夜景空撮[技術解説] - 臨時の対風テスト=大失敗

久しぶりの強風

実施日:2008年7月○○日
実施場所:某所(撮影業務)
バルーン:Ver4.20
風速:2~10m 平均4m 墜落時予想風速15m
テスト内容:微風用垂直尾翼の対風限界の確認
この日は某所にて空撮の業務を行っていました。
撮影場所については、お客様から公開の許可を頂いていないので非公開となります。
梅雨ですが、貴重の晴れ間を狙い、幾つかの業務空撮を行っています。
この日は土曜日だったのですが、「晴れ」がこの週では1日だけでした。
この日は予報では「風速1m」実際に現場に入ると・・・平均で4m 最大風速は8mを超えていました。
通常の撮影では、キャンセルですが、繋留地点下が水田であったために撮影は行いました。
機体のセッティング途中であることと、時折8mオーバーの突風が吹いているため撮影には手間取りました。
通常なら、20分で終わる内容ですが、2時間の撮影時間となりました。

この日は、私たちには「久しぶり」の強風でした・・・

夜景空撮の機材は梅雨に入ってから開発が開始されました
その理由は、開発期間中は機材が不安定になることから実務を可能な限り行わないためです。
この日のセッティングは・・・決して褒められる状態ではありませんでした。
3号機の完成系(Ver3.10)を100点とすると、60点程度の点数です。
この2時間の業務時間もVer3.10(安定している旧型)なら、40分で撮影出来たはずです。
午前10時頃から開始された撮影は12時に完了しました。
お客様も撮影された画像を確認し、現場から離れました。
通常ならば・・・私たちも空撮バルーンを積載し撤収となります。
しかし・・・
この日は、非常に強い風が吹いていました。
その風速は、事務所のある山梨では、この一ヶ月間では吹くことが無かった風速6mの風です。
普通のバルーン空撮会社は風を嫌いますが、夜景機材を開発している私たちには、絶好のテスト環境でした。
休日出勤にもかかわらず、対風テストを急遽行うことになりました。

バルーン開発で最大の事故が発生

墜落直前のバルーン 購入金額100万円の撮影機材、高度30mから「落下」

0[Zero]では、2007年5月から本格的なバルーン空撮の機材開発を開始しました。
これまでに何度も、「破断テスト」を行っていることから、何回も墜落を経験しています。
風に極めて弱いとされているエバール製のバルーンにて、風速8mの風の中で実務を行うには、膨大な研究時間が費やされています。
弊社以外のエバールバルーンを用いる空撮会社は、風速5mにて墜落と予想します。
なお、この様なテストは「壊すこと」を目的としているため、河川敷などの安全な場所にてカメラなどの重量に相当するダミーウエイトを搭載した状態で行われています。

この日のテストは「予定外」
この日のテストは、予定に入っていない内容でした。
・実務での県外出張の為、ムダな荷物となるダミーウエイトの準備をしていない
・予報では風速1mの為、対風テストをする様々な準備をしていない
・風速5mでは、十分な耐久性を示した
・業務からの帰りに都市部にて夜景撮影テストを行うため、微風用の水平尾翼を用意していた

何が起こったのか?

テストの内容は、「風速2m以下」で用いられる「微風での夜景専用尾翼」の耐久テストです。
微風での用途と夜景撮影時に可能な限り機体を安定させるために、徹底的な軽量化が施されています。
具体的には、通常用いる尾翼の骨材よりも二回りは細いカーボン材にて制作されています。
←尾翼を支えている棒=ガボン棒 は、強い風が吹くと強烈に曲がっています。
本題に入ります。
この画像を撮っている事からもわかって頂けると思いますが、撮影現場では余裕があります。
過去に、遙かに過酷なテストを行っていることから、スタッフには特に緊張はありません。
尾翼の曲がり具合を観察しながら、強風下での尾翼に用いるカーボン材の太さについて話し合っていました。
このテストも10分以上経過したことから、「貴重なデータ取りが完了し撤収」となるハズでした。
ここで技術者の悪い癖がでてきます。
「折角、カメラを積んでいるのだから、このまま強風下の高度200mテスト撮影を実行しよう・・・」
これが、最大の判断ミスでした。
高度20m程度にてテストを行っていたバルーンを一気に高度200mまで上げることになりました。
←写真は高度20m程度
高度80m程度から異変が始まり、高度100mにて緊急停止。
上空には、想定以上の強風が吹き荒れていました
この風の強さは、繋留しているハーネスを通じて強烈に手元に入ってきました。
過去に経験している風速12m以上クラスの危険な風です。
この様に強い風が吹いても、0[Zero]のバルーンは風を浮力に変換するために繋留角度は十分確保されています。
周囲には電線はありますが、電線に引っかかることによる事故は心配ありません。
バルーンを地上に戻そうとしますが、引きが強すぎる為に時間がかかっています。
3分経過
上部の尾翼の付け根からカーボン材が折れました
カメラなどの重さが下にかかっている限りは、バルーン大きくは姿勢を崩しません。
尾翼を半分失ったことから、機体は乱れていますが、さらに地上に戻します。
さらに2分経過
コントロール部分を含むカメラがバルーンから落下
重量物であるカメラとカメラコントロール部分がバルーンから落下しました。
高度にして30m程度の高さからです。
撮影システムは、水田に落下しました。
さらに1分経過
半壊している尾翼がバルーンに突き刺さる=バルーン墜落
重量物であるカメラが無くなったため、バルーンの姿勢は破滅的に暴れます。
努力の甲斐もなく、バルーンは無惨な姿で墜落しました。
墜落の原因
想定外の強風が原因です。
上空での推定風速15m
なお、この時の地上での風速は9mを記録していました。
皮肉なことに、地上から上空に上げたタイミングで、この日一番の風に見舞われました。
元々が2mでの使用を想定している、微風専用の尾翼であるため強風により破断することになりました。
通常の「破断テスト」ならば、鉛で作られてるダミーウエイトなので、何の問題もありません。
この日に墜落したのは・・・
業務で用いる、エース級の撮影機材です。
購入金額で100万円。
この金額には、弊社の制作手間が入っていません。空撮機材の開発会社に依頼した場合は、200万円程度の購入金額になろうかという撮影システムです。

注意:あくまで耐久テストです

このページでご紹介してる空撮バルーンは、業務で用いる事のない極端に耐久性の無いテスト用の機材です。
実際の業務では、想定の倍程度の風にて耐久性を確認できた機材のみを用いていますのでご安心下さい。
今回は、実用風速2mの微風用バルーンにて用いる機材を、さらに補助部品を外して耐久性を落としてます。
そのような条件にもかかわらず風速10mに耐えることが確認出来ています。
墜落時の瞬間最大風速は15mを超えていると推測されます。(ちょっとした台風並の風です)
通常の撮影機材の場合は、風速10mでも破断することはありませんのでご安心下さい。
なお、通常の業務では、安全と撮影される画像のクオリティを考慮し、最大風速5mにて空撮業務は中止となります。

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