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EVでもクルマの個性は出せるのか?

「某自動車サイトのQ&Aと同じ質問にブログもどきが答えます」の第十二弾。

今回のネタは、私の専門分野です。

EVでもクルマの個性は出せるのか?

Q:他業種までが市場に参入するEV時代になると、従来のようなエンジン車とは異なり、EVでブランドの個性や特徴を出すことは難しいのでは? ともいわれています。果たして本当でしょうか? EVでもブランドの個性や自動車メーカーの強みを出すことは可能なのでしょうか? 違いはあっても限られますか?
引用元 : 「EVでもクルマの個性は出せるのか? - webCG」
https://www.webcg.net/articles/-/47663

回答例(webCG)
A:結論から言うと、十分可能だと思います。
これまでは“エンジンの味わい”みたいなものがクルマの個性として大事でしたが、EV時代・モーター時代になると、それ以外のこと……つまり、パッケージや乗員の配置といったことがクルマの個性になってくるのです。

引用元 : 「EVでもクルマの個性は出せるのか? - webCG」
https://www.webcg.net/articles/-/47663

以下、私の回答。
A:はい。個性は皆さんが考えている以上に出せますね。
EVは発展途上ですので、モーターの搭載位置すら正解がわかっていません。

webCGでは以下に関しても語られています。
・エンジン以外の個性
・デザインとパッケージング
・インテリアメーカーが提案するコンセプトカー

以下で個別に考えましょう。

小型ドローン用モーター

エンジン以外の個性

いままでは物理的に、車体に対するエンジンルームの占める割合が大きいために、エンジン以外のことではなかなか個性が出せなかったという面が現実にあります。
引用元 : 「EVでもクルマの個性は出せるのか? - webCG」
https://www.webcg.net/articles/-/47663

この文章をそのまま受け取ると・・・
・エンジンには個性があった
・エンジン以外は個性が出せなかった

この様に読み取れますね?
ここ、全く逆のイメージです。
最近のユーザーの多くは、エンジンの味で車を選んでいないと思っています。
過去のモデルでもエンジンに個性を与えようとして失敗した例はいくつかありますね。
手持ちの車両では、ツインエア(2気筒)のFiatが該当します。
そして、これが数少ない「エンジンの味」を購入目的とした車両です。
※その時点で購入出来る唯一のMT Fiatであった

このページまで辿り着く方は、車好きでしょうから一般の方よりも、その傾向は強いのでしょう。

私は・・・
車選びで、エンジンの味は全く重視していません。
プライベートでは、FRボルボを信仰しています。
エンジンは50万kmオーバーホール無しくらいが普通の世界が好きです。

なお、ミッションの味に関しては、MTもATも非常に重視しています。
そして、CTV嫌いです。
一方でエンジンに関しては比較的おおらかです。
特に業務で用いる車両は、「エンジンなど黒子で良い」と考えるタイプです。
過去に購入検討の際でも、ミッションの出来の悪さで落選する車は多数。
でも、エンジンの個性で落選した車はありません。
なお、アイドリングや低速時のハンドルに入る振動で避けた車は多数。
でも、これは個性とは呼びませんよね?

国内の車選びはエンジン以外の事を軸にしていると思って良いでしょう。
・ミニバンの多さ
・SUVの多さ
・軽ハイトワゴンの多さ
・ボディカラーは、白か黒

何を言いたいか・・・
多くの方はリセールを考えて車を選んでいる。
これ明らかにエンジンの味はカウントに入っていません。

なお、モーターもバッテリーも設計により車両の個性は明確に打ち出せます。
EVではバッテリーの搭載位置と容量が車両の運動特性に大きな影響を与えます。
具体的には、低重心で重心は後軸寄りが基本になります。
高級EV(バッテリー搭載量多め)はAWDとなる事も確定です。

モーターは少し複雑ですが、押さえるべきところは3つ。
・変速機を用いること
・多モーター化
・変態(未来的な)モーター

モーターの特性上、一つのモーターで自動車の用いる速度の全てカバーするには無理があります。
速度はカバー出来ますが効率が悪すぎます。
変速機を用いる場合は、美味しい回転数から外さない観点から。
多モーターは、得意とするトルクと回転域を使いこなすため。
さらに2023年現在では実用化されていない未来的なモーターという方向性も残っています。
この様な使い分けとミッション形式やモーター設計の違い。
さらには組み合わされるシャーシにより無限に味は生まれることになります。

この傾向はモーター(磁気)の物理ですので、永遠に変わりません。
コイルも磁石も今の段階でやり尽くした感はあります。
さらに複雑にしてくるのが特許の部分。
ここをメーカーが持つのかサプライヤーが持つのかでも個性の出し方は変わる事でしょう。
モーターその物よりも、ミッション(ESC含む)がらみの方が自動車の個性には影響がありますね。
さらに特許にならないチューニングのテクニックでも乗り味の差は出てきます。
具体的には、停止する直前の挙動とか目標速度に達した後のオーバーシュート具合などが特許では無く差が出る部分です。
本題から外れますが、超電導リニアが最高速に達する際にオーバーシュートしています。
これ、明らかにエネルギーのロスであり、国家プロジェクトがこれで良いのかと感じてしまいます。
このタイミングですので改修されずに営業に入ると思います。
もしもリニアに乗る経験が出たときには、オーバーシュートを思いだしてみて下さい。
※良く出来た自動運転は出来てます

エンジン車のジアコーサ式(FFの基本レイアウト)に該当するEVの定番設計がまとまるには、少し時間を必要とします。
しかし、この時間は決して長いものではありません。
既存車の蓄積があるわけなので、比較的短い間に設計は収斂すると考えています。
短期的にはクラッシャプルゾーンの関係から前輪駆動もあり。
徐々に自動運転が普及して事故率が下がればRRへ。
もしかすると、後輪優先操舵などという2023年現在では考えられていない物が普及する可能性も否定しません。

EV時代でもメーカー(モデル)間の個性は残り、ユーザーの好みで選択されるという世界は今後も続きます。
根拠は、国家プロジェクト(リニア)でもチューニングが正しくされていないから。
人の感覚に頼るチューニングが出来るエンジニアは、皆さんや自動車メーカーの役員が考えるよりも少ない人材なんです。
そして数少ない人間の感覚を数値化できるエンジニアにより自動車の味付けがされるという時代に入ります。

小型ドローン用モーター

デザインとパッケージング

本格的なEV時代になれば、クルマのデザインやパッケージングは根底から大きく変わるはず。ステアリングホイールだって、今のような丸いハンドルである必要はない。
引用元 : 「EVでもクルマの個性は出せるのか? - webCG」
https://www.webcg.net/articles/-/47663

「本格的なEV時代」のみで自動車のデザインとパッケージが大きく変わることはありません。
まず、路上で見かけるEVのデビュー時期を振り返ります。

・日産 リーフ 2010年
・テスラ モデルS 2012年
・BMW i3 2014年

既に10年以上の月日が経っています。
注目すべきは、BMW i3。
デザインもパッケージも材質も尖っていました。
ここで注目して欲しいのが、2023年現在のBMWのEVの基本姿勢。

エンジンとEVの同一プラットフォームの採用。

メジャーなヨーロッパメーカーではEVで先行したBMWが十分な経験を経てから行き着いた答えです。
時間の経過により、普通に戻ったのです。
テスラにしてもモデルS以降で大きなデザイン分野の変革はありません。(ヤツは除外です)
個人的には、「EVだからハンドルが丸くなくてもいい・・・」など論外です。
ユーザーがハンドルを握り路上を走る以上は、使いやすい形は固まっています。
車は進化しても人の進化は進んでいないという理解は、設計者としては常に意識しなくてはならない部分です。
なお、EV化により注目されたのが空力性能です。
ただし、2023年現在ではEVミニバンなども出てきています。
これは電池性能の向上を見越しての先行投資です。
ミニバンにより空力が悪化しても、バッテリーの搭載量で殴るという設計手法ですね。
これ、ドローンの設計をするときに私も多用する手法です。

なお、デザインとパッケージングを握るのは自動運転です。

ここは大事なので、もう一度。
「デザインとパッケージングは自動運転で大きく変化する。EVの変化はコレと比較すると小さい」
引用元で、「本格的なEV時代」としているのは自動運転を示しているのかと読み込んだのですが・・・
書いていないですね。
明確に、EVによりデザインとパッケージングが変わるとしています。

少し揚げ足を取るようで申し訳ないのですが、書き進めます。
自動運転レベル5の車両が路上の99%以上となった時代では自動車のデザインとパッケージは過去に無いレベルで大きく変化します。
・運転の必要が無い
・事故が無い
・他のモビリティーとの連動

この様な時代が30年程度先から始まると考えて、様々な準備をしているのが、私の日常です。
故に、この様な未来予想なら私が専門なんです。

◆運転の必要が無く、事故も考慮する必要が無い
こうなると、自動車に大きな変化が訪れます。
それは、クラッシャブルゾーンと運転席の廃止です。
もう、ハンドルが丸というレベルを一気に超えてしまうのです。
乗員はシートベルトの必要性が無くなり前を向かなくても良くなります。
そこまで時代が進めば加減速のGもエアサスのピッチ制御によりある程度のキャンセルも可能。
なお、この基礎特許は、メルセデスか関連サプライヤーが持っていると推測します。
レベル5の時代までには、この基礎特許も切れることから多くのメーカーでこれが採用されるハズ。

最近経験した試乗車両を一台紹介します。
BMW iXの後席。
このシートですが、「真正面を向かない」というデザインがされていました。
後席を観察すると、視線が真正面から中央寄りに誘導されるように背面や足下が設計されていました。
BMWは、動くリビングの時代を見据えてこの様な実験をしていると受け取りました。
後ろで試乗をしなかったので確定は出来ないのですが、恐らく崩壊はしていません。
ここのさじ加減が出来ないレベルの設計者が踏み込めない世界にBMWのEVは入り始めていました。

◆他のモビリティーとの連動
ここもデザインとパッケージングに大きな変化を起こします。
「それは、既に自動車では無い」というレベルの変化まで想定出来ます。
私は既にいくつかのイメージ(特許案)が出来ているのですが・・・
特許等に絡む部分なので具体的に書くことが今は出来ません。
特許公開後ならば語ることが可能になるので・・・数年間お待ち下さい。
なお、この手の提案はアウディとエアバスにより数年前に示されています。
※それは答えではありませんが参考まで

コラム:航空機の電動化

突然ですが、EV関連として航空機の電動化を解説をしてみます。
自動車と違って航空機の電動化は、デザインとパッケージングは大きな変化として現れています。
具体的には・・・
・自動車のタイヤ4個は不変
・航空機は電動化によりプロペラの数は増える

自動車も航空機も同じ様な時代に生まれています。
航空機は戦争により一気に開発ステージが進み、自動車は民間主導でゆっくりと進化してきました。
自動車は電動化により大きな変化は発生しないと書いたとおりです。
自動車の黎明期は電動も候補とされましたから今更感があります。
でも、航空機は違うのです。
開発が進んだのはレシプロエンジンからジェットエンジンへと進んでいく1910~70年代頃まで。
それ以降は、そこまでの大きな変化はありませんでした。
そして、その時代を経験した尖ったエンジニアは引退しています。
そこに、バッテリーの革新を中心とする電動化がやってきました。
それまでの主力のジェットエンジンと電動モーターは当然ですがあらゆる事が異なります。
過去に研究されている航空機は大出力且つレスポンスが悪いエンジンを想定に設計されています。
これが、小型且つピックアップの良い電動モーターに置き換わるのですから・・・
デザインとパッケージングに革新が起こるのは当然と言えるのです。
そして発明の余地がここにあります。
世界中で、次世代のモビリティーとして電動の航空機が研究されているのですが・・・
数十年後に振り返ると恥ずかしい代物で溢れています。
まず、物理的に飛ばないというコンセプトCGが反乱しています。
そして、フラフラと飛行が出来ても最終的に商品として完成することのないプロジェクトに投資が集まったりします。

小型ドローン用モーター

インテリアメーカーが提案するコンセプトカー

インテリアのメーカーが提案するコンセプトカーにも注目するといいですよ。これまでは「あくまでコンセプト」と思っていたような極めて未来的なものが、ポンと現実になったり。クルマは、まだまだ変わりますよ。
引用元 : 「EVでもクルマの個性は出せるのか? - webCG」
https://www.webcg.net/articles/-/47663

この考え方ですが・・・
個人的には危うい発想と思っています。
自動車開発者的には、外部の新鮮な考えを取り入れたいのでしょうが・・・
この手の企画で成功したと思える事案を私は思いつきません。
その逆の例はいくつかは出せますが・・・
推奨するのは自動車開発者がインテリアの知識を付けること。
これ逆は不可能なんです。
そして、インテリア専門の人たちに任せると、商品になった段階で瑕疵が山盛りになります。
彼らは、自動車の車内温度や振動。衝突安全から量産性も含めて素人なんです。
彼らの発想を量産に落とし込むのはコストばかりが上がって現実的では無いんです。
故に、自動車内装などを理解しているエンジニアが、より深くインテリアを理解する。
これが近道と言えます。

手前味噌ですが、上記の写真は事務所の会議室です。
建物の設計を含む以下を私が行っています。
・建築物の詳細設計(棚の材質や貼り合わせの方法など)
・空調設計(第2種換気=病院と同等)
・電気(建物全体の色温度などまで)
・家具の選定(写り込んでいるのはレザー貼りのセブンチェア)

少し設計に詳しい方が見るとわかるのですが、普通の住宅設計では手が付けられないレベルの設計がされています。
そして、これは移動するリビング(私の場合は航空機)を設計する準備の一つになっています。

なお、本題からは外れますが、国産車の内装設計者はインテリアに関する知識があまりにも薄いと感じています。
これは出来の良い輸入車に触れると心底感じます。
ついでにアプリのUI関係者も同様に指摘します。
国産車ではメーター(速度表示)とセンター(ナビや温度)の設計者(サプライヤー)が違うことが明確にわかります。
少なくとも、開発の過程でお互いのイメージにすり合わせをして下さい。
設計に従事する人間的には非常に落ち着きません。
これ現行型のレヴォークで経験しました。
社用車の候補としたのですが、カタログを見て諦めました。
このチグハグな感じは私はなじめないヤツです。

SONYの参入

既存の自動車メーカーと新たなEVブランド・・・
ここではもう少し踏み込んでHONDAとSONYとして考えます。

まずは、HONDAが有利な点。
・自動車を開発する人材
・自動車を制作する工場
・自動車に関するノウハウ
・ブランド力

次は、SONYが有利な点。
・過去の慣習に囚われない開発
・そのメーカーの本業

SONYが有利なのは、カメラ受光部の技術です。
ミラーレス一眼でSONYのシュアが増えた最大の理由が、その受光部の性能によってです。
他の会社が写らない物を捉える事が可能な技術があります。
仮にこの技術を囲い込んだとすると・・・自動運転の分野で大きな差を生むことが可能になります。
でも・・・実際に自動車の生産に入ると自社では困るはず。
なのでホンダと組むという流れになるのです。
この関係はお互いの苦手のところを見事に補完出来ます。
自動運転まで含めて見事な車が出来るかは・・・
SONYのどのクラスのエンジニアを投入するかに掛かっていると思います。
エースの投入なら・・・
それこそ、歴史が動いてしまうハズ。
影ながら期待しています。

結論:EVでもクルマの個性は出せるのか?

EV(自動運転)は、ガソリン車以上にクルマの個性の差が出てきます。
最終的には、他のモビリティーとの連動まで視野に入って設計がされることになります。
私としては、ガソリン車以上に今後のクルマの方が個性の幅が広がると答えておきます。

仮に質問の意図が、現状のクルマの価値観の範囲とする場合は・・・
それでも、個性は一時的(20年間とか)には今以上に個性の幅は広がります。
電動系デバイスはガソリンと同等に個性が有り、EV化(同時に自動運転化)は、デザインを根本からひっくり返します。
駆動輪も重心位置も比較的自由に出来る。
これは、設計屋に取ってはキャンパスが無限に広がっていることを意味します。

裏の回答:EVでもクルマの個性は出せるのか?

もう一つの回答も書いておきます。

EVでもクルマの個性は出せるのか?(自動運転は触れずに)

これ、2023年のEVを自動運転レベル3以下と想定して回答することになります。
もしかすると、元ネタページの本来の解答かも知れません。

この場合は・・・
EV化により個性は失われると回答します。

理由は、まだまだ非力なバッテリーで商品とする必要があるからになります。
既にご存じかと思いますが、EVはカタログスペックの走行距離は出ません。
特に冬期はこの傾向が著しく出てきます。
原因はエネルギーの重量当りの密度に起因します。
そして、ここを少しでも改善するために空力に手を付ける必要がある。
また、既存の車両と同様にパッシブセーフティーも必要。
これにより、デザイン(ボディー形状)は似通ってしまうことなります。

某自動車サイトのQ&Aと同じ質問に答えてみる

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