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ドローン空撮[技術解説] - 特許出願機の実体化

特許出願機の実体化

特許出願済みの、「ヒモ付きマルチコプター」の実体化に着手します。
コンセプトは、「安全・高画質・現実的な撮影コスト」

3Dプリンタ打ち出しスキッド支持部分

この数ヶ月は、国内外を問わずにマルチコプター関連のサイトを閲覧する機会が増えました。
原因は湘南国際マラソンの墜落事故です。
その際に多くのマルチコプター業界の方向性を知ることが出来ました。
その印象は・・・

都合の悪いところを明かさずに売り込みをしている。

具体的には、その機体を用いた際の最悪を説明せずに、機体を販売・空撮を請け負っています。
マルチコプターの敷居が低いというメリットが悪い形で出てきています。
直接的な影響も少しずつ出てきていることから、このタイミングで業務計画を見直しました。
それは、特許出願済み機体の実体化と新規特許の出願。
つまり、ヒモ付きマルチコプターの実体化に着手します。
多くの会社がリスクを放置して活動するなら、0 [Zero]が絶対の安全を示します。

目標スペック(Ver1.00)

・ヒモで拘束し墜落範囲を限定=暴走事故の根絶
・マルチコプタージャマー対応
・フライト総重量4.0kg以下(ヒモは除く)
・パーシャル域問題に対抗する構造
・バッテリー4本搭載で動力バッテリー起因の墜落を排除
・12モーターで一系統ダウンに完全対応
・優れた下降速度(4m/s以上目標)
・樹脂プロペラ
・標準フライト時間8分(限界フライト時間12分)
・撮影内容に柔軟に対応する各種ジンバルの搭載に対応
・ジンバルは現場にて、即時の交換が可能な構造
・4.0kg時の搭載想定カメラは、α7R+Zeiss55mm=760g

「良くわからない」と感じる方も多いでしょう。
上記のスペックを読み取れる方は、フルスクラッチでマルチコプターが制作出来る方のみです。
もっとも厳しいのが、760gのカメラを搭載してフライト総重量4.0kgにてフライト時間8分保証しつつ12モーター。
究極というレベルまで軽量化を進めないと実現出来ないスペックです。
軽量に拘るのは、いつもの通り安全性確保の観点から。
この機体は、Ver1。
基本データを取ってから、6.0kgなどに重量アップする可能性は残します。
既にVer2の基本設計も完了しており、このタイミンクで新規の特許出願を行います。
この特許の内容は、GPSハッキング対策。
ハードウェアからGPSハッキングに対抗する手法を示します。

この機体で何が出来るのか?

この機体の最大の特徴は、「絶対に暴走しない事」に尽きます。
高度100mから撮影している場合は、係留ポイントから半径100m以上の範囲に墜落する事は物理的に有り得ません。
つまり、「この線から内側には、絶対に墜落しません」という運用が可能になるのです。

マルチコプターは、バッテリーの続く範囲の全てを墜落範囲として想定する。

この基本を唯一無視出来る最初の機体になります。
この機体を用いると以下の用途で絶対の安全を保証出来ます。
・人文字撮影
・マンション眺望撮影
・CM撮影
・ドラマ・映画撮影

これらの撮影で、高い安全性を保証出来るマルチコプターになります。
市販で、同様な機体が無い事は当然ですが、運用方法も独特な物になります。
普通のマルチコプターの様に、気軽に運用が出来る代物ではありません。
しかし・・・
絶対の安全がある。

この機体のデメリット

ここまでは、良いことを書きました。
もちろん、デメリットも存在します。

・自由に動ける範囲が限定される
・真俯瞰の撮影に弱い
・運用人員が多くなる
・0 [Zero]しか採用出来ない

上記の様なデメリットは存在するのですが・・・
人文字撮影にしてもCM撮影にしても、FIXなら問題になりません。
上昇・下降でも可能。
平面移動(普通の操作)も、条件が整う範囲で可能です。
「真俯瞰」に関しては、「斜俯瞰」である程度カバー出来ると過去の経験から言えます。
運用人員は、ヒモを管理する人員がいることから確実に増えてしまいます。
そして、この人員のスキルは事故と直結することから熟練を必要とします。
コストアップという観点からは問題なのですが、そもそもが絶対の安全がコンセプトなのである程度は認められると思います。
最後が、ある意味で一番の問題。
この機体は、0 [Zero]が既に特許出願済みです。
そして、上空のヒモを扱うという職人芸も必要。
開発初期の機体は、間違い無く職人仕様。
ここは諦めて下さい。

3Dプリンタ打ち出しスキッド支持部分
1gを削るコスト

これは、スキッドとフレームを拘束する樹脂部品です。
いつもの通り、3Dプリンタにて制作されています。
この様な小さな部品でも、何度も設計修正がされていることが履歴からわかります。
試作を繰り返すのは、軽量化と墜落時の衝撃を逃がすという観点から。
3Dプリンタにより内部密度をコントロール出来るという特性を利用しています。
ヒモ付きという特性から、墜落予定位置にはスタッフが陣取ります。
ある程度のリスクを承知して運用をするのですが、人命に関わる事は出来ません。
ここでも、何よりも軽量。そして、事故規模を小さくするヒューズという考えは必要です。
このパーツで実現出来る軽量化は10g以下です。
小さく、原価(3Dプリンタのフィラメント)も安いパーツですが、市販品では実現出来ない重要なパーツです。

Ver2の基本設計

このページで製作が開始されたVer1でのデータ取り後に、Ver2の制作に入ります。
こちらは、重くなるかわりに、新たな特許出願機構とパラシュートを搭載する予定です。
2015年の開発部のメインテーマは、ヒモ付き機体となります。
普通のマルチコプターは・・・ 今年はお休みでも良いかもしれません。

公開日:2015/01/08
最終更新日:2015/05/08
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