信頼性の高い機体と、確かなフライト技術を同時に備えている。
だからこそ、近接空撮の領域に踏み込むことが可能になる。

「軽量機体」+「優秀なフライト担当者」が近接空撮を可能にします。

これから0 [Zero]が研究するのは操作フィーリングと機体重量の最適解。
理想的には総重量1.5kg以下のオクトコプター。
答えには5年後くらいにたどり着くとぼんやりとイメージしています。

公開日:2012/03/29
最終更新日:2012/12/06
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1) マルチコプターの導入

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