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ドローン空撮[技術解説] - ブラシレスジンバル組み付け中

ブラシレスジンバル組み付け中
Tarot GoPro 2 Axis Brushless Gimbal

マルチコプター空撮の歴史で、記憶に留めるべきパーツが発売されました。
0 [Zero]では動画対応の2.0kgクラス以下のジンバルを総入れ替えします。
主役はTarot製の2軸ジンバルです。

2013年6月27日に、Tarot GoPro 2 Axis Brushless Gimbalがジャイロと共に2セット海外通販から到着しました。
朝から、組み付けと調整。
モード切替とチルトを含む簡易テストも完了しました。

ハードとソフトを1日触った印象としては・・・
「感動的な造りの良さ」と高い評価を残します。
設計者はとても良いセンスをしています。
ハードウェアは合理的。
比較的ソフトなダンパーを圧縮で使うのは十分なテストを行っている証拠。
ソフトも、無駄な設定項目は省きつつ、実際の撮影で有効なポイントは押さえていると・・・
初期物にもかかわらず、貫禄すら感じます。
このジンバルから、マルチコプター空撮の世代は変わったと言って良いでしょう。

Tarot ZYX22のチルト制御
填まりやすいポイントから

チルト・ロール・モードが送信機から操作出来ます。
ラジコン器機の常識とは異なる、少しクセのある配線となります。

チルト: Tのピン1本
受信機から信号(フタバ=白:JR=橙)を引き込みます。
マイナスとプラスは使わないので外してください。
←写真では手前の左側が該当します。

ロール: Rのピン1本
信号を入れなければ水平を保ちます。
ここは使わなくても良いでしょう。
使う場合はTのピンの左側を用います。(基板にはRの印字)

モード: Cのピン1本 ソフト上はRC mode :C
モードは以下の2種類
・Mode1:
・Mode2:
このモードの違いは動画などで、説明した方がわかりやすいところです。
文章ではうまく伝わりません。
しかし・・・とても重要な設定項目です。
ここを使わないと、このボードの機能の半分を捨てる事を意味します。

Tarot ZYX22のピン配置 基本的にはコネクタは専用に加工しなければなりません。
簡単なのは市販のコネクタからピンを抜いてしまうこと。
軽量化に拘るなら自作。
TRCの3種の信号線を、ひとつのコネクタにまとめて、受信機付近で分岐というのが設計者の狙いかも知れません。

フタバ3本コネクタは左からC(モード切替)・T(チルト)・R(ロール)
受信機には信号線(フタバ=白:JR=橙)として1本のみ接続。

そのジンバルは低く遠くへ。
そのジンバルは低く遠くへ。

GoProはナローでも90°の画角です。
ワイドなら170°という、とんでもないワイドレンズを搭載しています。
通常の搭載位置なら、緩い前進でもプロペラが映り込んでしまいます。
これを避けるにはこの様に極端に前の低い位置に搭載するしか方法がありません。
やはり、放射型のヘキサやオクトではGoProに不向ですね。
ラダーのクアッドが最適なフレームです。
GoProはその画角から、「寄ること」「絶対の水平」「水平から真俯瞰への繋ぎ」など、通常のカメラとは違ったワークで画を組み立てる必要があります。
必要とされる画からフレーム形状も算定するべきです。

なお、このフレームはブラシレスジンバル+GoPro用として事前に用意した物。
この搭載方法でも振動が発生しないようなフレーム補強がされています。
※衝撃吸収機構はレス
銀色の部分はアルミではありません。
「制振マグネシウム合金」の一つ、M1マグネシウム合金です。

フレームは初期プロトとなることから、軽量化などの配慮はされていません。
バッテリーの搭載位置と、フレームによる減衰性能が判明してから軽量化は着手します。

コラム:Tarotのブラシレスジンバルとは?
Tarot ZYX22

今回取り上げたTarotのジンバルが定番ジンバルになると予想します。
従来ラジコンとは違う世界のエンジニアが開発には絡んでいます。
例えば、チルト制御のピン配置・・・
あれはラジコンに馴染んだエンジニアでは組まない設計です。
ホビーのロボットなのか、産業ロボットなのか・・・
どちらにしても、ラジコン関係の機材の開発が長い方ではありません。
ラジコンの世界では無駄とわかっていてもフタバコネクタで無駄な線を含めて信号線を引き回すのが常識。
その常識を捨てている時点で、今までのエンジニアとは大きく異なります。
配線なども、必要とする電流量から適切に判断し、必要以上に太い配線での引き回しを嫌っています。
制御関係のピンの引き出し位置も、機体全体で配線の合理化を計りたいという意志が伝わります。
比較対象として面白いのがDJI。
あちらはラジコン業界の古い常識に縛られつつ、「市場でフォームウェアを試す」という、PC業界の悪しき慣習を真似ています。
流用対策なのか、無駄な配線の引き回しも日常。
触っていて気持ちの良いモノではありません。

TarotとDJIのGoPro向けジンバルの設計の大きな相違点がチルト制御のモーターの方向。
Tarotは向かって右側。
DJIは向かって左側。
どちらが正しいかはHERO3の映像出力コネクタの位置を考えれば出てきます。
普通に考えれば、Tarot式が正解でしょう。
DJI式では映像を吸い出すケーブルがスムーズなジンバル動作にマイナス要素となります。

なお、Tarotはソフトもハードも既に3軸化の準備が完了しています。
いつでも、3軸ジンバルは登場可能。
3軸の設計は既に完了していて、その簡易版の2軸から発売したととれました。
そう遠くない時期に、安価且つ高性能なTarot3軸ジンバルが登場します。
このタイミングで、0 [Zero]も次のステップに進みます。

STOブラシレスジンバルKit ←実は・・・
このブラシレスジンバルも購入していました。
技術解説にも登場しなかったと言う事は・・・それほど、感心しなかったのです。
実務に投入するには明らかに信頼性が劣るというジンバルでした。
一昔前のジャイロで、初期の3Dを経験した方ならわかるかと思いますが・・・
「制御を止めてしまう瞬間」があります。
これが瑕疵なのかセッティングなのかを見極めることが短時間では出来ませんでした。
とっ言うよりも・・・洗練されていない事から、あまりかかわりたくないが本心です。
この信頼性を上げる為に時間を掛けるなら、高価でもDJIのGoProジンバルで良いかと・・・様子見をしていました。
※もちろん、今ではTarotで行きます!

これからも、ブラシレスジンバルは各所から出てくることでしょう。
しかし・・・評価軸の中心に置くべきジンバルはTarotです。

私(0 [Zero]の開発担当兼パイロット主任)は大昔に産業ロボットの開発者でした。
その頃の上司が私に言った言葉にこういうのがありました。
「歴史は5%の天才がつくる・・・」
※その5%はエンジニアの中でという意味。
つまり・・・
普通のエンジニア20人は優秀なエンジニア1人に劣るという話でした。
ラジコン器機の開発者には、「普通の方」と、「優秀な方」が存在します。
このジンバルの設計士は間違い無く後者。
Tarotのジンバルの出来は感動的なレベルです。
採用をおすすめします。

公開日:2013/06/27
最終更新日:2013/06/28
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