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ドローン空撮[技術解説] - マルチコプター空撮機材車

マルチコプター空撮機材車
回収中の機材車

この一ヶ月は、空撮機材開発を停止し機材車の改修を行っていました。
もっとも手間を必要とする車両の内部の改修が完了したことから、その内容を一部紹介します。

その改修内容は、0 [Zero]のマルチコプター空撮に特化させた内容。
高温対策・電源確保・長距離移動など、実務を想定した有効な改修が施されています。
この様な改修を自社(マルチコプター開発の責任者)が直に行うのは、この様な改修を受けてくれる業者が存在しないから。
機材車というひとつの道具でも、0 [Zero]は使い切ります。
高温対策に関しては、多くのマルチコプター空撮会社の参考になるところかと思います。

機材車の高温対策
夏場の高温対策

マルチコプター空撮に用いる動力バッテリーであるリチウムポリマーバッテリーは、保管時の高温に弱い特性があります。
また、機体の樹脂部品(0 [Zero]の場合は、特に樹脂プロペラ)も、高温は避けたいところです。
エアコンを止めずに作業が出来れば良いのですが、現場の条件により以下は想定する必要があります。
・ロケ地は駐車場から徒歩で10分程度移動
・機材車には、予備の機体とバッテリーを残す必要がある
・周囲への配慮からエンジンは切る必要が有る

この様な現場では、室内の温度上昇をある程度覚悟して機材車から離れる必要があります。
この様な場合も、可能な限り温度上昇を抑える事が改修の目的です。
一部の空撮会社には、「撮影時は車両から離れないから、この様な配慮は必要無い」と言うかも知れません。
気を付けて頂きたいのは、高速SAでの休憩時にも同様な事は発生するという点です。
高温対策に関しては、全ての空撮会社が配慮する必要があります。

写真は、天井の制震材の上に液体断熱材を施工中。
※純正では鉄板のみ。
鉄板部分には、温度上昇を抑制する液体断熱材が丁寧に施工されます。
この後に防寒服と同等の断熱材が天井や内壁などにも仕込まれます。
もちろん、車内の最高気温は温度計で記録を残します。
一番怖いのが、想定外の車内高温でバッテリーにダメージが入る事。
今回の機材車改修では、高温対策で現実的な選択肢の全てを実施しています。
さらに、夏季限定のバッテリーケースなども用意し、バッテリー保管時の温度管理は完璧となります。
低温に関しては、それほど気を使う必要は無いのですが、高温に関しては注意が必要です。
車内温度を考えると、5月から10月は、問題となる高温になるという認識が必要です。

機材車のバッテリースペース候補
電源確保

←機材車の床下。
この様な車両の空きスペースに大型のバッテリーを複数埋込。そのバッテリーは移動中に車両から随時充電という設計を当初はしていました。
結論としては、その方法は不採用とし、車両後端に積載するという一般的な方法に落ち着きました。
その理由は、長距離移動を想定した車両の重量バランス取り。それと親バッテリー放電後の再充電の柔軟性を優先したからです。

機材車のベース車両と積載量に起因するのですが、購入した車両は純正状態では前輪に対する過重が多くなっています。(4WDのキャブオーバー車の為)
この為に高速道路での直進安定性が不安な状態でした。
これを改善するウエイトという目的で、大量の親バッテリーを後軸直上から後方に搭載することとなりました。
また、複数日の撮影などでは、放電した親バッテリーを宿舎のAC電源で大量に充電する必要性も出てきます。
この際に車両組み付けの方式では柔軟性が無いとも判断出来ました。
以上から、荷室にバッテリーを積載するという設計に落ち着きました。

動力用ドライバッテリー

搭載する親電源用バッテリーは、ドライバッテリーと呼ばれるタイプの物になります。
元々は車両用バッテリーですが、以下の様なマルチコプター空撮には都合の良い特性があります。
・過放電に強い
・倒れても液漏れしない
・軽量(写真の物で1個26.6kg)
このバッテリーを用いる機体と業務内容により、増減させて業務に対応させます。

機材車の長距離移動対応
長距離移動対応

採用された機材車は、元々が商用車です。
1日で1,000km以上の走行などは想定されていません。
移動時のドライバー(パイロット兼任)の疲労を軽減させる観点から、様々な車両改修がされています。
←アブソーバー・スタビライザー等の改修

上記の親バッテリーの荷室積載なども、長距離移動対応のひとつです。
自動車の直進安定性を出すには、ある程度の前過重が必要です。
また、フレームも含めたバネのレートにより車両の運動特性は決まってきます。
これはマルチコプターのフレーム設計にも言える事なのですが、目的を持った剛性設定は運動性能改良には不可欠です。
大規模な改修が終わった機材車は、欧州商用車と同等の長距離移動性能を持つまでになりました。

ロケバス性能
ロケバス性能

この機材車には、ロケバス機能も想定もされています。
最小限のマルチコプターと、0 [Zero]の人員。
それに、制作スタッフ複数名が同乗して、数百km程度の移動を伴うロケを行う。
その様な場合にも、後席の人員のストレスが最小となる様な改修がされています。
具体的には、ノイズ低減と乗り心地の改良。
元々が商用車なので、高速移動時などには乗用車と比較にならないノイズが車内には入ってきます。
各種改修により、一般的なロケバスとは比較にならない良好な乗り心地になっています。

今後の改修

長距離移動対応に関して、90%の作業が完了しています。
親電源に関しても、随時バッテリー搭載で解決済み。
残るのは、マルチコプター本体の搭載方法です。
ロケバス機能も求められることから、人員の増減にも対応可能な脱着式のハンガーを製作する予定です。
※今までは、3台搭載の簡易的ハンガーで業務対応をしていました。

公開日:2013/10/15
最終更新日:2013/10/15
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