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ドローン空撮[技術解説] - 3Dプリンタとマルチコプター 

3Dプリンタとマルチコプター

3Dプリンタのマルチコプターの活用方法に関して。
いつも通り、「0 [Zero]流」の技術解説。

3Dプリンタを新規に導入しました。
このページ記載時点で、2点の実務導入パーツが完成しています。
今の段階での、3Dプリンタの印象。

「もっと早く、導入すべきだった・・・」

軽量と衝撃吸収という、0 [Zero]にとっては生命線と言える部分で大きな効果がありました。
3Dプリンタでマルチコプターの安全性を向上させるというアプローチは少ないと思います。
この2ヶ月ほどは、ネットを中心に情報収集を行いましたが、このような方向性の情報には行き着きませんでした。
それでは、いつもどおり「独自」の方向で話を進めます。

3Dプリンタによるスキッドヒューズ
その1:さらに軽くなる!

完成したスキッドヒューズのパーツ。
水色のパーツが3Dプリンタで打たれたパーツです。
設計の合理化と造形物の中抜き効果で、13gの軽量化が達成出来ました。
信頼性も今までのグラス入りの樹脂部品よりも高くなっています。
元々が2,000gを下回る機体である事から、この13gには大きな意味があります。
3Dプリンタ採用による機体側のデメリットは一切無し。
軽く・強く・精度は高く、なっています。

3Dプリンタによるスキッドヒューズ

左端が最初期の試作品。
右に行くにつれて、世代が新しくなります。
最初の5回は、パイプ径や密度など3Dプリンタの設定値を詰めています。
※中抜きによる軽量化
6回目(左から6番目)からは、1機分を制作し、実機に取りつけた際の最終的な収まりをテストしています。
7回目に完成したという判断を行い、実務に投入したのですが・・・
僅かですが、今までと脚の取付角度が違う事が判明。
この脚の僅かな角度の違いが、パイロットの違和感に繋がる事が判明。
その後、脚の取付角度の微調整を実施。
105°~110°までを試作し、組み付けてはテストフライトを繰り返します。
その結果、110°が採用となりました。

3Dプリンタによるスキッドヒューズ
その2:さらに安全に

次は、スキッドの先端パーツ。
今までは、樹脂成形部品(ラピド工房製)+薄厚カーボンパイプという構成。
これを、主に安全性向上の観点から3Dプリント化。
重量は1機分(該当パーツ4個)で2gの軽量化。
もっと大きな軽量化の余地は残っているのですが、ここでの着眼点は、「安全性」
具体的には、墜落時に、どの程度の衝撃でどこを壊すのか?
自動車のクラッシャブルボディと同じ考え方をスキッド先端に持ち込みます。

衝撃吸収スキッド先端

①:機体側
②:後部スキッド
赤いゾーン:強度を上げたいところ
青いゾーン:強度を下げたいところ

墜落時の衝撃は、スキッドの先端となる青いゾーンの部分から入る事が多く発生します。
この衝撃は、スキッドヒューズが働く事により、対象に加わる力を可能な限り分散させていきます。
この分散は、可能な限り多数に散らした方が結果は良くなります。
つまり、人に降った場合は、ケガの程度を下げる方向に働きます。

スキッド内部

左:赤いゾーンの内部
右:青いゾーンの内部

従来の樹脂パーツやカーボンとの最大の違いが、ここになります。
3Dプリンタの部品は、パイプ内部にも造形が可能。
0 [Zero]では、ここに着眼しました。
「強度は、パイプ内のパーツの密度により自由にコントロール出来る」
強度を出したい場所には、内部造形とプリンタ設定(シェルの太さ・密度)を大きくする。
強度を落としたいところは、造形を抜きプリンタの設定(シェルの太さ・密度)を小さくする。
外観からはわからなくても、内部構造を工夫することにより、先端に向かうほど強度を落とすなどという事が可能になっています。
カーボンパイプでも、軽め穴の位置と数により同様の工夫は可能なのですが・・・
3Dプリンタの方が、遙かに簡単でスマートです。
カーボン・チタン・マグネシウム・エンジニアプラスチックなどは、素材特性による軽量化。
3Dプリンタは、設計による軽量化。
2014年現在の3Dプリンタでは、同仕様のカーボンパイプなどと比較すると、強度も重量も劣ります。
これが、結合パーツまで一体化することにより、従来以上の軽量化が可能になります。

shade
モデリングが出来なければ、3Dプリンタの威力は半減

スキッド先端パーツ設計中の画面。
現在のところは、提供されているパーツを打つという方が多いかと思います。
それでは、「ただ、形が出来るだけ」
3Dプリントの最大の魅力である、軽量化と安全性のメリットは少なくなります。
※あくまで、マルチコプター空撮に用いと言う視点から

今回のパーツは、汎用品のカーボンパイプ(10.0mm)と組み付けられます。
ここを微妙な太さで打って、削ることにより接着剤を用い無くても落ちないという微妙な太さに後工程で仕上げます。
基本パーツで、10.0mm~10.5mm程度をテストして、最終的には10.1mmに落ち着きました。
ここの数値は、3Dプリンタ側の設定項目でベストな数値は異なります。
ピッチやシェルの太さの指定が違うと仕上がり寸法は異なる事になります。
結局は、微調整が必要なのですから、造形ソフトを導入して自身で設計する必要があります。

スキッドテスト打ち
破断テストの残骸

スキッド先端の設計が固まるまでには、この量のテストが繰り返されています。
単純なパーツですので、形状は1回で固まりました。
その後は、重量と破断ポイントのバランス取りに費やされています。

出来上がったパーツは、単純な物なのですが・・・
相当な手間と、ノウハウが入っています。

スキッドテスト打ち
マルチコプター空撮屋は、どの3Dプリンタを購入すれば良いか?

以下を購入し運用した結果も良好であったことからおすすめします。

XYZプリンティング ジャパン da Vinci 1.0
参考価格¥69,800

購入前に相当額の予算を確保。
実機確認も含めて情報収集を行いました。
その結果が、もっとも普通の安価な3Dプリンタに行き着きました。
仮に40万円程度の3Dプリンタを導入しても、結果は何もかわりません。
もしも、予算を使いきらなければならないなら・・・
コイツを3台程度導入します。
打った物を販売するなどという考えがないなら、一台で十分です。
2014年夏と限定すると、マルチコプター屋が導入すべき3Dプリンタは、これで決まりです。

◆マルチコプター空撮前提のメリット
・ABS:適度な弾性
・単色:シンプルなのでトラブルを呼び込みにくい
・イニシャル安価:DIY系と比較出来るほど安価
・製品の信頼性:もっと高価で不安定なものは沢山存在しています

◆マルチコプター空撮前提のデメリット
・フィラメントの品質
・純正フィラメントが多少高価

本当に不満が少ないのです。
普通の用途なら、文句が出てきそうな事は実はあります。
しかし・・・マルチコプター部品の試作という視線では、デメリットとなりません。
逆に、「普通は問題無いのに、マルチコプターパーツの試作」という場合にデメリットとなることもあります。
それが、フィラメントの品質です。
具体的には、太さの安定性。
1.75mmが設計値。
手元のフィラメントは・・・
1.76mm=2個
1.75mm=1個
1.72mm=1個
この1.73mmは、軽量化主眼のシェルの薄いパーツを打つと明らかに強度が足りません。
仮組をしている側からパキパキと折れていきます。
送りはギヤであることから、フィラメントの外形の細さは供給される樹脂量の低下を意味します。
攻めているパーツは、この差がハッキリと強度に表れます。
0 [Zero]の用途が一般的では無い事を承知の上で、販売元のフィラメントの細さの事を問い合わせたのですが・・・
的外れの回答が返って今来ました。
確かに、0.03mmまで細かく意識する必要は無いのですが、フィラメントの極端な細さは造形に影響が出るのは3Dプリンタの世界では常識。
この常識部分も、サポートは知っていないようです。
いつも通りとも言えるのですが・・・
各種フィラメントを用意して、どの程度の太さのバラツキが許容範囲なのかを探っていきます。

取りあえずは、3Dプリンタ導入しましたページでした。

公開日:2014/06/25
最終更新日:2014/06/30
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