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バルーン夜景空撮[技術解説] - 墜落した空撮撮影システムの修理

落下した制御系

今回墜落したカメラ・レンズ・コントロールシステムは夜景テストに用いていない機材でした。
夜景撮影では用いるカメラが「ペンタックス」か「ニコン」と予定されているため、別の空撮システムを用いています。
つまり・・・
夜景空撮と昼の空撮で、使用するカメラもコントロールシステムも・・・さらには使用するバルーン尾翼まで使い分けています。
この点からも、0[Zero]が本気で夜景空撮に取り組もうとしていることがわかって頂けると思います。

落下機材の話しに戻ります。
キヤノンから夜景撮影が可能なフルサイズデジタル一眼レフが販売された場合はこの機材も用いることになります。

壊れたのはカーボン材が中心

コントロールシステムの全景です。
一部に社外秘とさせていただく場所があるので、モザイクをかけさせて頂きました。

壊れたのはカーボン材(黒いパイプ)と、アルミ材の一部です。
また、何点か断線も出ています。
しかし・・・これが30mから落下しても壊れなかったというのは奇跡としか言いようがありません。

カーボン材の交換と曲がったアルミ材の修正・交換は1時間もあれば完了できる範囲でした。
夜景空撮にかかわらず、バルーン空撮の機材は1gでも軽ければ性能が上がります。
このコントロールシステムも開発されてから1年が経過。
耐久性・実績共に十分であることから、今回は大胆な軽量化に着手することになりました。

軽量化:その1 9g

穴開けによるアルミ板の軽量化

この部材はいずれはカーボン板に置き換えられる予定のパーツです。
まだコントロール部については開発途上であるため、形状を確定出来ないという場所があります。
この部分がまさにその部分です。

当分はアルミ板を使う事になるので、不要部分のカットと穴をあけることにより軽量化を行いました。
この部分で9gの軽量化です。

まだ、軽量化の余地はありますがカーボン板導入までのつなぎなので、この程度の軽量化に留めます。
カーボン化により、さらに20gの軽量化が可能です。

軽量化:その2 5.8g

アルミ軽量化加工

カメラを回転させる機構の内部パーツの一部です。
アルミの削りだしの特注品です。
十分な強度は確保されているので、徹底的に穴空け加工を行っています。
空けた数は約40個。
これで5.8gの軽量化です。

十分な強度が確保されての軽量化です。選択する穴の大きさを厳密に管理すれば、さらに3g程度の軽量化は可能。
次回のオーバーホール時に軽量化作業を行います。

軽量化:その3 +0.2g

カーボン追加にわる補強

このパーツは作り替えたことにより重量が増しました。
カメラを支える部分なのですが以前のパーツでは肉厚が薄すぎたため、重たいレンズを取り付けると角度精度が落ちる場合がありました。
今回は敢えて0.2mm厚いアルミアングル材にて作り替えを行います。
このパーツも将来的にはドライカーボンアングル材に交換です。
強度は概ね20%アップ。重量は0.2gの増加です。

軽量化はネジまで対象

ネジ交換による軽量化

ネジパーツの収納箱です。
傷んでいた「ネジ」「ナット」は全て交換です。
ネジ類の交換は軽量化よりも安全性の配慮からです。
ネジ(ゆるみ止め防止のナイロンナット)は何度か組み替えを経験すると、ゆるみ止めの効果が薄くなります。
上空で緩んで落下という事をなくすために、性能の余裕を残した状態での交換となります。

また、ネジにも軽量化の余地があります。
ミリ単位で用意されたネジは最短の長さの物を使い0.1g単位の軽量化が進められます。
組み替えの際にも、数本は、「より短いネジ」で組み建てる事が出来ました。
この部分で1g程度の軽量化です。

なぜ、ここまで軽量化を進めるのか?

ドロドロのキヤノン5D

バルーン空撮に用いる気球はヘリウムガスにより浮力を得ています。
撮影システムが重いと、「より大きなバルーン」を必要とします。
大きなバルーンは、「バルーンの重さにより浮力を浪費」します。
同時に強風時の引きも強くなります。
空撮に用いる機材が重いのは負のスパイラルに陥る事を意味します。

今回の軽量化で、トータル25gの軽量化とわずかな信頼性の向上が行われました。
半日という時間をかけて、25gの軽量化です。
軽くなった重さは余剰浮力としてバルーンの対風性能の向上に使われます。

0[Zero]ではバルーン空撮会社が用いないフルサイズデジタル一眼レフであるキヤノン5Dを採用してきました。
上空で用いるレンズも、フィッシュアイ以外は全てLレンズ(重いが高画質)です。
空撮は画質が命と感じるからこそ、少しでも画質の良いカメラを安全に上空に持っていくために、軽量化の努力を惜しみません。

この泥だらけの5Dには手製のワイヤーストラップがついています。
ストラップをなくすと、運用時にカメラ落下の可能性が高くなります。最低限の重量で効果を出すために、ワイヤーにてストラップを製作しています。
なお、このカメラは洗浄後に実務に戻りました。

0[Zero]の撮影システムは・・・
100%自社設計。NC旋盤を必要な箇所は外注を用いています。
システムの20%は外注となっていますがその部分はアルミ削りだしパーツ部などになります。
そのため故障が起きる可能性がある部分は全て内製部となります。
各種軽量化や、撮影内容に応じた機材の開発などが容易に行えるのは撮影と開発がいつもとなり合わせにあるからに他なりません。
0[Zero]のコンテンツが「独自」で、「美しい」のはキチンと理由があってのことです。

公開日:2008/07/20
最終更新日:2013/06/27
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