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ドローン空撮[技術解説] - バッテリー初期不良の原因特定

バッテリー初期不良の原因特定

DJI Phantom2の純正バッテリー。
40日の自己放電テストにより初期不良の原因が特定出来ました。

◆テストの目的
アマゾンにて、2セットのDJI Phantom2を購入。
その同梱バッテリー2個が初期不良でした。
そこから、DJIの製品管理体制を確かめるために、最終的に5セットをテスト購入し様々な考察を重ねました。
その際に出てきた推測が・・・

DJI純正バッテリーは自己放電が高いのでは無いか?

この様な推測です。
仮に自己放電が高いことが確認出来ると、DJIバッテリーの初期不良の高さを説明出来ます。
工場出荷時に適切な50%容量とされていても、流通過程で過放電になる・・・

なお、当初はドローン撮影業務にPhantom2を導入する予定はありませんでしたが、方向性が変わってきました。
最初の内部の解析により、2年間で大きな進歩があったと確認。
また、国土交通省への許可申請の関係から、「非改造市販品を機体のラインナップに加える事はメリットが多い」と感じ始めています。
そこで、0 [Zero]初となる完全非改造機体の実務導入検討を兼ねてテストを重ねています。

実務で用いるには、あらゆる不安要素を洗い出す必要があります。
バッテリーのトラブルは即時墜落に繋がることから最重要課題。
社内の管理ポリシーを定めるための自己放電テストを公開します。

自己放電テスト中のDJI Phantom2バッテリー
テスト結果から

結論からお伝えします。

DJI Phantom2純正バッテリーは、自己放電量が異常に多い。

この様な結果となりました。
詳しくは、以下で述べていきますが、「安全運用には、リチウムポリマーバッテリーに関しての十分な専門知識が必要」です。
電動ラジコンの未経験者などでは、初期不良が多い事から非推奨。
プロが用いるに場合でも、運用には注意が必要であることがわかってきました。
今までは、DJI製品を初心者を中心に推奨していましたが、それを改めます。
0 [Zero]としては、すべてのDJI製品の購入をおすすめしません。

※リチウムポリマーバッテリーを正しく理解している方は可

業務妨害と取られかねない過激な物言いです。
ここまで書くからには、具体的なテスト結果を交えながら以下で詳しく解説します。

満充電からの自己放電テスト
DJI Phantom2 × 5セット

2016年4月に購入(初期不良交換含む)された、5本の純正新品のバッテリーを用いました。
左端がフルセットに含まれていた正常なバッテリー(アマゾンにて購入)
残りが初期不良対応により届いたバッテリー(アマゾン発送のショップ)
全てのバッテリーは、新品から満充電されて1~2回のテストフライトを実施しています。
この中から4本を満充電し40日の自然放電テストを行いました。

テスト開始:2016/05/11
テスト終了:2016/06/30

識別 容量表示
開始日
容量表示
30日経過
容量表示
40日経過
容量表示
50日経過
備考
1604A : 3221150414402 99% 59% 56% 52% Amazon公式からの購入
1604B : 3221150522353 99% 60% 58% 未計測 初期不良の代替え品
1604C : 3221153508464 99% 58% 54% 未計測 初期不良の代替え品
1604D : 3221153510912 99% 57% 54% 未計測 初期不良の代替え品

・充電は5/10に純正充電器にて実施
・室温は不在時もエアコンを用い一定管理
・容量計測は非改造の同一の機体を用い短時間に実施
・容量開始日は2016/5/11
・容量30日経過は2016/6/10
・容量40日経過は2016/6/20
・容量50日経過は2016/6/30

テスト結果
30日経過の段階で、全てのバッテリーにて4割程度の容量減を確認。
Phantom3に搭載されている自動放電の機能が最新のPhatom2バッテリーにも搭載されているという可能性を考慮しテスト継続。
40日経過の段階で、さらに3%前後の自己放電を確認。
この段階で自動放電の可能性は残りますが、自己放電が高いという事は確定。
自動放電に関してはテストの主題では無い事から、今回はスルーします。

50%残量からの自己放電テスト
DJI Phantom2バッテリー自己放電テスト

リチウムポリマーバッテリーの保管時のベストな容量は50%とされています。
高温下でも破損せず長期間の在庫となっても自己放電によりダメージが入らない容量が50%と言えると思います。
多くの汎用充電器の、「ストレージモード」もデフォルト設定は50%です。
汎用バッテリーは、工場出荷時に50~60%の充電量に調整されて流通経路に乗り手元に届きます。
※工場出荷時の充電率は、過去の購入経験からの推測

ここでは、フライト完了後に保管にベストな50%に調整されたバッテリーを想定してテストを実施しました。
用いるのは、通電待機電力のテストの際に51%容量にてテストが完了したバッテリーです。

テスト開始:2015/05/10
テスト終了:2015/06/30

識別 容量表示
開始日
容量表示
30日経過
容量表示
40日経過
容量表示
50日経過
備考
1604E : 3221153510952 51% 35% 32% 27% 通電待機電力のテストに用いたバッテリー

テスト結果
1日平均で0.5%前後の自己放電を確認。

リポバッテリー計測中
テスト結果の考察

満充電から30日で40%の減少。
これは多すぎると感じた事から、Phantom3などに搭載されている放電管理の機構が入っているのかという疑いがありました。
そこで、さらに10日のテスト延長。
ここでも異常レベル(10日で3%前後)の自己放電が確認されたことからひとつの答えは見つかりました。
「Phantom2のバッテリーは異常に自己放電する」
これで、アマゾンから購入した4セット全てのバッテリーが初期不良であったことの説明が付きます。
工場出荷後からユーザーまでの時間が一定期間を過ぎると過放電によりバッテリーは不良となる。
テストを継続しますが、仮に10日で3%の自己放電(回路消費)があると仮定します。
工場出荷時に50%容量とされているバッテリーは、150日後に5%の残量。
工場出荷から半年以上経過すると、この様なリスクが出てくると推測されます。

加筆:2016/06/30
スタート時に50%残量のバッテリーを用いた追加テストにより、1日平均0.5%程度の自己放電がある事を確認。
工場出荷時に50%残量と仮定すると、100日で過放電領域に入る可能性があると推測されます。
この特性から出荷時残量が75%と多めと仮定しても、出荷時から6ヶ月を持つとは思えません。
なお、この問題は、DJI Phantom2(後期モデル)の純正バッテリーに発生する事柄です。
バッテリー容量が多い最新モデルでは、この猶予期間は長くなると推測されます。

ストレージ保管のリポバッテリー

注意:
リチウムポリマーバッテリーの自己放電は少ない

リチウムポリマーバッテリーも少ないと言っても自己放電があります。
ただし、非常に微量です。
他の二次電池と比較すると無いに等しいと言っても良いレベルです。

←事務所内のテストバッテリー置き場。
ここには、完全や新品やテスト後に残量50%に調整された長期保管のバッテリーが山積みとなっています。
その日付けの古い物は4年以上前に遡ります。
この大量のバッテリーですが、1年で5%の容量が自己放電することはありません。
保管の間に突然死というパターンは少なからずあります。
しかし・・・40日では、1%以下の自然放電が普通です。

DJI製品を推奨しません

今回の検証から、「一般の方はDJI製品を購入すべきでは無い」という立場を取らさせていただきます。
注意していただきたいのは、検証が出来てトラブルの発生原因を解明出来る技術レベルの方は除外です。
対象とするのは、一般の方なのでご注意ください。

◆問題1:アマゾンにて購入した、ほとんどのバッテリーが初期不良
今回テスト購入を行った5セットの中で4セットの同梱バッテリーが初期不良でした。
このページの自己放電テストにより原因は異常な自己放電特性と解明されました。
ある一定期間の在庫となると流通過程でバッテリーが過放電となり初期不良となります。
アマゾンで販売して、これだけの初期不良率であることは問題と言って良いでしょう。
ドローンの初心者が販売店と交渉するのは困難な事でしょう。
初めての機体なら、別メーカーから選ぶべきと思います。

◆問題2:初期不良の多さを放置するDJIの姿勢
相当量のバッテリーが初期不良としてDJIに返品されていると推測されます。
当然その原因も理解しているハズです。
デビューから2年が経過している大量生産品で、この問題を放置しているのはメーカーの姿勢としては問題でしょう。

◆問題3:突然の墜落の原因のひとつ
購入したバッテリーが、初期不良ギリギリの過放電で手元に届いた場合は危険です。
それは、新品にもかかわらず重大なダメージが入った可能性があるバッテリーです。
この様な潜在的なリスクが潜んだバッテリーは、扱いが非常に困難になります。
上空での最大負荷の放電により想定よりも早く寿命を迎えるという事は想定出来ます。
新品購入から僅かな期間で突然の墜落。
この原因のひとつして指摘出来ます。
問題2にも絡みますが、この様な重大事故に繋がる原因の放置は大きな問題です。

補足します。
仮に、PAHNTOM2のバッテリーを満充電で20分飛行可能とします。
購入から1ヶ月で10フライト行い、全て18分程度安全に飛べたとします。
いつも通り満充電し、離陸前の残量表示も適正。
いつも通りフライトを開始して5分後に突然垂直落下。
墜落後にバッテリー残量を計測すると、「50%以上が表示される」
この様な事が起こることが想定されます。
プロを自称する方々に問題を出します。
墜落後のバッテリーが50%以上の値を示すことが説明出来ますか?
これが説明出来る技術レベルの方が業界には少ないのが実態です。
ずるいようですが、この場所では答えは出しません。
ご自分でベンチを制作し、実証テストを行い、この答えをご自身で確認してみたください。
コストも時間も必要としますが、このテストを実施すればバッテリー起因の墜落原因の多くをなくすことが可能になります。
また、手持ちのバッテリーの僅かなコンディション変化にも気がつける事になるでしょう。

◆問題4:この問題を誰も指摘してない
Phantom2は、ドローンを一般化した歴史的な機体です。
世界中で販売されて、初心者からプロまでが運用している機体です。
そのようなドローンを代表する機体なのに、今回のバッテリー自己放電に関する指摘が無いのです。
初期不良によりバッテリー交換という事例は多く見つかります。
しかし、その原因を掘り下げる方は見つかりません。
もちろん一般の方が気がつかないのは当然のところです。
でもプロを自認されている方々が動かないのは問題でしょう。
※ショップなども含めて気がついている方は相当数存在すると思いたい
DJI起因ではありませんが、未熟なドローン界隈その物が危険と感じ指摘します。

まとめ

今回の検証結果は予想通りと言える物でした。
インテリジェントウンヌンとされる機構は、顧客の囲い込みが主な目的であると言えると思います。
総合的な信頼性という観点からは、問題の基盤がない汎用バッテリーの方が好ましいと言えます。
また、世代交代毎に容量を増しているDJI純正バッテリーは自己放電対策という裏の一面が見えてきました。

今後も検証は継続されます。
特に残量50%以下の状態の猶予期間を検証します。
本来なら、この検証結果も公開すべきところですが、これ以降の追証は基本的には公開しません。
このページで、DJIのバッテリーの瑕疵に関しては世間に示しました。
基本的には、このページのテスト内容を自身で再現出来ない方は、ドローンを飛ばす資質が無いと思います。
つまり、必要ならば、自身の責任の元で必要なテストをする必要があるのです。
この様な観点から、以降の検証結果は非公開とさせていただきます。

公開日:2016/06/20
最終更新日:2016/06/30
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