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電気自動車は、「燃える」のか?

ネット上のニュースで「中国の電気自動車メーカーが経営危機」という記事を見ました。
その原因は事故による車両火災と・・・

メーカー名は比亜迪(BYD)
「e6 事故」などと検索すると、事故の写真も含めて探す事が出来ます。

リチウムポリマーバッテリー

私はリチウム系電池(リチウムイオンポリマー通称「リポ」)を仕事で使っています。
使っているというよりも・・・
コレが無ければ仕事にならないというのがラジコン空撮の世界です。
←これで、4kg程度の重さがあります。
この量でも、自動車を動かす程度の能力があります。(高速を、100km走行とかはムリ)

一般にはあまり知られていないのか知れませんが・・・
リチウム系のバッテリーは扱いを間違えると、「爆発」と読んで言いレベルの燃焼が発生します。
100g程度のバッテリーでも、燃焼させると恐怖を感じるレベルで激しく燃えます。
電気自動車に用いられるクラスのリチウムバッテリーが満充電で燃えたとすると・・・
恐ろしい物があります。

リチウムポリマーバッテリー・フェリー移動中

リチウムポリマーバッテリは飛行機で輸送困難

←フェリーにて現場に移動中
緑の箱の左の、「銀色の箱」がバッテリーケース。
ケースと言っていますが・・・耐火金庫です。
この様な移動中は満充電では危険なので残容量を調整して移動しています。
※実務ではフライト直前(前日)などに全てのバッテリーを満充電し耐火金庫で保管。

私は自動車移動を標準としています。
バルーン空撮では巨大なバルーンを運搬することから選択肢がありません。
しかし・・・
ラジコン空撮では飛行機移動で仕事が出来そうなのですが・・・
ここで問題が発生します。
リチウム系バッテリーは飛行機による持ち込みに規制があります。
パソコンのバッテリー程度は問題にならないのですが空撮を行うほどのリチウムポリマーバッテリーは飛行機に持ち込めません。

ちなみに明日は広島にてラジコン空撮。
移動距離は700km程度を予定しています。

リチウムポリマーバッテリーの中身

仕事ではバッテリーのトラブルが事故に直結します。
この場合の事故は、「燃える」ではなく「墜落」に該当します。
「墜落」の可能性を限りなく少なくする為に、購入したバッテリーは全て内部まで検品。
製造会社の「社内規定をパスしています」などという言葉には一切耳を傾けません。
※ここまで、徹底的に安全に拘る空撮会社は私のみ。

前振り完了

ここからが本題となります。
私は電気自動車を販売している営業マンや、普通の自動車開発者よりも、リチウムイオンポリマーバッテリーの知識と取り扱いの経験があります。
もちろん、電池の開発者などよりは・・・劣ります。
しかし・・・
並の自動車ライターでは経験することが出来ない実務実績があります。
それではブログもどき流の電気自動車の考察に入ります。

1):電気自動車は危険なのか?

Q:電気自動車は危険なのか?
A:国内メーカーの電気自動車は多分安全

まずは一番肝心な部分から。
国内メーカーの電気自動車は中国メーカーの様な車両火災事故を起こしにくいと言って良いでしょう。
国内のメーカーはこの手のトラブルを嫌う傾向があります。
テスラの様な電気自動車を、直ぐにでもつくれる技術は数年前にあるにも関わらず・・・様子見をしています。
プリウスなども、いつでもニッケル水素からリチウムにすることが出来たのに・・・慎重に事を進めています。
トヨタを中心とした国内メーカーが考えているのは・・・

自動車メーカーの、「非」がどの程度問われるのかを見切りたい

この様に考えています。
リチウムバッテリーをある程度、勉強するとわかるのですが・・・
「自動車に搭載して、現実的なコストで絶対に火災を起こさないのは不可能」という答えに行き着きます。
それ故に、トヨタが量販車(プラグインは量販車では無いと思っています)でリチウムをいつまでも積まないのです。
これはプリウスが積極的に安全装備を標準としてきた流れからも証明されます。
自動車雑誌などで、電池起因のリスクを述べられないのは・・・
ライターさんの知識不足に全ての起因があります。

「既に電気自動車に乗ってるよ~」と言う方が必要以上に怖がるのもどうかなので、安心材料も・・・
国産メーカーの電気自動車なら、普通の事故なら燃えるようなことは無いと考えて良いでしょう。
激しい事故なら・・・車両火災の可能性は十分あります。
ただし・・・車両火災が想定出来るようなクラスの衝撃なら、火災の前に即死です。

2):大きな電気自動車なら航続距離は伸びるのか?

Q:大きな電気自動車なら航続距離は伸びるのか?
A:その通り。ただし、走る火葬車とも・・・

電気自動車の、「欠点」と言えば航続距離。
ここを強化するにはバッテリーの増量。
つまり、電気自動車の大型化がひとつの答えです。
あまり知らないライターさんは、「大型化してもバッテリーの自重で相殺される」などと言うかも知れませかんが・・・
それは間違い。
私の仕事である、ラジコン空撮の世界でもフライト時間(電気自動車の走行距離)を伸ばすにはバッテリー搭載量の増加が常識。
フライト性能(運動性)は増量により落ちますがフライト時間は確実に延ばせます。

それでは現実世界で大型の電気自動車が存在しない理由・・・
それは「車格の大きな車両に大量のバッテリーを積むと、確実に問題になる」と自動車メーカーが認識しているからです。

1):現状の3倍程度のバッテリーを搭載(航続距離倍増)
2):高速道路で重大事故発生
3):車格が大きいので、ドライバーは生存
4):バッテリーが損傷し車両火災発生
5):ドライバーの死因は焼死と発表
6):電気自動車の安全性が問題となる

これが自動車メーカーが避けたいシナリオです。
※中国メーカーがこのパターン。
現在の電気自動車に小型車しか無いのは・・・
・搭載するバッテリー量を少なくしたい(火災規模の低減)
・絶対的な最高速度を抑えたい(事故の際のバッテリー損傷の低減)
これが理由です。
バッテリーの量が多くなると販売価格が高くなると言っているライターは信用しないで事です。

3):次の乗り換えは電気自動車になるのか?

Q:次の乗り換えは電気自動車になるのか?
A:いいえ。次の次もガソリン(軽油)でしょう

電気自動車はバッテリーがドンドン進化している・・・
この様に、皆さん(ライターさん)は思っているかもしれません。
残念なお知らせなのですがリチウムポリマー系のバッテリーは「詰んでいる」というのが私の認識です。
「新型が出る度に、能力が向上してる」という段階はとっくに過ぎています。
価格は下がり続けていますが能力向上の余地はあまりなしというのが現実です。
つまり、今から5年後の電気自動車も、ガソリンエンジン車と対抗出来るほどの航続距離を手にすることは出来ません。
(今と同等のバッテリー搭載量では)
ミニバンの電気自動車なども、バッテリー搭載量を制限したいという観点からも困難でしょう。
10年経っても・・・
電気自動車は短距離・低速移動に特化した、少し不便な乗り物から大きな発展はありません。

まとめ:私なら、こんな電気自動車を設計します

電気自動車で、最大の問題が「車両火災のリスク」であると、このページでは述べています。
命に関わるクラスの重大事故(車両変形)があると、高い確率で車両火災を起こす可能性が発生する。
そして、そのリスクを完全に消し去ることは出来ない。

電気自動車の設計の肝はバッテリーの搭載位置にある。
現在は室内浸食が最低限で、そこそこ安全な位置として床下がバッテリーの格納スペースとなっています。
ここを使い切っているから、航続距離の延長が出来ない。
安全で、そこそこのスペースが確保出来る位置は・・・中央の座席の座面の下。
普通はセカンドシードの座面下となるのですが・・・
前列3人乗りのムルティプラなどではフロントシートにも、このスペースが生まれます。
この、前後の中央に発生するバッテリースペースに動力バッテリーを積み込む。(アップライトに座らせる)
バッテリーを使用する場合はこの位置のバッテリーを優先的に使用。
もしも、事故が発生した場合でも、室内に設置するバッテリーの残量が少なくなるようにする。
室内側のバッテリーは頻繁に充放電が繰り返されることから、劣化も当然進む。
故に・・・床下側のバッテリーは車両の寿命中は無交換。
室内側のバッテリーは容易に交換が可能。

電気自動車のバッテリーの全てを新品交換しようとするから、コストが馬鹿にならない。
ならば、交換用のバッテリーエリアを確保してストレスを集中させる。
全体の1/3程度のバッテリー交換に押さえる事によりコストは低減。
交換時には100%とは言わなくても体感出来るクラスのリフレッシュ効果を感じることが出来る。
バッテリーが進化しても・・・即時に恩恵が受けやすい。
それも、費用を抑えつつ・・・

欠点はフロント3名乗車で無いと実現出来ない事。
市場からは別設計(前席2名)にも同じ設計(室内搭載)を採用しろと迫られるがそれは出来ない。
この位置の室内搭載メリットを強く言いすぎると、電気自動車のリスクに気がつかれる恐れもある・・・
大規模なメーカーでは踏み込みにくい問題が見えてきます。

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