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ドローン空撮[技術解説] - 大型機とFPVの解禁

大型機とFPVの解禁

このページの公開日から、0 [Zero]のマルチコプター空撮は第二章に入ります。
具体的には、大型機参入とFPV採用を基幹とする近代化。

はじめに
このページの公開時点では、0 [Zero]は同業他社と比較すると機材面は大きく劣っていました。
・搭載カメラの重量制限=300g以下 ※1
・FPV(画像転送装置)未使用 ※2
※1:D800・α7Rなどの搭載実績ありますが、業務では用いられていません
※2:関連機材(適合品)をテスト購入していましたが非搭載

大型機の参入により、搭載カメラや関連機材の重量制限が無くなります。
これにより画質面は向上しますが、安全性は落ちる事となります。
今までの軽量機体とは、大きく異なるポリシーにて業務に取り組むことになります。

FPV採用により、今までは出来なかった仕事やワークが可能になります。
ノーファインダーに拘ってきた0 [Zero]の本当の力が解き放たれることになります。

2014年8月までの、0 [Zero]の軌跡

◆大型機採用に関する0 [Zero]の動き
0 [Zero]のマルチコプター空撮は、2011年7月からスタートしています。
関連特許を出願し最初の機体(市販品)が飛んだのが2011年12月。
その時点では、スチール撮影機としてCANON 5Dmk2※3クラスを搭載する大型機体の採用を検討していました。
関連リンク:16) 機体設計の方向性 (公開日:2012/01/04)
※3:NikonD800系の発売前。重量と画質のバランスからは5Dmk2がベストとの判断

開発当初から、ピント送りをしない重量級マルチコプターは無意味と考えていました。
また、マルチコプター本体の信頼性の低さから、数年は小型機にてデータ取りを行うと言う方向で事業計画は組み立てられていました。
関連リンク:
27) DSLR搭載機開発の一時凍結(公開日:2012/03/04)
ピント送りの条件としては、機体の完全な静止と優秀なジンバルの出現が不可欠と考えていました。
2014年9月の段階では、このどちらもが解決したことも解禁の切っ掛けとなっています。
(完全静止の部分に関しては、この時点では非公開)

「絞り込んで用いる大型センサー搭載の大型マルチコプターは無意味」
0 [Zero]では、常々訴え続けています。
それ故に、国内の空撮会社の多くが採用した、DJI S800+Z15+NEX などという組み合わせを0 [Zero]では採用していませんでした。
事実として、2014年8月の段階でS800にてFIZ(フォーカス・アイリス・ズーム)を意識した空撮サンプルを見たことがありません。
絞り込んで空撮を行うと言う事は、小型のカメラで十分です。
「絞り込んで、シャープな四隅」と言うなら、NEXでは役不足。

◆FPV(画像転送装置)非採用の理由
48) ノーファインダー撮影が基本 (公開日:2012/012/15)
上記にて、0 [Zero]の画像転送装置に関する考えは述べられています。
今から約2年前のページですが、現在も考えは変わりません。
優秀なパイロットの育成には、画像転送装置は弊害のみしかありません。
また、安全という観点からも、画像転送装置を用いない有視界飛行が基本。
「訓練はノーファインダーで、実務はFPVを用いれば良いのでは?」と思うかもしれません。
確かに、少なからず関係者にはご迷惑をおかけしました。(撮り外す事も少なからず・・・)
ココに関しては、将来を見据えての修業が必要であると考えていました。
実務のストレスの中で、ノーファインダーを突き通した2年半に意味が出てくると・・・
これから、鍛え上げたパイロットの眼がどのような結果を出すのか証明する段階に入ります。

まずは、搭載カメラの検討から

カメラが決まらなければ、ジンバルから動力バッテリーなども選定出来ません。
搭載カメラアリの状態で、マルチコプターの仕様を選定するのが当然の流れです。
この数ヶ月間の間に現場にて監督・カメラマンの方々から、「0 [Zero]で、どのカメラを入れれば良いですか?」と集計を取っていました。
ドラマ・映画などの一線で活躍している方々です。
その答えのNo1は、BMPC4Kでした。
No2は、RED。
なお、REDに関しては反対意見が賛成意見以上ありました。
主たるところでは、RED採用による提供価格高騰のデメリットをあげています。
0 [Zero]としても、最初の4K機材がREDスタートであることも少し不安です。
また、重量制限を撤廃したと言っても、目指しているワークを実現するには軽量であることが望ましい。
(この点に関しては、機体の全貌が明らかになると納得して頂けると思います。)
現場の方々の意見と、他社が検討しているだろう機種まで考えると以下のカメラが導入候補となっています。
・Blackmagic Design Blackmagic Production Camera 4K
・Panasonic LUMIX DMC-GH4H
・SONY α7S ILCE-7S + ATOMOS Shogun
・SONY FDR-AX100

Blackmagic Designカタログ
ブラックマジックデザイン Blackmagic Production Camera 4K

現場の方々の採用希望で、No1となったカメラです。
普通に考えれば、4Kを撮影する大型マルチコプターに搭載すべきカメラは、BMPC4Kで決まりと思えます。
購入を前提とした検討に入ると、BMPC4Kには無視出来ないデメリットも見えてきました。
・広いダイナミックレンジ
・グローバルシュッター
・リムーバブルSSD
・バッテリー交換が出来ない(外部入力対応)
・色々な意味で安定しない
・EFレンズが使える
・スーパー35mm
・現場受けが良い
・安い
・HDMIが無い(SDI変換)
・ISOは上げれない

マルチコプター空撮に用いる4Kと仮定すると、画質的にISOが上げられないことが大きなデメリット。
実務では、灯りが不十分な状況で実景撮影なども普通に発生します。
これを書いている段階では、BMPC4Kに対する興味は薄れてきました。
BMPC4Kの魅力が無くなったというよりも、後記するα7Sの可能性に目覚めてしまったというのが本当のところです。

パナソニック GH4カタログ
パナソニック GH4

現場の方々の採用希望はナシ。
しかし、同業者の中では、購入予定No1と思われるカメラです。
候補に考えていませんでしたが、実機が目の前にあったことから観察してきました。
また、カタログも読み進めると・・・
なるほど~。
これを購入する同業者の気持ちもわかります。
・とにかく安い
・軽い
・既成ジンバル(Z15など)が豊富
・マイクロフォーサーズマウント
・SDXC

一言で言うと、「従来機材と同じ感覚で4Kにステップアップ可能」
ジンバル+カメラ一式と考えると、現実的な4Kが撮影出来る機材としては、もっとも安価です。
今まで、パナソニックのカメラ導入は一回もありませんが、今回の事で見直す切っ掛けは出来ました。
アマチュアが初めての4K機として購入するなら、一番のおすすめです。
ただし・・・
現場での導入希望が一例も無かった事も事実です。
つまり、2014年現在で4Kを必要とする現場では、このカメラでは役不足である事を意味します。

SONY α7Sカタログ
SONY α7S

現場の方々の採用希望はナシ。
4K収録には、別立てでレコーダーも必須。
カタログ入手前は、候補になっていなかったカメラです。
・圧倒的な高感度
・フルサイズ
・意外と広いダイナミックレンジ
・カメラ本体なら、GH4よりも軽量
・クロップによりスーパー35mm
・レコーダー必須
・ローリングシャッターは他機種よりも不利

現在の導入候補No1
0 [Zero]が目指すマルチコプター空撮には、このカメラがもっとも適していると感じています。
目指す方向は、「絞りを開ける空撮」
欠点は、レコーダーまで考えると、もっとも高価になる事。
メリットは、書き切れないほどあります。

現場での採用希望が一例も無かった・・・
それは、0 [Zero]も含めて、このカメラの可能性に気がつけていなかったからだと思われます。
マルチコプター空撮は、基本的には照明を作り込むことはありません。
この様な現場では、BMPC4Kよりもα7Sの高感度特性が活きてきます。
最大の欠点は、このページを書いている2014年9月1日の段階で決め手となるレコーダーが無い事。
まもなく、ATOMOS Shogunが発売されますが、現時点で重量は不明との事。
本当に店頭に予定通り並ぶのか?
ある意味、BMPC4Kよりもハードルの高いカメラです。

SONY FDR-AX100

現場の方々の採用希望はナシ。
もちろん悪いカメラではありません。
ただし・・・0 [Zero]の現場では求められてないカメラです。
4Kでの安価な実景撮りなどの需要が出てくると、大活躍しそうなのですが・・・
数年は、そんな時代は来ませんね。
2014年現在で映画ならレンズが役不足。
つまり、マルチコプター空撮では、必要の無いカメラです。

一部のマルチコプター空撮会社が導入していたので、敢えて取り上げました。
「その、FDR-AX100で、何を撮るのでしょう?」

まとめ

現時点では最初の4Kカメラの機種は決まっていません。
現場での受けを考えると、BMPC4K。
しかし・・・α7Sが評価される日は来ると確信をしている。
どちらも購入するという選択肢も残しますが・・・
可能な限りマウントは増やしたくない。
バルーン空撮では、1年前にα7Rを採用。
現在は、D800をバックアップとする2マウント体制にて業務を消化しています。
カメラバックには、二台のα7R+D800。
主要なレンズも2マウント+バックアップ。
正直、疲れます。
しばらくは、カメラの事で悩みます。

コラム:マルチコプター空撮屋が4Kについていけるのか?

HDから4Kへの移行はハードウェア整備以外にも、様々な事柄に配慮しなければなりません。
現場でのチェック方法・機材セッティング時のチェック方法・編集・データ納品などなど・・・
カメラを導入すれば、4K対応完了という簡単な物ではありません。
さて、コラムではデータ量という観点から4K導入を考えて見ます。
4Kは、AVCHDなどと比較するとデータ量が大きくなります。
これは、4Kなので4倍かとなるのですが・・・
少し違います。
4Kの世界では、ProResやRAWが用いられる事が多い。
AVCHDとは比較にならないほどファイル容量は増えることになります。
※現在は手元に4Kカメラが無い事からスチールからの推測
軽くネットで調べると・・・ProResでも30倍近くの容量となるとの事。
今回は採用検討から外していますが、RED RAWはもっと凄いことになると・・・
ProResを扱うなら、現場で使うMacBook Proが必要。
RAWデータを扱うなら、ハイパワー(専用ボード必須)のWindows機も欲しくなる。
2014年現在で4Kを必要とする現場は、映像制作の最前線です。
一定水準のハードとソフトの用意。
それを理解出来る知識も現場にて必要。
マルチコプター空撮でラジコンの知識は確かに必要ですが・・・
ここまで来ると、映像制作の知識も同様に必要。
趣味の延長からはじめたマルチコプター空撮屋が、本当の意味で4Kに移行出来るかは疑問です。

ご参考までに・・・
0 [Zero]が4K導入(大型マルチコプター)に用意した予算は、取りあえず300万円。
機体の購入から一通りのテスト。
業務機体・カメラ・レンズ・重要機材の二重化。
BMPC4Kにて投資金額を抑えたとしても、この当初予算は使い切ると試算出来ます。
本当の意味で4K導入というなら、予算・人材・時間のどれもが必要です。
0 [Zero]が思い描いているピント送りに対応した4K対応となるのは・・・2016年初夏を予定しています。

公開日:2014/09/01
最終更新日:2014/09/01
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