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ドローン空撮[技術解説] - 「社員パイロット」の責任範囲

「雇われパイロット」の責任範囲
空撮ロケ現場

0 [Zero]では空撮部の社員を迎え入れる計画を進めています。
このページはラジコン空撮パイロットを主業務とする社員向けに書かれています。

マルチコプター空撮はリスクが付きまといます。
そのリスクは社用車の運転などとは比較にならない高いレベルです。
開発当初(2011年12月)から今までは0 [Zero]の代表が「開発」「メンテナンス」「フライト」の主要な業務の全てをこなしていました。 責任は一点集中であったことから、事故の際に誰が賠償責任を負うのかは明確でした。
今後は社員を向かい入れて2チーム体制を目指します。
これにより、今まで一本化されていた責任は分散する事になります。
2チーム体制となった場合に、Bチームの起こした事故の引責はどこにあるのか?
この部分を社内規定として明確化します。

事故の際には法人が一番大きな責任を負うという原則があります。
しかし・・・過去の判例(勤務中の自動車事故)からは社員側にも一定の負担を負わせている事も確認出来ます。
つまり、会社と社員で争っています。
ラジコンヘリコプターの事故が発生した場合に、担当パイロットに賠償責任が発生するなら・・・
安心して会社の機体を飛ばすことなど出来ません。
墜落原因がパイロット以外にある事はラジコンの世界では普通の事。
刑事罰の可能性がある空撮業務に携わるのに並の給料では・・・納得出来ないのは当然かと思います。

このページでは0 [Zero]の社内ポリシーを明記します。
マルチコプターを含むラジコン墜落事故では具体的な判例はありません。
そこで、自動車事故・航空機事故などの過去の判例を参考に社内ポリシーを選定しています。
万が一の場合はこのページのポリシーを元に賠償責任範囲などを話し合うこととなります。

注意:
このページは株式会社0の社内規定を記したページです。
もしも、他社に雇用されているパイロットが事故の際にトラブルを起こしても、このページを参考に解決出来るとは限りません。
※0 [Zero]の規定は雇用されているパイロットに有利な規定。
入社される際に、これに類ずる覚え書きを要求されることをおすすめします。
希望しても提示してこない会社は一考すべきと思います。
また、パイロット・メンテナンスの要員を雇用している使用者はこのページに該当する社内規定は設けるべきかと思います。

事故賠償に関する規程 : 2013年5月29日制定

社員・業務中:民法第715条に準ずる ※1
社員・テストフライト中:民法第715条に準ずる ※2・3
請負:民法第716条に準ずる ※4

※1 業務中のフライト事故は原則としてパイロットの賠償責任無し

マルチコプターの事故は以下の4パターンで発生します。
1:機体の瑕疵
2:機体の整備ミス
3:不可抗力
4:操縦ミス

原則として会社は業務中の全ての事故の責を社員には問いません。
具体的には第三者への損害・機材の損害などは全て会社側で責を負います。
ただし、自傷に関してはこの限りではありません。
また、映像などから故意に事故を起こしていると明確に証明出来る場合も除外します。
※故意とは墜落ポイントに向けて必要に舵を修正しているなど。

※2 勤務時間中のテストフライト中の事故は原則としてパイロットの賠償責任無し

実務撮影以外に機体調整等でフライトする機会があります。
その際の責任範囲は業務空撮中として取り扱います。

指示の有無を問わずに、墜落した機材も全て会社側で責を負います。
※墜落テストを課す場合があります。
自己負担などはありませんので、徹底的なテストを望みます。

損傷した機体の修繕費用などは不要ですが軽度でも機体の損傷は報告義務が発生します。
これは同じ機体を用いる別の社員が想定外の事故を起こすリスクを下げる観点から。
軽度でも、部品交換が発生した墜落は会社に報告してください。
また、事故以外にも以下の様な出来事にも報告義務が発生します。
・降雨、降雪、落雷
・砂埃(離陸時・駐機時)
・不要な衝撃
・高温・低温となる車内の長時間放置
・過放電
・ショート
・ネジや部品の脱落、緩み

※3 プライベートでのフライト事故は自己責任

趣味で飛ばしている機体の事故は業務空撮以外という取り扱いをします。
第三者への賠償責任は会社側では負いかねますので、個人でラジコン保険に加入してください。

※4 請負は民法第716条に準じます

0 [Zero]からは安全第一で業務を遂行してください。とお願いします。
如何なる理由からも、0 [Zero]から安全を蔑ろにする指示を出すことはありません。
現場判断で、当初の指示以外のフライトを実施する事もあるかと思います。
その際に、0 [Zero]に確認する時間も無くフライトに臨まないといけないという事もあるでしょう。
その場合も0 [Zero]からの指示は安全第一で業務を遂行してください。となります。
ご自分の判断で、安全性に問題があるという判断をするなら業務は止めてください。

刑事罰に関して

金銭で賠償可能な範囲は会社で持ちますが・・・
刑事罰はこの限りではありません。
気を付けてください。

コラム:覚悟はあるのか?

このページにも記していますがマルチコプター空撮で死傷事故となった場合は刑事責任も問われます。
つまり、自動車で死傷事故を起こしたのと同等の刑事処罰を最低でもイメージするべきです。
※実刑もありうると予測します。
そして、マルチコプターの事故(墜落)率は自動車事故と比較にならないくらい高い・・・

0 [Zero]では開発初期の段階で重量機の実務投入を延期しました。
「マルチコプターは従来型ヘリコプターよりも信頼性が劣る」と、その時点で何となく感じていたからです。
十分な経験を積んだ今では「マルチコプターは従来型よりも信頼性は劣る」と言い切る事が出来ます。
一般的には「マルチコプターは単純なので簡単」などとされていますが・・・
実体は大きく異なります。
従来型ラジコン=成熟済
マルチコプター=発展中

最終的にはマルチコプターの方が信頼性では従来型を凌ぐと予想します。
これは、「単純だから」が理由になります。
しかし・・・その単純さを起因とする信頼性を上回るほど、制御関係のアルゴニズムが成熟していません。

技術解説では何回か「Z軸方向の重心位置」に関する記述が出てきます。
0 [Zero]の開発者は当初から、「Z軸重心と浮力重心は同一点が理想」と考えていました。
この理想に近づける為に、フレーム設計が重要と考えていました。
何度もフレーム設計~制作~テストを繰り返すと見えてくる事があります。
「DJIには理想重心点」などという単語は社内に無いと・・・
Z軸重心が浮力重心よりも僅かに下にあると仮定します。
この機体は通常のフライトでは大きな問題を起こしません。
強い風にも十分な耐性があります。
しかし・・・極端な上昇気流が吹いている場所ではハンチングを起こして墜落します。
この原因はWookong_Mなどに、上昇気流に起因する転位の発想が無いからです。
上記のテスト機体も、実際には転位域までは入っていません。
転位域に入るパーシャル域で、ハンチングに入っています。
極端に軽い機体で効率の良いプロペラを使い上昇気流下でホバリング。
これで、ハンチングに入ります。

このタイプのハンチングを制御以外で防ぐのに一つの方法があります。
それが「プロペラピッチの可変」です。
つまり・・・転位を考慮して信頼性を上げるにはプロペラ可変しか現在では対抗策が無いのです。
もちろん、全てのローターにピッチ機構を組み込むと、結果として従来型よりも信頼性が劣る事を意味します。
以上から、従来型の方が信頼性があると結びます。

なお、上記の転位にはコントローラー側に以下の様な制御を加えればある程度の領域までは対応可能。(墜落率の低減)
・離陸直後のホバリング時モーター負荷を保持
・その数値と加速度センサと気圧センサを元に上昇気流を検知
・上昇気流に入った場合は下降もしくはホバリング指示を無視しパーシャルアルゴニズムへ
・パーシャル制御プログラムでは最低モーター回転数維持を最優先=ホバリング指示を条件下では無視

こんな具合です。

また、こんなパターンでも対抗は可能です。
・主福の2つのモーターを一軸に搭載
・パーシャル域に入った場合は福を全て完全停止

このタイプの機体なら、さらに信頼性は上げられるハズです。

起こっている現象を観察すれば、対抗策は思いつけます。
過去に、「○○時間連続フライトで信頼性を証明」などは無意味と書いていますが・・・
デバッカーとしては二流の人間の発想です。
なお、コントローラーに関しては0 [Zero]では外部からの情報を収集していません。
既出の場合は申し訳ありません。

本題に戻ります。
2013年現在のマルチコプターは、従来型ラジコンヘリコプターと比較すると信頼面で大きく劣ります。
この様な機体で墜落事故が発生した場合は誰に責任があるのかは明確な決着が付きにくいところでしょう。
最終的には操縦していたパイロットにもっとも大きな責が問われることになります。
最悪が重なれば、業務上過失致死傷罪で実刑という可能性も想定する必要があります。
少し給料が良いくらいのメリットを吹き飛ばすデメリットが雇われパイロットには付きまといます。
0 [Zero]でも機体の信頼性を上げる為の様々な投資を継続しますが従来型の信頼性には遠く及びません。
もしもの墜落事故の際に金銭的に解決出来る部分は会社が可能な限りカバーします。
しかし・・・
刑事責任はついて回ります。
ご自分を守る為にも、ご自身のポリシーは会社に対して明確に示してください。

このページは0 [Zero]に入るパイロットも熟読するであろうページです。
良いことも悪いことも、包み隠さずに書かさせて頂きました。

公開日:2013/05/29
最終更新日:2013/06/25
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