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ドローン空撮[技術解説] - ゲインとは?

ゲインとは?

ドローンの設定項目で、もっとも基本的なのが姿勢制御のゲイン値です。
マニュアル等でも、「具体的に何をしているのか?」という具体的な技術は少なめです。
ここでは、Flashムービーを用いて基本的なゲインの概念を解説します。

ゲインとは?
ゲインとは?

姿勢制御の反応速度を設定しているのがゲインです。
値が高いほど、強い力(速いモーター回転数)で姿勢制御行います。
基本的には、高い値に設定するほど安定性が高まります。
ただし、ゲイン値を上げすぎるとハンチングを起こしてしまいます。
これは、自動車の運転で例えると、リアタイヤのスベリをカウンターステアで打ち消す動作と同じです。
ハンチングの状態は、カウンターステアを当てすぎて、蛇行を止められない危険な状態と言えます。

下降時にハンチングに入る理由
下降時にハンチングに入る理由

下降時は、相対重量が軽くなります。
この状態では、ゲインは擬似的に上がることになり、ハンチングに入る危険性が高まります。
これを防ぐには、以下の様な具体的な対策があります。
・低重心とする
・モーター間隔を広げる
・低効率のプロペラを用いる
・ゲインを下げ気味にする
・上方投射面積を減らす
概ね、機体の敏捷性を損なう方向に調整すると、下降時のハンチングの可能性は下がります。

下降=上昇気流
下降=上昇気流

ホバリング時に突然ハンチングに入る事があります。
この現象は、上昇気流起因であることが多いと思われます。
風の無い日の暴走原因が上昇気流であることも多く見受けられます。
地表表面では上昇気流が発生しにくいことから、このタイプの墜落事故は高い高度で発生する傾向があります。
高度100mでホバリンク中に暴走に入るという事故は、このパターンです。
※移動中でも、加工中でも条件が揃えばどこでも、ハンチング~暴走という可能性があります。

一方で風の吹いている場合の墜落は、地形により上昇気流が発生しやすい場所で起こります。
ビルの屋上付近が都市部で風起因の上昇気流が発生するポイントです。
堤防付近の同様の理由から注意が必要です。

0 [Zero]は、2011年のマルチコプター参入時から軽量機体を用いることが特徴です。
故に、このハンチング起因の墜落を無数に経験しています。
パイロットの目の前1mで墜落というパターンなどは、今では上昇気流起因とスッパリと言い切る事が出来るまでになりました。

墜落後のプロペラ
コラム:0 [Zero]流のゲイン調整の仕方

以下は、新規の機体を制作するという前提で、ゲイン調整の考えを記させて頂きます。
1:無難(低め)な設定値でテストフライト
2:高めの設定値でホバリング+上空 多くの方は、ここでテスト完了
3:ハンチングテスト※1
4:③のテストでハンチングを起こした場合は、設定値を下げる
5:④のテストをクリア出来るまで、ゲインを下げながらハンチングテスト
6:⑤のテストの値から安全率を掛けた数値を上限として記録
7:実務内容に応じたフィーリングの調整(ゲインを下げる方向で再調整)
8:仕上げのハンチングテスト※2

※1:ハンチングテストについて
テストの目的は、「急激なマニューバ時にハンチングを起こす限界を探る」です。
ハンチングを起こして墜落するまでが1セット。
無風条件下の最大速度での垂直下降が基本になります。
垂直降下をクリアしたら、機体を激しく左右に揺さぶる。
タイミングを取って、わざとハンチングに入る様なマニューバを心がけます。
目的は、ハンチング限界のあぶり出しである事から無慈悲に機体をいじめます。
なお、このテストではラダーは用いません。
エルロン+スロットル
もしくは、エレベーター+スロットルという動作が基本になります。

※2:仕上げのハンチングテストについて
このテストの開始時点で上記のハンチングテストはクリアしています。
一般的に想定される、緊急時のマニューバでハンチングを起こさない機体設定に仕上がっています。
この仕上がった機体の素性を確かめるために、さらに激しいテストを実施します。
エルロンで激しい左右の揺さぶりをつくる。
その揺さぶりの中で、ラダーを、「チョン」と突く。
多くの機体は、これで墜落します。
実務では、この様な操縦は有り得ません。
ここまで攻めると、どのような現場でも自信を持ってフライトに臨めます。
スペックにあらわれない部分ですが、重要な事と考えています。

この様にして仕上がった機体のゲイン値は、一般的な数値を大幅に下回っています。
これは、ワンマン+ノーファインダーという0 [Zero]の撮影スタイルに特化した為。
マルチコプターから参入した方には、非常に操縦しにくい特性になっています。
一方で、従来型ラジコンの経験が豊富な方には、好ましい特性を示します。
2013年の夏を最後に、パーシャル域起因の墜落は0 [Zero]で発生していません。

公開日:2015/04/30
最終更新日:2015/05/09
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