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ADASのあるクルマづくりの長所と短所について

「某自動車サイトのQ&Aと同じ質問にブログもどきが答えます」の第十五弾。

ADASと無人飛行体の自立制御は似たような技術を用います。
このネタは私の専門分野ですね。

ADASのあるクルマづくりの長所と短所について

Q:先進運転支援システム(ADAS)の普及によるクルマづくりのメリットとデメリットを教えてください。安全性能が高まるということのほかに、どんな点で好ましいか。逆に失われるもの、マイナス要素としては、どんな点があるのでしょうか?
引用元 : 「ADASのあるクルマづくりの長所と短所について - webCG」
https://www.webcg.net/articles/-/48130

回答例(webCG)
A:運転の補助装置として上手に使って、今まで気がつかなかったところに意識を向けられるようになるのは、好ましいことですね。
(中略)
ADASが普及していくこと自体は、間違いなく望ましいものだと思います。
(中略)
デメリットがあるとすれば――これはクルマをつくる側の話ですが――ADASの採用に際してはカメラやセンサーのレイアウトに配慮しなければならないため、車両のデザインに大きな影響がある、ということでしょうね。

引用元 : 「ADASのあるクルマづくりの長所と短所について - webCG」
https://www.webcg.net/articles/-/48130

以下、私の回答。
A:メリットは安全以外にも安楽。
デメリットは、コストアップとADAS以外の設計の質の低下。
そして、失われるものは運転技術。

webCGでは以下に関しても語られています。
・クルマをつくる側の話

以下で個別に考えましょう。

ADASのあるクルマづくりの長所と短所について

まず、長所で大きなところは安全です。
ADAS装着車は非装着車よりも確実に事故を軽減します。
意地悪な方は、ADAS起因による事故や死者を取り上げるかも知れませんが・・・
そのマイナスを大きく上回るプラスとなる事からADASの普及を止める理由になりません。
そしてドライバーのメリットとして大きいのは安楽。
特に高速道路ではADASは疲労軽減に大きな効果があります。
細かいところでは、ADASの普及が進むと渋滞の緩和などと言う副次的なメリットも見えてくるハズです。
これは、トンネルの出口などで無駄な減速が発生しなくなることから今後10年くらいで見えてくる未来です。

デメリットとして大きいのはコストです。
これ、購入時は当然として維持の部分でもコストは確実に上がります。
しばらくはコストは上がっていく方向で何れは緩やかに価格は下がります。
正し、現状に戻る事は無く高値で安定します。
理由はコラムで書きますが、ADAS以外の車が走る根底部分にもコストが必要である事から。
私は好ましい方向ですが、多くのユーザーには過剰投資と取れないこともありません。

次のADASによるデメリット。
それが、ADAS以外の設計の質の低下です。
自動車の「開発エンジニア」という区分けで、どの分野に若い才能がある人材が集まるか?
・エンジン
・EV
・デザイン
・補機類
・生産技術
・ADAS
ざっと上げましたが、トップクラスのエンジニアのどの分野を目指すかをイメージして欲しいのです。
時代の変化と共に主役は移ろう事になるのですが、現在ならばADASは一本目の指でしょう。
つまり、ADASに優秀なエンジニアが集中することになります。
この優秀とするエンジニアは、ある一定の数の中から少しだけ生まれます。
そして、ここを人為的に増やすことは極めて困難であることは歴史が証明しています。
この、ADASの開発者ですが、無人飛行体の開発者と必要とする能力が被っています。
そう、ドローンなどの開発にも人材は散らばることから自動車本来の開発者の質と量は減ってい事を意味します。
ここを感じるのが現行車のナビの質。
今から30年前のナビで普通に出来ていたことが、現在のナビで出来ないということが多すぎます。
例えばルート選定のアルゴニズムの劣化。
そして実装テストの未熟さ。
30年前はナビの開発に優秀なエンジンニアが割かれていたという事でしょう。
その技術蓄積で安定した商品が生み出されそうな物なのですが・・・
現在のナビの開発者コピペしか出来ないサラリーマンと思っています。
いや、違いますね。
コピペでは無く、自身の「工夫」を入れる事により劣化コピーとなっています。
2024年現在に過去に出来が良かったと感じたナビを思い出すと、尽く15年以上前に発売されたナビとなっています。
あくまで道案内という本質部分で有り、スマホ連動などの現在風の機能は無視しての評価となります。

あまり指摘されない事柄であることからデメリットを多めに書きましたが、私はADASが大好きです。
ランドローバー DEFENDERを短期(1年)で手放した大きな理由はACCの出来の悪さから。
手持ちの車両でももっとも設計の新しいセンサーを搭載しているのですが、このチューニングが納得出来る物ではなかったからです。

また、最新型のVW ゴルフヴァリアント も所有していますが、これもリピートしないとしています。
この理由の一つもADASの出来の悪さに落胆したからになります。
試乗時には気がつけなかったのですが、長時間の運用により設計の甘さが見えてきました。
路上での走り込みが明らかに不足しており、開発者の想定外とする条件下で明らかに危険な挙動をしています。
これ、2015年の車両なら致し方なしですが、2023年式とすると失格です。

なお、ランドローバーやVWよりも古いボルボXC90では何も問題なし。
どこかで掘り下げますが、XC90は納車後も何回もADAS部分にパッチが当たっています。
基本的には良い方向に変わっています。
車高などにもパッチが入ることから・・・結果として乗り心地も新車の時よりも改善していま す。
面白いのは、ADASと乗り心地のバランスを常に探しているのが見え隠れすることです。

私の中では、ATの車両の購入の判断に大きな材料がADASになっています。
一般の方は燃費や下取りを気にするのでしょうが、私はADASやミッションの出来を優先して車両を選択します。
なお、非ADAS装着車の場合は全く別の頭で車を選定することになることから、MTのMiniは4台持ちになっています。
ADASは基本的には最新型に正義があります。
でも、非ADASなら衝突安全で一定の数字が出せるなら古い車の方が好ましいですね。
第2世代Miniを既に3台所有していますが、この様な観点からの選択になります。
・ATは、高速主体でADASの質を重視
・MTは、非高速で、車両の味を優先

こんな棲み分けで車を購入しています。

そして、「失われるもの」
あまり語られる事が無いのが、ドライバーの運転の質の低下です。
2024年の国内のドライバーの質が高いとも思っていませんが、確実にこの質はADASにより下がる事になります。
マニュアル操舵?の際には、今以上にドライバーは自動運転時との差が開くことでしょう。
なお、あくまでも運転の質ですので、実際の路上は今以上に理論整然と動きます。
もちろん、乗員に快適で有り、環境にやさしい方向に向かいます。

クルマをつくる側の話

ADASの採用に際してはカメラやセンサーのレイアウトに配慮しなければならないため、車両のデザインに大きな影響がある、ということでしょうね。
引用元 : 「ADASのあるクルマづくりの長所と短所について - webCG」
https://www.webcg.net/articles/-/48130

う~ん・・・
既にADAS装着車が世に出て十分な時間が経っていますが、ADASの採用によりデザインに影響があったかと自身に問うと?
「そんな事あったか???」と感じます。
確かにレーダーの配置の関係からメルセデスはエンブレムを大きくして凸凹が無い方向に動きましたが、これADASが無くてもデザインはコッチに振ったのではと感じます。
BMWなどは、キドニーグリルの関係から車両の中心の柱が上下に通る事になるのですが見事に無視してデザインをしています。
具体的には中距離レーダーのオフセット配置です。
アイサイトなども主役はカメラであったことから、車両側のデザインで大きな制約は発生してませんでした。
ここで言う、「車両のデザインに大きな影響がある」とはどの部分?
もしかして、アイサイトのカメラユニットの大きさを指しているなら・・・少し話が違います。
あのアイサイトのステレオカメラユニットの横幅は明らかに長過ぎです。
これ、カメラのレンジファインダーの仕組みと一緒なのですが、基線長と呼ばれる二台のカメラの間隔は広いほど長距離に対応出来ます。
そして自動車に用いる距離計測計と考えるとアイサイトのユニットは明らかに基線長が長すぎると・・・
これ最初期の頃から感じていましたが、その時点の解釈は新しい自動車のデバイスを必要以上に目立たせる為と理解しました。
いつかは幅を適正な範囲に狭めると呼んでいたのですが・・・ 今のは狭くなったのかな?
なお、最近のトリプルカメラの改修もこの方向。
現在の技術ではステレオカメラのままて、画角を広げつつ解像度を上げれば必要十分な性能が出せたはず。
※クロップですね。
それをせずにトリプルとしたのは、「新型感を演出するため」と感じます。
もしかすると、トリプルの方が導入コストが下げられる可能性があるのですがメンテコストの上昇を考えると・・・どちらが有利なんでしょうか?
最初期からADASに取り組むスバルは応援したいのです。
でも、売るための都合が見え隠れすると・・・少し萎えますね。

もしかすると、LiDAR?
確かにAudiの上級(A6)などは、LiDARを想定してグリルのデザインは崩壊していると感じますが・・・
これも、LiDARの装着準備の為。(場所は確保してもLiDARは非装着)
興味がある場合は、LiDARを検索してみて下さい。
2024年現在では、次世代の自動運転の本命とされているデバイスですが・・・
個人的には、この先10年まではLiDARの時代にならないと考えています。
理由は、LiDARの仕組みを理解してからコスト・信頼性・メンテナンスなどを考えてみて下さい。
どう考えても普及価格帯の車両に大量に採用するには無理があるデバイスです。
仮に、30年後という限定しても・・・
個人的にはどうかな~と思っています。
結局のところは、LiDARは測定光(電波)を自身で発してその反射を取得しています。
そして、赤外線などの均一の照射をステレオカメラで取得しても解像度的には問題とはならない。
確かにリアルタイムの3Dマップ上を走るならメリットはある。
でも、メリットよりもデメリットが将来的も勝ると感じています。
注意して欲しいのは、LiDARがダメと言っているのでは無いのです。
然るべき場所に投入するとリアルタイム3Dマッピングは威力を示します。
人と同じ場所と速度で用いるロボットですね。
宅配ロボットや掃除ロボットが該当します。

なお、バンパーの交換などよりも、フロントガラスの交換が危険ですね。
バンパーに装着されるのはレーダー類。
これ、ある程度装着角度がずれても機能します。
取得したいのは障害物の方向では無く距離です。
方向はカメラやLiDARで取得することになります。
ADASを語るには各デバイスの機能から後処理。
そして、出力側の対応など総合的な知識を問われることになります。

1/18 HONDA CR-X

なお、「車両のデザインに大きな影響」という観点では、ADASよりも歩行者保護が大きかったと感じています。
具体的にはボンネット高の上昇ですね。
デザインの失敗例としては、ホンダ CR-Zです。
衝突時のクリアランス確保の観点からバルクヘッドが必要以上に高くなっています。
結果として、CR-Xの様なスッキリとしたデザインにならなかったことから・・・
なお、同時期に発売されている86はそんなことが無い。
これ、水平対向のFRを選択した最大の理由と睨んでいます。
この件もどこかで掘り下げましょう。

コラム:ADASとスタビライザー
ハイエース スタビライザー

コラムではスタビライザーを取り上げます。
ここではスタビライザーの効能は理解しているものとして話を進めます。
必要な場合は知識の補完をお願いします。

ADASのページでなぜ、足回りのこと。それもピンポイントでスタビライザーを取り上げるか?
それは、ADASのセッティングにもっとも大きな影響を与える既存ハードウェアである事からです。
一般の方は、スタビライザーはコーナー旋回時のロール量を規制する物と理解していると思います。
もちろん、その通りなのですがADASの設計者からみると、「初期の応答性が上がり、自動操舵時にオーバーシュートしにくい」
この特性に注目します。
初期の応答性は、車両側の設計(セッティング)により大きな差があります。
スポーツカーは一般には少なめ。
乗り心地重視の大型車は遅めというのが基本です。
そして、スタビライザーを強めに働かせると、反応は機敏になっていきます。
ここまではイメージ出来ると思います。

もっとも影響が大きい部分をスタビライザーとしていますが、以下も応答時間にかかわってくる部分です。
・タイヤの扁平率
・ブッシュ類のたわみ
・フレームの捩れ
・走行速度
・人員と積載物の量と位置
・路面の傾斜
・外気温
・各部材の温度上昇

早い話が複雑なんです。
全ての条件が関わり合って最終的なバネとしての特性がどうなるのかが問題。

ADASはセンサーで取得し演算した結果を元に車両にハンドル操作を指示します。
この際に、反応速度に大きな変化があると、操作量が不足したり、過剰になったりします。
そして、この外した分に修正舵を入れると、結果として落ち着かなくなる。
もちろん、2024年現在は直進中に明確にフラフラを感じる制御は無い事でしょう。
これは、実走結果を元に制御をチューニングする際に、穏やかな方向にしたてている為です。
でも、必要以上にに穏やかだと制御出来ない。
つまり、曲がる事をやめてしまう制御になってしまいます。
エンジニアは、ここで制御限界を上げつつ穏やかになる設定を探す事になります。
この際には、単純な一つのパラメーターだけでは無く、強弱を有する複数のパラメーターを用いたり、影響が大きな車両側の都合を逃がすような制御も想定します。
もちろん、ハードウェア(制御用のPC)にも限界がありますので、その範囲となります。
そして、ハードウェアの改修の際には、現場の開発者から多くの要望の入る部分から補強を行っていくのが基本的な流れです。
でも、色々なところに隠れた特許があったり、利権があったりと・・・大変な現場であろうとは予測出来ます。

私の本業である無人航空機の自律制御の世界では、この10年で大きな制御用ハードウェアの進化はありませんでした。
これは上記した現場の開発者の声が出てこないからになります。
これ、不満が無いわけでは無く、何が悪いのかすら現場の開発者がイメージ出来ていないからになります。
航空機は自動車と比較すると機動が複雑になります。
制御と言う部分では自動車よりも遙かに高度な物が要求されるのですが、現場のエンジニアがそれを扱えるレベルに達していないことに起因しています。
事実として、とあるメーカーのメジャーなドローン(マルチコプター)は、モデルチェンジの度に制御を緩くして墜落事故を防いでいます。

本題に戻ります。
スタビライザーを含む車両を締め上げろとADASの開発者は車両開発部隊に要望を出します。
これ、そこを聞かないと車が立ち上がらないことから、全社を上げて締め上げる方向に向かいます。
でも、乗り心地が良い車をとユーザーからの要望は入ります。
そこで、その要望の全てを叶える為に・・・
アクティブスタビが必要になります。
この採用は、初期応答性を高めつつ乗り心地を良くするため。
具体的には、柔らかいバネ・サスと強めのアクティブスタビライザーで締め上げる。
これなら、直進や緩やかなコーナーでは今まで以上に優雅な乗り心地。
強めのコーナーでは当然ですが、少ないロール。
そして、ADASのハンドル介入時には、もっとも締め上げで、今まで以上の反応速度で制御。
これで、夢のような乗り心地を叶えつつ、微動だにしないハンドル支援が完成します。
2024年現在で、この領域に入っているのは、BMWとランドローバーの上位機種。
そして、アクティブスタビにも色々な方式があるのですが、ベストと思えるのは両車に採用されている中間のアクチュエーター方式。
恐らく、BMW関係のサプライヤーが知財を有していると思いますが、この基礎特許がそろそろ切れそうです。
10年くらい先の実用車にも、一定水準の車両にはアクティブスタビライザーが入ってくる未来は予想出来ます。
日本人が大好きなミニバン(軽ハイトワゴン)は、どう考えても必須なハードウェアです。
でも、車の走るを司る部分で大幅なコストアップを強いる・・・
私は必要と思いますが、購入層は違う考えなんでしょうね。

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