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ドローン空撮[技術解説] - DJI Phantom純正プロペラの評価

DJI Phantom純正プロペラの評価

音が小さい。
地味に高い。
プロペラ接触危険率は低い。
そして・・・製造品質は疑問アリ

T-MOTOR Antigravity MN2214を2.0kgクラス以下の主力モーターとして検討しています。
このモーターとセットで入替の検討に入っているのがプロペラ。
使い慣れたGWSの3枚プロペラの安定性(供給や総合的な性能)は魅力。
入替を行うなら、相応のメリットを必要とします。

ファントム純正プロペラのバランス取り
ファントム純正プロペラのバランス取り

ファントム純正プロペラ独特の形状から、通常のプロペラバランサーではバランス取りが出来ません。
専用の治具製作も選択肢の一つですが、今の段階では見送ります。
今回用いたのは、T-MOTORのアウターを利用したベアリングによるバランス取り。
アウターのバランスを取れる技術のある方なら、この方法が手頃なバランス取りの方法でしょう。
バランス取り作業の第一印象は、良好な物。
「さすがに、高いだけの事はあるな~」と少し感心。
GWSなら10分程度は必要とするバランス取りの時間も3分程度で完了です。
ただし・・・ この評価は第一印象です。

プロペラの選定やバランス取り工程も0 [Zero]流
プロペラの選定やバランス取り工程も0 [Zero]流

←2.0kgクラスのブロペラ選定に過去に用いた、「ゴミ」(非採用)のプロペラ一式。
事務所内には、過去にテスト購入されているパーツの墓場と化しています。
過去に記事は書いていませんが、主力の2.0kgのプロペラ選考という目的で、これだけのプロペラを購入とテストを行っています。
テストの中には、「製造物としての安定性」なども含まれる事から、候補としたプロペラは時期をずらしてテスト購入することも日常。
結果として、同じプロペラが大量に存在する事になります。
ここまでの経験を積んでいる者として、以下は責任を持って書いていきます。

ファントム純正プロペラの製造品質に疑問あり
ファントム純正プロペラの製造品質に疑問あり

2014年10月初旬に、DJI JAPANから購入した純正プロペラ(CCW)
成形不良により、指摘の部分の樹脂の厚みが不安定になっています。
強度的には問題無し。
バランス取りも可能=実務投入可能
ただし・・・製造品質的には大きな疑問となります。
樹脂成形の大量生産品の魅力のひとつは安定性。
この安定性を利用して動バランスを推測するというのが、0 [Zero]のいつものスタイル。
0 [Zero]では、GWSの3枚プロペラの動バランスを取っています。
取ると言っても・・・静バランス取る際に削る場所を変えたテスト品を複数用意。
それをベンチに掛けて、「どこを削れば動バランスが取れるか?」を推測。
製造品質が安定していないファントム純正プロペラでは、この方法での動バランス取りが出来ない事を意味します。

成型不良は手指検査にて発見。
「指でプロペラを撫でる」という検査工程で見つけています。
手指検査で得られる情報は大きい物で・・・プロペラ起因のトラブルは、ここで防げると言って良いところ。
硬さや波打ちを注視しながら、指でさするだけ。
手持ちのプロペラで試して見てください。

本題に戻ります。
過去にテストしている樹脂プロペラは、同様に成型不良が出ています。
しかし、大きな問題とは考えていませんでした。
DJIペラで問題と思うのは、軽量なプロペラな割りには大きなバランスの崩れが生じていること。
そして、その価格。
やはり、相場よりも高い売価を設定するなら、それを納得させる品質は必要です。

ファントム純正プロペラとAPC
ファントム純正プロペラとAPC

ファントム = 9.4×4.3
APC = 10×4.7

参考価格:
ファントム純正 ¥1,650(2本)
APC ¥906(2本として計算)
この二つは近しいスペックで、マルチコプターでも採用検討に入る定番のプロペラと思われます。
0 [Zero]でもAPCは幾度となくテストを実施していますが、正式採用の例は一例も無し。
その最大の理由が、プロペラ接触危険率の高さ起因。
APCのスローフライトプロペラは、人物近接撮影を想定したマルチコプターに用いるには危険という判断をしたからです。(丈夫すぎる)
この一点のみで、使いにくいGWS3枚の運用を極めていたのが、2011~2014年までの0 [Zero]の姿です。

ここで、このページの主役のファントム純正プロペラに戻ります。
このプロペラは、「軽く」「弱く」「柔らかい」事が一つの特徴。
軽量なマルチコプターに用いるプロペラの一つの最適解です。
・製造品質は不安定
・内容から考えると高価
・入手性は良い
・実務運用性能も高い
・プロペラ接触危険率は低い
フライトテスト実施前の最終的な印象は上記となりました。
特に安全面で不安があると、この後のフライトテストの工程に入らずにテストは終了となります。
ここまでの評価としては合格。(満点からは、ほど遠いですが・・・)
純正プロペラのこの時点での評価は、「要実施フライト」です。

T-MOTORとSUNNYSKY
フライトテスト

2014年10月4日:フィールドテスト実施
Sクラス評価(社内選別+再調整済み)のSUNNYSKY+GWSから、Sクラス評価T-MOTOR+ファントム純正ペラに交換。
ピッチ10×6のGWSから、9.4×4.3への交換ですのでパラメーターの再調整は必須。
このテストを通ってから、次の段階に入ることからパラメーターに関してはツメが甘い状態で評価を進めます。

この時点での印象(SUNNYSKY+GWSとの比較)
・静か
・振動は、細かく小さく
・実写内容は、マズマズ(納得はしていない)
・白いモーター+白いペラは、0 [Zero]向きでは無い

実務を考えると静かなことは、大きなメリット。
でも、白いプロペラは精神的に落ち着かない。(撮影現場には、白い機材はありませんから・・・)
T-MOTORの採用はあっても、プロペラは今まで通りGWS3枚という選択肢が残ります。

GWSプロペラカラー
T-MOTOR+GWS3枚プロペラ

T-MOTORの採用検討に入る際に、真っ先に製作したのがGWS3枚プロペラのカラー。
物理的にGWS3枚プロペラが付かない場合は、T-MOTORは採用検討には入りませんでした。
地味なパーツですが、非常に重要である事がわかって頂けると思います。

2014年10月の時点では、0 [Zero]と同じ方向に進もうという同業者も希かと思いますのでノウハウを公開します。
これは、外径9.5mm 内径8.12mmのカーボンパイプをベースに製作。
これを使えば、T-MOTOR+GWS3枚プロペラという選択肢も出てきます。
この組み合わせなら、FSD(SUNNYSKY半年)+GWS3枚にて蓄積された、3年間のノウハウをそのまま流用する事が可能。
DJI純正プロペラへの移行は、この魅力を上回る事が必要となります。

まとめ

迷っています。
モーターとプロペラはマルチコプターの重要パーツ。
ここに手を入れると1年間は機材に絶対の信頼を置くことが出来ません。
しかし・・・今後は、DJIファントム向けの機材供給とネット上の運用ノウハウが増えるのは当然。
独自路線のパーツが多いとメンテナンスの観点から不利になります。
0 [Zero]は、この時点で大型機参入とFPV採用が決まっています。
開発予定が山積みの中で、安定している2.0kgクラスのモーター改修に手を入れたのはDJI Lightbridge採用による重量増を打ち消す為。
現在の重量がWookong_Mを用いる軽量ヘキサの理想重量となっています。
100g程度でも、これ以上は重くしたくない。
同時に、必要以上に軽くしたくない。(パーシャル域問題の可能性があがる)
微妙な重量コントロールを探る一環としてのモーター再検討なのです。
色々と懸案を同時進行させると、全てがうまくいきません。
しばらくは集中的に2.0kgクラスのモーターとプロペラの選定に開発資源を投入します。

公開日:2014/10/05
最終更新日:2014/10/05
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