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ドローン空撮[技術解説] - ノーファインダー撮影が操縦の基本

画像転送装置を持たないプロポ

「もっとも重要な機材はパイロット」

0 [Zero]ではこの様に考えています。
空撮のパイロットはカメラマンの能力も要求されます。
特にワンマンスタイルの機材ではパイロット=カメラマンです。

このページの主題は画像転送・ワイヤレス・FPVなどと呼ばれる、
撮影中の画像を地上に転送する装置(以降:画像転送装置)を用いる撮影スタイルに関して解説します。

T8FG

画像転送装置(FPV)の否定派です

←2012年12月現在の、0 [Zero]の送信機。
通常の空撮会社なら装着している、モニターなとが装着されていません。
今までの業務(テレビ関係を主として、バラエティからドラマまで)は全て画像転送装置を用いずに行っています。
つまり、全てノーファインダー撮影です。

ドラマ撮影などでは撮影後にデータをPCに転送してチェック。
OKが出てから次のシーンへ・・・
他社から見ると、非効率な撮影スタイルでした。

この点に関してはいづれは転送装置を取り付けて解決します。
その段階での主な目的はカメラチェック補佐と、ポジショニング精度を高める為。
フライトサポートという重要性は低く見積もっています。
多くの同業者と、考え方が根本から異なります。

開発着手から画像転送装置の採用が遅れていたのは開発優先度を下げていたから。
画像転送装置は安全対策よりも優先順位が劣るという判断からです。

2012年現在のマルチコプターは、10年ほど前の従来型ラジコンヘリコプターと比較すると操作もメンテナンスも容易です。
画像転送装置を用いる事により、さらに「簡単」になっています。
これはフライト技術の低い方でも空撮が可能になった事を意味します。
この機材に頼り切った方は軽度のトラブルを重大事故に発展させる危険性を持っています。
上空で暴走発生(0 [Zero]が経験した例)などの際には、経験が少ないとパニックに陥ります。
多くの未熟なパイロットは機体を高い位置に上げて墜落を回避。
頼りのGPSによるゴーホーム機能も空振り。
その後機体は迷走・・・

操縦レベルの低い方の安易な画像転送装置の採用は、非常に危険と0 [Zero]では考えています。

バルーン空撮

建築CGが0 [Zero]のスタート。
そしてバルーン空撮のスペシャリスト

「マルチコプター空撮で0 [Zero]の映像は他社とテイストが異なる」

機材は極めて軽量。
人物と接触しても重大事故に発展する心配が少ない。
これだけでは説明が付かない、「画からの力」 (某監督さんの談)
これが出来る理由を説明するには0 [Zero]の今までの経緯を説明する必要があります。

機材開発責任者(パイロット)は21世紀直前まで建築CGを業務としていました。
三次元的な空間認識能力の高さはこの頃に身についています。
仮想空間でカメラワークを一発で決める。
これが一般のパイロットには無い能力の一つ。

パイロット(開発責任者)はバルーン空撮をトップブランドまで育て上げています。
バルーン空撮業界も、画像転送装置を用いるが常識です。
この中でも、0 [Zero]はノーファインダーで全ての撮影を行っています。

◆バルーン空撮・他社:
画像転送装置からの映像を見ながらアングル決定

◆バルーン空撮・0 [Zero]
計算でアングル決定

バルーン空撮のサンプルは撮影困難な案件が多い。
バルーンを上げる位置は容易く変える事が出来ない。
被写体の大きさと、用いるレンズの画角から適切な引きの距離を計算しバルーンを準備。
被写体までの距離と、必要とする地平線の位置から俯瞰角度をジンバルに設定。
所定の高さにて、ノーファインダーにて撮影。
この一連を動きを即時に出来るのが0 [Zero]のパイロットの強みです。
2012年現在では各所の軽量化により余剰浮力も十分に獲得。
画像転送装置の搭載も可能なのですが・・・
特に必要性を感じない事から、ノーファインダーです。

この技術をマルチコプター空撮に応用しています。
開発当社は、マルチコプター空撮とバルーン空撮の被写体との距離(大きさ)の違いに慣れる事。
次の段階で、複数の被写体を繋いだときの時間の概念(機体の速度)を身につける事。
開発1年を経過した段階では「実際の使いの長さを考慮して大旋回の半径を決める」
ここまでの思考をしながら撮影を行っています。
実務では提示されたコンテの動きを物理的に出来るかの判断。
実際に実施した場合のメリットとデメリット。
そして、「狙い」にベストなワークの提案。

これが画の力が違いの理由です。

他社では画像転送装置からの映像を頼りにアングル決定。
0 [Zero]は狙いを考慮しつつ地上を観察。
そして、パイロットの立ち位置とワークを決定。
開発優先を下げていただけなのですが・・・
開発1年目はマルチコプター空撮に特化したパイロット能力を身につける為に、ノーファインダーにて撮影(訓練)していた年になります。
スチール撮影の入門を単焦点レンズでするのと同じ理由です。
最初から画像転送装置を用いると・・・
動けないカメラマンになるのは当然と言えます。

0 [Zero]が必要とする画像転送装置

カメラチェック様の画像転送装置はここで触れません。
ここで扱うのは独自の考えに基づく画像転送装置。

ワークのバリエーションを増やす為の画像転送装置。

これが0 [Zero]が必要としている画像転送装置です。
転送カメラは可能であれば2台搭載。
真俯瞰や真横。
後ろなど、他社では、「なぜ、そこが必要」と思われるような方向の画像を転送します。
これらのアングルを動かす必要性はありません。
離陸前に所定の方向にカメラが触れれば機能は達成出来ます。

・林のトンネルを抜けた後に急上昇
・水面ギリギリから、上昇する時の切っ掛け
・引きの距離を稼ぐ為に、後ろの林ギリギリまで後退

これらの撮影の精度を上げるには従来の画像転送装置や目視では不可能。
機体の真横・真上・真下などからの映像をフライトディレクタ(簡易人員ではアシスタント)に転送。
そこからパイロットに切っ掛けを与える・・・

「林のトンネルを抜けた後にルーズ」の撮影方法

これが0 [Zero]の考える画像転送装置の活用例。 アニメーションフレーム内の、「初めから見る」をクリック
素早く担当テイクを完了する必要がある、ドラマ撮影の現場を想定しています。
画像転送装置をあらゆる方向に動かしたいと考えるのは実務経験を重ねたからこその発想です。

なお、上記のテイクでも、無線転送装置のカメラを斜め下に向ければバイクに追従。
下方向に向けるとフレームインのタイミングの調整。
2012年12月現在はワンマンにて「カン」に頼っている部分の機械化も可能になります。

コラム:マルチコプターに順応したワーク

2012年現在はマルチコプターは従来型ラジコンヘリの延長としてワークが考えられています。
これは国内に留まらず世界的に同じ傾向です。
マルチコプターと従来型ラジコンヘリとの最大の違いがプロペラ接触危険率です。
引き受け加重を分散させることにより、同じカメラ重量ならプロペラの殺傷能力が劇的に少なくなります。
このメリットを最大限に活かそうとすれば・・・
人物への寄り。
ここに行き着くはずです。
このメリットを最大限に活かそうと、さらに考えると・・・
従来ではCGでしか実現出来なかったワークが実写で可能になる事を意味します。

0 [Zero]では最終形態として画像転送装置をワークの補助として使う方向で考えています。
理想的にはハイレベルのパイロットを3名用意。
パイロット+カメラマン+ディレクタ という構成。
パイロットとカメラマンはディレクタからの指示で操作。
ディレクタは機体に搭載された数台のカメラからの映像を元にフライト指示。
これを2.0kgクラスで実現するのが2013年から数年の目標となります。

なお、5.0kgクラス(重量級)の3名体制チームなら、ズームの活用を考えるのが当然と思います。
大きな機体で止まりが良いなら、「止まる機体で有利な演出を考える」のがプロ。
大きな受光部を、「売り」にするなら、フォーカスイン程度はクリアして頂かないと勝負にならないとも・・・

つまり、現在のところ2つの方向でワークは語る事が出来ます。
・軽量機体は寄り
・重量機体はクレーンの置換

軽量機体は現在の0 [Zero]が進んでいる方向。
表情が掴める圧倒的な寄りからルーズ。

重量機体はとにかく座りを良くする事。
そして、精度の高いカメラジンバルと関連器機によりクレーンと同じ機能をマルチコプターに実装する。
なお、0 [Zero]も重量級を無視している訳ではありません。
マルチコプターの特許出願は究極の座りを狙っての事。
ピン送りから、ルーズまでのトラックバック。
これを撮る事が出来る唯一の方法と考えています。
軽量機体の開発が一段階し、十分な安全面のノウハウが蓄積された段階で重量機に進出します。
特許出願の機構を重量機で実体化し、実務に投入。
この特許出願の機構を採用した0 [Zero]の重量機は・・・
物理的に暴走があり得ない事から、重量機にもかかわらず究極の安全性を有します。
5.0kgなどという殺傷能力を有する重量でも、人物への寄りを可能にします。
ピンやズームなどの操作が必要となることから、1名での操作は不可能。
現在のパイロットがカメラマン(兼ディレクタ)へ。
別のパイロットが機体操作に集中。
これで、CM撮影・映画撮影の仕事は他社の追従を許さないクオリティで提供出来ると考えています。

今後10年で2012年現在の重量機体の機能は、軽量機体に吸収されると考えています。
カメラや機体制御の進化が継続するのは当然の事。
赤外線や視差による姿勢制御が一般的になれば、軽量機体でも座りは良くなる。
今後10年で、プロが用いる機体の重量は軽い方向に動くと予測します。
バラエティー番組の撮影では1kg以下クラスが普通になると考えています。

HX30Vのフード

最後に、ラジコンの事はわからない、映像世界の方向けに補足します。
「マルチコプター空撮のプロと呼ばれる方は映像に関しては素人同然」と考えてい良いと思います。
例えば・・・
5Dkm3に、Lズーム搭載などというのが良い例です。
上空でズーム操作をしないのに重く、キレの無いズームレンズを搭載。

←0 [Zero]はコンパクトデジカメにて撮影しています。
しかし・・・
レンズフード装着。
各種フィルタも業務撮影中に頻繁に交換。
なお、このカメラ(HX30V)は本来はフィルターの取り付けが出来ません。
カメラ購入と同時にフィルターアダプター(自社加工)を取り付け。

5Dmk2分解中

今まではフィルター(フード)装着の事実を控えめに出していましたが・・・
今後は0 [Zero]の機体その物が露出する機会も増える事から、この段階で公にします。
0 [Zero]はフィルターもフードもカメラと同等レベルの機材として扱っていました。
オートアイリスだからこそ、ここを触るしか無かったとも言えるのですが・・・

←過去には5Dmk2も内部パーツを外すなどという方法で軽量化していしました。(バルーン空撮用)
0 [Zero]にとってはカメラ内部なども軽量化の対象。
なお、5D系列は初代からメインカメラとして導入。
まだ、ハイアマチュア用と思われたいた頃から積極的に、その画質を様々なコンテンツ(2007年撮影)で用いて来ました。
その2007年の例では自社開発のバルーンに5Dを搭載。
用いているソフトも完全自社開発。
バルーン空撮の最初期の実績です。
ちなみに、5Dmk2を分解して試していたのはミラーとペンタ部の取り外しの為。
ノーファインダー撮影では当然ですが不要です。
ここを軽量化して、その余力でニコンの1kgの広角ズームレンズ(ナノクリスタルコート)を搭載しようともくろんでいるところでした。

ここまで5D系を使い倒している0 [Zero]が・・・
未だに、5Dmk3を購入していません。
現在の5Dmk3の価格はデビュー当時の5Dの半値。
購入するカメラは明確に用途をイメージしています。
別のカメラが軽量で総合力が優れるなら・・・
レンズ資産など、迷わず捨てる事も躊躇いません。

公開日:2012/12/15
最終更新日:2014/09/01
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