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ドローン空撮[技術解説] - 雨とリチウムポリマーバッテリー

DJI lightbridge 検証中

雨に濡れてしまったり、内部結露したバッテリーは使っても良いのか?
この答えを出す為に、半年間の耐久テストを実施。
結果は、ある意味当然と言える内容で・・・

FORUM JIB BATTLE 2012空撮
3年間の運用を総括するテスト

話は、2012年2月からスタートします。
0 [Zero]のマルチコプター空撮最初の業務は、FORUM JIB BATTLE 2012 オフィシャル空撮です。
最初の業務ですが、低温・降雪・強風・人物接写・ノーファンダー・連続運用と・・・
色々な意味で0 [Zero]らしいスタイルの業務でした。
この仕事はトラブルもなく完了しています。

←2012年2月25日撮影
前方に取りつけたカメラ(SONYコンデジ)のカウンターウエイトとして、機体後部に3S2,600・1本を搭載しています。

問題となるのは、この撮影から半年の間に発生したバッテリートラブルです。
具体的には瞬間放電能力の低下という現象です。
離陸直後は問題無し。
上空に入り、離陸から10~20秒程度で突然のパワーダウン。
最悪の場合は墜落へと至ります。
離陸から10秒程度で発生する事から、対策は可能でした。
※この現象起因の墜落は発生していません。
これが冬期なら、バッテリーの能力低下が疑わしいところ。
真夏なら、バッテリー以外を疑うことが基本でしょう。
この現象の多くは、2012年4月から6月くらいに良く発生していました。
つまり、低温も高温も原因とはなりません。
そこで、2012年後半からは動力バッテリー2個積載が0 [Zero]の標準となりました。
「バッテリーのストレスが下がる」、「出力特性が良くなる」のは、表の採用理由。
真の目的は、突然の動力バッテリーの能力低下対策でした。
その後の運用で、動力バッテリーの並列運用は、充電時に劣化を見つける事が出来るという確信に至りました。
並列運用により早期にバッテリーの劣化に気がつける。
結果として、2012年6月以降のバッテリー起因の問題は一つも発生していません。

時は過ぎて、2014年3月。
3回目の冬も無事に乗り切りました。
ここまでの運用で動力バッテリーに絶対の信頼を置くことが出来ました。
最初期から、メーカーは不変。
当時の技術解説 300フライトでトラブル無しとしてるのは、2012年2月の問題の実務前です。

内部は全数検査し、初期の慣らし運用のノウハウも確立。
ノウハウの蓄積は時間とコストが伴う物。
マルチコプター空撮の最重要パーツと言っても良いバッテリー運用ノウハウを手に入る為の試行錯誤の3年間でした。
この時点で、国内で同様のテストを実施し、それを公開している同業者を0 [Zero]は知りません。
販売店・代理店では知り得ない部分まで、リチウムポリマーバッテリーの運用ノウハウが蓄積されています。

これまでの総括として、一年目に発生したトラブルの検証を卓上にて行いました。
2014年現在の経験からも、2012年4~6月に発生していたバッテリーの突然死の原因が指摘出来なかったのです。
その後の運用でも、数ヶ月に一つは能力低下したハズレのバッテリーは出てきます。
しかし・・・頻度が違います。
ただし、評価には注意が必要で・・・問題の時期は、バッテリー1個の運用。
安定期は、並列運用を開始してからです。
ならば、並列運用をすれば安定か?との問いも・・・少し違います。
1.0kgクラスでは、さらに容量の少ないバッテリーの1本運用です。
バッテリーのストレスは、該当時期よりも高い物になっています。
それでも、該当時期の様なトラブルが頻繁には出ない。
そこで出てきた仮説が、「バッテリーは雨に濡れるとマズイのでは?」という疑問です。
もしかすると・・・エアコンで冷えすぎた車内から出しただけで性能劣化?

お待たせしました。
以下からが本題となります。

降雨テストバッテリー8個
テスト開始:新品バッテリー8個を投入

←これが、テストを終えたバッテリーです。
2×4セット=8本 購入は2014年3月です。
このページにて、購入された履歴が残っています。
ページ内でも、1402ロットである事が記されています。(公開していなくても、バッテリーは全て内部検査が基本)
なお、信頼性の低いバッテリーを業務に用いないように、外皮には、「W」の表示。
※通常の運用バッテリーには、Aからの通しアルファベットと使用開始年月を記載しています。

テスト方法は至ってシンプルです。
0 [Zero]の業務運用にて想定出来る幾つかのパターンで、バッテリーを濡らしました。
簡単なところでは、シャワー。
特殊なところでは、冷蔵庫に保管後に内部結露を想定し屋外に放置。

この様なテストの際には、切り分けの観点から新品のバッテリーを使う事は言うまでもありません。

リポバッテリーのテスト方法
テスト方法

・機体には並列で搭載
・その後、セットで充電
・正規業務を意識して、定期的に放電と充電
・2014年4月からテストを実施
・充電量に10%のバラツキが出ると不良と判断
・2014年10月にテスト完了

可能な限り、普段の業務に近い形でバッテリーをテストしました。
濡らしてから2ヶ月後の、6月に最初のトラブル(バランス崩れ)が発生。
その後もポチポチと落ちて、最後のセットが10月にご覧の様になりました。
ここがポイントになります。
「テストバッテリーは2~6ヶ月で、全て不良となりました」

バッテリーの見た目
見た目は問題無し

まずは、外観のチェックから。
バッテリーは、膨らんでいません。

多くの方が、バッテリーの膨らみ方がリチウムポリマーバッテリーの可否を計っているかと思います。
その様な方は注意して下さい。
ご覧の様に、新品のような状態ですが内部的には壊れています。
外部から、バッテリーの劣化は当然ですが伺い知ることは出来ません。

このトラブルの根が深いのが外観からは問題がわからないこと。
さらには、一本搭載の運用の場合は、放電量と充電量からも問題が発覚しないこと。
並列運用をすることにより、上空の放電能力の落ち込みがはじめて判明します。
0 [Zero]がアウトとしたバッテリーも、普通の飛行機がまだ飛びます。
しかし・・・この後に急激な劣化が始まるのは、過去の経験から推測出来ます。
※テストは、症状の初期発生(10%バラツキ)で終了

また、問題が発生するタイミングもトラブルの原因をわからなくしてしまいます。
濡らして即時に問題が発生するなら簡単。
トラブルは、濡らしてから2ヶ月後程度からボツボツ発生するのがポイントです。
特に、内部結露から期間を置かないと発生しないのは・・・気が付きにくいパターンでした。

内部も問題無し
結論のみお伝えします

結論としては・・・
雨に濡れたバッテリー=廃棄を推奨
内部結露したバッテリー=廃棄を推奨

この様な結論となります。

今回は2本1セットのバッテリーを4セットで検証を行いました。
その結果、2~6ヶ月で明らかな性能低下が発生。
最大の収穫が、内部結露もリチウムポリマーバッテリーには注意が必要という点です。
今後の夏期の運用方法を見直すことになります。
なお、8本のバッテリー全ての内部検査を実施しました。
内部に目視する限りは、致命的と思えるところはありませんでした。
つまり、水分がどこかを直接犯したという事では無いのです。
ただし、バランス端子は確実に信頼性が落ちていました。

今回のテストでも、ノウハウは蓄積されているのですが、細々とした部分は一人歩きが怖いことから非公開となります。
0 [Zero]と面識がある方は、直接聞いて下さい。基本的には、得られた全てをお伝えします。

リチウムホーリマーバッテリー運用の総括
リチウムホーリマーバッテリー運用の総括

今回のテストは、「リチウムホーリマーバッテリー運用の総括」となるテストでした。
結果は思った通りであったのですが、確信を持つ為のテストでした。
見た目は問題無しで、能力が落ちたバッテリー。
少なからず存在する、この現象の答えの一つにはなると思います。
もちろん、これが全てではありません。

今回のテストで有効だったのは、「内部結露したバッテリーは大丈夫か?」という点でした。
これは、夏期にクーラーボックスで保管してたバックアップのバッテリーを、致し方なくエージング無しに投入などの際に発生するパターンでした。
この際の答えを用意出来たのは、大きいところです。
この点に関しては、ホビーユーザーに関しては必要の無い性能。
この様な事を必要とするプロならば、自身で試して肥やしとするべきところ。
当然の事ですが、ノウハウとして非公開の部分になります。

また、今回のテストで、「濡れたバッテリーは、即時の性能低下を起こさない」と言うことも確認出来ました。
現場判断で、バッテリーが濡れてしまっても即時のトラブルとはなりません。
恐らく、翌日なども大丈夫。
しかし、緊急事態が終わったなら、バッテリーの廃棄が必要です。
0 [Zero]のポリシー的には、雨天時のフライト回数などには手をいれる予定です。
雨天フライトに用いたバッテリーは廃棄が基本。
数多くのバッテリーを消費すると、現在の価格では元が取れません。
あくまで緊急時として、1回程度のフライト回数に制限するのが現実的なところでしょう。

公開日:2014/11/03
最終更新日:2014/11/05
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