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バルーン夜景空撮[技術解説] - 空力再設計1回目

1回目夜景撮影テストの問題点の改善

実施日:2008年7月8日 13:40
実施場所:山梨県内 御坂桃源郷公園近く
バルーン:Ver4.10
風速:0~2m/s 平均1m/s
テスト内容:既存バルーンに水平尾翼を追加

尾翼形状の最適化 夜景撮影テスト1回目では、「ピッチング」(縦方向のバルーンの揺れ)により、撮影は失敗に終わりました。
撮影された画像はスローシャッターの間にカメラが動いてしまい、点光源が「線」になってしまっていました。
1枚の夜景画像が撮れればよい業務なら問題になりませんが「同じ位置からの精度の高い4枚撮影」が必要な夜景CubicVRには使えません。
スローシャッターを必要とする夜景撮影ではバルーンの止まりは非常に重要な鍵になります。

ピッチングのコントロールの為に幾つかの改良方法を考えました。
1):水平尾翼の追加
2):上空にて重心点の移動(自動的)
3):上空にて空力重心を移動(自動的)

1):水平尾翼の追加

縦方向の動きに抵抗する「翼」を取付、ピッチングの動きを止めてしまう考えです。
飛行機や一般の空撮用のバルーンはこの方法でピッチングに対抗しています。

水平尾翼の重量が重くなるのが欠点です。

2):上空にて重心点の移動(自動的)

揺れる方向を打ち消すように、カメラなどの重量物を前後に動かします。
制御部分の構造にもよりますが成功すれば「もっとも重量増加が少ない」方法です。

3):上空にて空力重心を移動(自動的)

ピッチング成分を動的な翼により制御します。
ラジコンのヘリコプターにも用いられる方法です。
強い風では効果が期待出来そうですが0.5m/s以下の微風ではどれほどの効果があるかは疑問です。

初回の改良方法として、上記の三種類の候補から選んだのは1):水平尾翼の追加です。
・技術的にもっとも簡単であること。
・余剰浮力が十分にあること。
現在の撮影システムは車載化の為に徹底的な軽量化が施されています。
一度はヘリウムガスの容量が少なくなることから、この軽量化された状態で、「ベストなバランス」だったのですが4号バルーンにより余剰浮力が大きくなったことから多少の重量増は黙認することにしました。

なお、「4号バルーン」は、「3号バルーン」と比較すると、約700gの余剰浮力を持っています。
この僅かな狂いにより、4号バルーンはバランスを崩しました。
余剰浮力は大きい事に越したことは無いのですがそれ以上にバランスは重要です。

第1回空力再設計のテスト結果

バルーン空撮のテスト

風速0~2m/s
平均すると1.2m/sの風が吹いています。
この状態では・・・ピッチングを完璧に止めています。
テストですので、水平尾翼を、「付けた状態」「外した状態」を3セットほどくり返します。
風の条件がその間に動いても水平尾翼を、「付けた状態」がピッチを止めることが確認できました。

3号バルーンは最大風速10m/sとなった海岸での実務を経験しています。
この時には風により浮力を得たバルーンは微動だにしませんでした。
「このまま夜景が撮影できる」と感じたほどです。
3号も4号も風速4m/s以上になるとピッチングが止まるのですが・・・なぜが2m/s程度の微風になるとピッチングが出てくるという癖がありました。
この水平尾翼の追加により、微風条件でのピッチングは満足出来るレベルになりました。
しばらくは水平尾翼のある機体にて開発を進めることにします。

コラム:なぜ水平尾翼のないバルーンを使うのか?
水平尾翼のないバルーン

←2008年3月 バルーン1号最終形(Ver1.30)
0[Zero]が独自に開発を行ってきた過去のバルーンは水平尾翼を持たないことが特徴でした。
エバール製のバルーンは余剰浮力が少ないことが一つの特徴です。
このため、キヤノン5DやニコンD3などの高画質なデジタル一眼レフが搭載出来ないという欠点を持っていました。

0[Zero]ては航空写真ナビなどの開発の為に「フルサイズデジタルカメラの搭載を譲れない」というポリシーがありました。
そこで、徹底的な機体側の軽量化に着手し、行き着いた一つの答えが・・・「水平尾翼の撤去」でした。
通常の空撮用のバルーンで同様な事を行うと、ピッチ・ロール両方の動きが発生し仕事にならないはずです。
なぜ、0[Zero]のバルーンで水平尾翼が要らなかったかは・・・
敢えて非公開とします。
(勘の良い、同業者の方はこの写真でわかるハズ)

この無水平尾翼の機体コンセプトはまだ生きています。
次のステップに控えている「都内での低空からの撮影=ビル風」に対抗するには上下方向からの風の影響を受けにくい、このコンセプトが復活する可能性があります。
いづれは・・・
低風用・強風用・ビル風用などの機体の準備が必要な可能性があります。
当面は、「低風用」と、「強風用」の機体は尾翼のアタッチメントの有無で対応する予定です。

公開日:2008/07/14
最終更新日:2013/06/27
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