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ドローン空撮[技術解説] - 宅配ドローン実証機制作 その2

宅配ドローン実証機制作 その2

モータースパンなどの基本設計を最初に行います。
その結果を基に不足部品の発注へと作業は続きます。

スパン735mmの16(8モーター)を設計
スパン735mmの16(8モーター)を設計

マグネシウムフレームを切り出しました。
対角線上のモータースパン735mmとして設計されています。
一部のアームを切り離すと、1650ペリカンケースに収まります。
2.0kgクラスのペイロードを想定する機体としてコンパクトなサイズに留めています。

以下、自社用メモ
長フレーム:680mm
短フレーム:199.172mm
※モーター芯にて算出

モーター:SUNNYSKY Xシリーズ
モーター:SUNNYSKY Xシリーズ

←これが使用予定のモーターです。
SUNNYSKY Xシリーズという安価(ファントムクラス)なモーターで、この時の選別落ち品を用います。
※微振動が発生することから撮影業務には使えない。
安価ですが、「当たり」のロットの性能はすばらしく、一頃は0 [Zero]の主力モーターの検討にも上がっています。
複数のロットを購入した結果、歩留まりの悪さが致命的である事が確認出来た事から採用には至りませんでした。

プロペラ:10インチ3枚
プロペラ:10インチ3枚

プロペラは使い慣れている、「10インチ3枚」を用います。
この機体は、映画・ドラマ撮影を想定した【特願F】【特願Tシリーズ】の最初期の試作機となります。
0 [Zero]はドローンの開発当初から、「マルチコプターは人に寄れることがメリット」として機体開発が進められています。
この特徴を活かすためにも、大きなカーボンプロペラは障害となります。
大ケガをしないという観点から、Aクラスとします。
Aクラスは、衣服の上からの接触ではケガにならない事を相違したクラスとなります。
なお、プロペラ接触危険率は自社規定となることから一般的ではありません。

モーターコントローラー:12Aクラス
モーターコントローラー:12Aクラス

ここも使い慣れている12Aクラスのモーターコントローラーを用います。

←使用品(過去にテスト機などに実装済み)が20個程度。
新品も30個程度在庫がありました。
用いてるのは、このクラスでは定番と呼べる商品。
0 [Zero]では4年以上の使用経験があります。
その間に、高温・低温・高湿度などの条件で十分な運用ノウハウが蓄積されいます。
非常に安価なパーツですが、これが無くなると本当に困ることになります。

ダンパー:ラジコンバギー用を流用
ダンパー:ラジコンバギー用を流用

検証内容には荷物加重を利用したセルフレベリング機構が含まれます。
2軸にダンパーが用いられ事から、ダンパーも在庫確認を行います。
用いるのはラジコン用のダンパー。
製品組み込み向けのダンパーも選択肢には入るのですが、ダンパー効果を容易に調整出来る事から昔からラジコン用を好んで流用しています。
マルチコプターでは用いる事が無いパーツですが、バルーン空撮の機材ではセルフレベリング機構が多いことから頻繁に用いています。
一度セッティングが固まると壊れる部品では無い事から、10年以上前に購入した物も含めると、40セット程度のストックがあります。

モーターコントローラー:12Aクラス
フレーム:マグネシウム

フレーム材はマグネシウムを選択しました。
ドローンのフレーム材料としてはマイナーです。
主な特性を以下に示します。
・軽量
・振動吸収性
・電磁波シールド性
・良加工性
・放熱性

0 [Zero]が、最初のマグネシウムフレームのドローンを試作したのは2012年に遡ります。
当時から、マグネシウムの特性に着目していました。
この4年間のテストで、初期の頃とマグネシウムに対するイメージも変わっています。
過去に制作したページから時間も経過したことら最新の考えを述べてみます。
※「振動吸収性」に関してのイメージが主なところです。

◆軽量
マグネシウム(AZ31)=1.82g/cm3
アルミニウム=2.7g/cm3
カーボン=1.5g/cm3
マグネシウムは、もっとも軽い実用金属とされています。
※実用という部分では、さらに軽い金属有り
アルミの2/3の比重であり、カーボンに迫るレベルの比重です。
金属の中でドローンに使える材料を選ぶならマグネシウムしか無いと言えます。
ただし、カーボンほど肉厚を薄く出来ない事から軽量小型機には向きません。

◆振動吸収性
・マグネシウムは優れた固有減衰能を有する

マグネシウム材を扱っているサイトでは、ここを押してきますが・・・
合金になると期待しているほどは減衰しません。
全てを試した訳では無いのですが、AZ91マグネシウム合金(Al9%、Zn1%)は良い結果は出ませんでした。
今回の試作ではドローン宅配のテストとなることからも振動減衰は必要ないと判断しています。
仮に、宅配ドローンを大量生産するなら・・・
まずは、振動発生源のモーターの加工精度向上が第一優先です。
そこを押さえてしまえば、問題なしです。

◆電磁波シールド性
・マグネシウムは安定したシールド効果を発揮します・・・

実は、他の金属と同じ厚みで比較すると特に優れている訳ではありません。
マグネシウムは他の材料と比較すると軽量であることから、厚みがあっても問題とならない。
さらに、実用には厚くする必要がある。
シールド材料として評価すると低いのですが、付加機能として評価すると、「極めて優れている」となります。
カーボンも同様に電磁波シールド性があるのですが、後記する放熱性という点まで考えるとマグネシウムに軍配が上がると考えています。

◆良加工性
マグネシウムはアルミと同感覚で加工は可能です。
しかし、燃えるという特性も同時に注意が必要です。
パイプ状では問題ありませんが切り子は危険物です。

◆放熱性
マグネシウムは、熱しやすくて冷めやすい。

これがドローンに用いるフレーム材として、カーボンと比較した場合の最大のメリットです。
フレーム内にモーターコントローラーなどを内蔵しても、冷却効果が期待出来ます。
電磁波シールド性と放熱性のバランス。
ここがドローンフレームとしてマグネシウムが優れている理由です。

まとめ

2016年現在のドローンは小型はプラスチック、大型はカーボンという棲み分けが主流です。
アルミなどの金属フレームもDIYが普通という時代(2013年頃まで)は、見かけることがありました。
この少数派のアルミも、薄物のパイプという前提なら活用の範囲は残っています。
これは、比較的軽量なアームの長い空撮機限定。
採用するモーター次第では、カーボンパイプよりも振動減衰効果が高いという事もあります。
「事もある」という逃げを打ったのは、その都度の条件でどちらが優れているからは変わるからです。
自分の用いる環境下で、両方の比較テストを行わなければ答えは出ません。
なお、0 [Zero]の2015年時点の機体は、動画主体の機体にはカーボン。
スチール主体の機体にはアルミを用いていました。
撮影内容で必要とする性能は異なる事に起因する使い分けです。

大まかな仕様は固まったことから、細かな設計に入っていきます。
具体的には、ベアリング搭載部品や3Dプリントパーツが該当します。
しばらくは、撮影業務を消化しながらのドローン製作業務が進行します。

公開日:2016/02/16
最終更新日:2016/02/16
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