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電気自動車とラダーフレーム

LC250

ランドクルーザー250の発注をしてから1ヶ月が経過しました。
納車予定は、4ヶ月後の2026年8月とのことです。

この1ヶ月で色々調べたことで、多くの事がわかってきました。
・VXガソリンは中東向けエンジン
・新車装着ATタイヤでも、ある程度の悪路走破性アリ
・VXの完全ノーマルでの50cmの降雪対応(私の狙い)
・ラダーフレームでも一定水準の自動運転(仕事の研究の一環)
・ADASは、2026年のトヨタに期待する水準が装着

私の用途(本格的なオフロードは無しで、雪対応のみ)ならガソリンVXで十分と思っていましたが、その通りという確認が取れています。
でも、デフロックくらいはオプションでも欲しかったとは思います。
この車の場合は、後付けで対応するよりも乗り換えが簡単なので、特に気にしていません。

私の過去の車購入にはあるパターンがあります。
それが、何の研究が出来るか?です。
今回は、ラダーフレームその物が研究対象であることは記した通りです。
もう少し詳しく書くと、ラダーフレーム+電気+自動運転の研究をしたいとなります。
私が作りたいのは、ラストマイル課題の切り札となる自動配送車両と末端の受け取りシステム。
ラダーフレームでどの程度の自動運転が、その時点で可能なのかは知っている必要があるんです。

とてもニッチなテーマになりますが、ここではラダーフレームと電気自動車に関して考えます。
切っ掛けは、数日前にBMWの出願特許が公開になったから。
そこには、電気自動車想定のラダーフレームが記されていました。

BMW出願 : DE 10 2024 130 768.4

DE 10 2024 130 768.4 代表図面

これが数日前に公開されたBMWの特許出願資料に示されていた図面です。
電気自動車に必要な大きく、平たい電池パックを座席下に引き詰めるというラダーフレームです。
特徴としては、運転席下にあるべきメンバーがありません。
ここのねじり剛性は、電池パックで出すという設計です。

座席下のフレーム構造に関しては、ラダーフレームとモノコックフレームで大きく変わることはありません。
違いは、足回りを取り付ける場所がバルクヘッドかフレームかという違いです。
そして、ラダーフレームと言っても過酷な用途を想定していないのは図中のフレームの太さから察することが出来ます。

そこ、悩むよね~

DE 10 2024 130 768.4 ラダーフレームの電気自動車の設計をすると悩むことがあります。

低重心と、各種取付点をどこで折り合いを取るか?

この図面から悩んでいる事が読み取れます。前後とも足回りのアッパーアームやアブソーバーの取付点をどこに設けるか?
室内の広さは確保しつつ、優秀な足回りを設計するには、ラダーフレームからどのようなメンバーを生やすのか?
特徴的なのが7の部材の存在。
後ほど私の設計を示しますが、私はここを省略しています。
理由は、ハンドリングは捨てた配送車両だから。
BMWは独立懸架でしょうけど、私の方はリジッドであることも理由の一つです。

ランクルのラダーフレームは、フレームの太さで剛性(強度)を出そうという設計です。
そして、BMWの設計は、重量を抑えつつハンドリングをどのように出すかを考えています。
ここは、各々の車のコンセプトに忠実という事ですね。

今回は、先行している特許などは調べませんでしたが、ラダーフレームの電気自動車などは別にBMWの発明では無かったことでしょう。
でも、この出願から、「BMWがラダーフレーム」にと先走るのは危険です。
キチンとみればわかりますが、これ従来のラダーフレームと考え方が根本から違うのです。
購入ページで記しましたが、ランクル250を含むラダーフレーム車は側面衝突という観点からはモノコックフレームに大きく劣る乗り物なんです。
理由は、サイドシルに該当する構造部材をそもそも必要としないから。
ここ、重要且つ誤解している人が多いからもう一度。

ラダーフレーム車は一般的に側面衝突に弱い

そして、今回のBMWのラダーフレームです。
コイツは、モノコックフレーム以上の側面衝突性能を示すハズです。
理由は、サイドシルよりも強度があるメインフレームが、その場所にあるからになります。
ただし、ここの高さを決めるのに悩みます。
一般的にバンパーコアの高さは地上から450mm前後。
ハンドリングを求めてバッテリー搭載部 = メインフレームの高さを下げると、Bピラーに色々と頼る必要性が出てくる。
BMWもあくまで、SUVだからこの高さで成立するという計算なんですね。

普通の電気自動車のラダーフレーム

DE 10 2024 130 768.4 上面図 繰り返しになりますが、BMWが出願しているのは、普通(SUV)の電気自動車に採用するラダーフレームです。
故に、運転席下の床下空間には平たく広いバッテリー搭載スペースを必要とする。
最終的な狙いは、現段階ではまだ確定出来ませんが、図中の91~94が重要なポイントになるハズです。
普通のラダーフレームと比較すると、31・32のメインフレーム位置が明らかに下の位置になります。
これは、バッテリーの低搭載を狙ってのこと。
そこから前後に伸びるメインフレームは一般型フレームよりも大きな高さ方向の変化をします。
普通なら、5→92→32→94→7というメインフレームは一本の柱として設計するところ。
でも、この車は、前・中・後と3ブロックに分けたモノコックフレームの様な設計になっています。
図中の91~94は、前面衝突時に衝撃が集中する部分です。
ここには、これでもかというほど物量が入るはずです。

自動配送電気自動車のラダーフレーム

自動配送車のラダーフレーム これが数ヶ月前に私が設計した、自動配送電気自動車のフレーム。
全長は、BMWが想定しているだろうサイズとほぼ同じと考えるとメインフレームの太さが全く違うことがわかると思います。
また、一般的なラダーフレーム車とは異なるアウトリガーの配置にも特徴があります。
そして、モザイクとしている部分が特許出願で影響が出る可能性がある部分。

事前調査で特許性無しとの判断が出来ればできる範囲で公開になります。
なお、事前調査とは、特許の出願前に同様な特許がどのように取得や出願がされているかの独自の調査です。
普通の特許事務所でも数万円程度のオプションとされているのが一般的です。
私の場合は、本格的な発案前に私自身が調査。そして、出願前に社内の複数人で様々な方法で調査します。
つまり、ここまで発明が進んでいるという事は、私の調査では特許性ありの査定をしています。
ま~特許庁とはいつもの通り進歩性アリの部分で戦う事になると思うのですが・・・
この「進歩性」とは、その業務についている者ならば容易に思いつけるかの部分。
往々にして、重要な特許は単純で、答えを見せられれば誰でも思いつけそうな物なのです。
そして、このモザイクの部分が、まさにソレという事です。

「空間だけ用意しておきます」というレベルで緩く設計

自動配送車のラダーフレーム 今の段階でも、ロワアームとアブソーバーの取付位置は想定済。
ここを厳密に設計しても、メインフレームの設計が変われば意味が無くなるので、現段階では緩く設計しています。
でも、バンパー取付ブラケットは、結構真面目に設計しています。
ここは、色々な部分が変更されても修正の必要性は少ない事から。
ここでは、黒い部分がスチールでグレー部分がアルミという想定で設計されています。

ランクル250の様な車を手元に置きたいのは、このような設計をするのにとても参考になるから。
各種クリアランスは、この車に合わせれば何も問題は発生しないということです。

少し、マニアックなお話し

自動配送車のラダーフレームと断熱材 CGは、左前から。
前軸の少し前の位置から切断しています。

タイヤは、ハイエースと同サイズ。
後輪駆動で、ホイールベースは長いことから限界まで操舵角を確保。
そして、自動配送車であることから、荷物が車内でロボットにより移動します。
メンバーなどが緻密に入っているのは、このロボットの移動をまかなうリニアレールがたわむことを嫌ったから。

内容量を最大化しつつ、可能な限り断熱材を採用。
このCGでも外壁と屋根の結合部分に関しては捨てているという事が確認できます。
ここ発泡ウレタンなどで少しは対策できるのですが、アルミを用いる限りは熱が引っ張られてしまいます。
量産のタイミングではアルミ以外も採用検討するのですが実証実験レベルでは入手性の良いアルミで妥協します。

DE 10 2024 130 768.4 さらにフレームの話。
少し、ラダーフレームに詳しい人なら、このCGで疑問が出てくるハズです。
「あれ、縦横比が何かおかしい?」
はい。その通りです。
ラダーフレームは、高さ方向が強度と剛性に寄与する。
つまり、縦長になるのが断面の常識なんです。
それでは、こいつは、なぜ正方形の様な断面をしているのか?
理由は、これ以上の高さを確保することが出来なかったからになります。
ラダーフレームの常識も捨て去っていることが、このカットからも読み取れます。
今回のBMWの特許もそうなのですが、従来のラダーフレーム車が想定していなかった用途に用いるという想定から設計が始まっています。
故に、使い古されてきたラダーフレームにも係わらず特許の余地があるのです。

なお、ロボットに該当する部分はネジ一本まで書いています。
ここは本業であることから、私が仕様を確定しないと話が先に進みませんので。

コラム:設計の意図という話

ランクル250(ガソリンVX)の契約から1ヶ月。
この間に、世界中の動画を様々見てきました。
そこで感じたのが、国内でのラダーフレームの語られ方。
特に、国内では「ラダーフレーム特有の乗り心地」などと走行中の印象が語られる事が多かったです。
国内以外はラダーフレームは要素のひとつ程度の扱い。
乗り心地(ユッサユッサ)の指摘は無し。
ここは、ラダーフレームの経験値の差と感じました。
地域によっては、走る車の半数がラダーフレームという地域があるくらいです。
どうしてもオフロード寄りの話題が中心となる。
そして、オフロード寄りの地域ではモノコックのディフェンダーよりもランクルの評価が上がる事になる。
このディフェンダーとランクルの評価軸は、国内と海外で大きく異なっていたのは面白かったです。

そもそも、ラダーフレームは現在の乗用車に必要無い代物です。
今回取り上げたBMWのラダーフレームは、設計者当人もラダーフレームと思っていません。
電気自動車で、「より安全に」、「販売もしやすく」、「低コストで」と様々な要件を同時検討した結果、行き着いた一つの案なんです。
なお、私の設計ではランクルのようなクロカン四駆やトラックでは無く、バスの様なフレームです。
ランドクルーザーなどのクロカン車が採用している理由は、ラッセルや牽引などの想定です。
砂漠などでは視界不良のままで、数十メートルも飛んでしまうという事もあるのでしょう。
ラダーフレームに限ったことでは無いのですが必要な性能だから採用されているという事なんです。

少し脱線します。
本当にトヨタは見事です。
国内と北米とヨーロッパ(UK)で、ランクル250に採用されているエンジンは意図を持って決められています。

エンジン型式 排気量/燃料/構成 出力/ミッション 主な地域
1GD-FTV 2.8L/ディーゼル/直4ターボ 204PS/500Nm/8AT 日本・アフリカ・アジア※2・欧州※4
2TR-FE 2.7L/ガソリン/直4NA 163PS/245Nm/6AT 日本・中東※3
T24A-FTS 2.4L/ガソリン/直4ターボ 279PS/430Nm/8AT 北米・中国
1GD-FTV(48V MHV) 2.8L/ディーゼル/直4ターボ 204PS/500Nm/8AT オーストラリア・イギリス
T24A-FTS(HV) 2.4L/ガソリン/直4ターボ 326PS/630Nm/8AT 北米
※1 2026年5月 私調べ 正規販売車両ベース。並行輸入車除く
※2 タイ・フィリピン・インドネシア・マレーシア・ベトナム・台湾・インド・モンゴル
※3 UAE・サウジ・オマーン・カタール・クウェート
※4 フランス・ドイツ・スペイン・イタリア・ベルギー・フィンランド・スウェーデン

上の表を見ると、日本だけ損していると思いません?
確かに、2TR-FE(もっとも非力なエンジン)でも私は使いこなせます。
非力であることも承知して予約しています。
でもね、、、
国外向けが、ここまでエンジンが揃っていて、日本向けはイマイチなラインナップなんでしょうか?
もちろん、国内は後出しで良い物を出していけば、新車効果が無くなっても販売数が維持出来るという目論見はわかるのですが・・・
なお、私が自由に選んで良いなら、欧州に設定がある1GD-FTV(MHV) が良いですね。
まず、7人乗りであること。
48VMHVならバッテリーの交換なども安価なハズ。
高速メインなら燃費の恩恵は少ないが、元々の車重があることから、MHVによる重量増も気になりにくい。
そして、信号待ちからのスタートで気になる振動は、主にパッセンジャーに優しくなる。
コイツにアリーン入れて、オフロード性能を高めると・・・お~中々に良い営業車になりそうです。
でも、本当は、豪雪対応よりも側面衝突性能を優先したい。
ここに関しては、降り始めの雪などの条件で速度を控えて、死亡事故になりやすい条件から逃げるしか無いんですね。
やはり、モノコック(ワゴン)に豪雪対策を足しているのが、私の好みなのか~

本題に戻ります。
エンジンでもわかるように、トヨタはその国々の色々(数年先の売れ行きまで)を考えて仕様を選定しています。
そして、ラダーフレームの採用も計算の中に含まれています。
悲しいのが、2026年という新車に等しい車両では、ランクル250の国内ユーザーはラダーフレームのメリットの多くは受ける事が出来ないと言う点です。
大きなメリットである牽引は、国内ではそもそもの文化が育っていない。
オフロード走行という部分も、他国と比較すると需要が少ない。
数少ない需要は、プロなら昔ながらのジムニーへ。
競技志向の方もジムニーへ。
昔ながらのランクル好きは、そもそもが現在の70は求めてないと思うんです。
MTとか、ホイールベースとか、、、少なくとも、私ならフロントがコイル化された直後の世代から選びます。
現在の方の感覚からは想像出来ないと思いますが、ロングホイールベースという段階で、オフロードを趣味としている昔の人からは「ナンパ」とされてしまいます。
どうせ、ボコボコになる環境に新車で乗り込むのは、色々と問題です。

まとめます。
調べるほどに、ランクル250は昨今の自動車としては、特異な程に色々と考えられています。
短い試乗の時でも、スイッチ類が下手な欧州車よりも考えられているのではという雰囲気を感じました。
少なくとも、私が購入した3型のハイエースよりも大幅に進歩しています。
今から納車が楽しみな車は久しぶりです。

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