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自動車メーカーとパーツサプライヤーの関係について

「某自動車サイトのQ&Aと同じ質問にブログもどきが答えます」の第十六弾。

今回のネタは自動車産業に従事しないと的確なコメントが出せない内容でした。
でも、メーカーとサプライヤーという関係性はドローンの世界でも当てはまる事から、少しは参考になるコメントが出せるかも・・・

自動車メーカーとパーツサプライヤーの関係について

Q:カテゴリーによっても異なるとは思うのですが、例えばトランスミッションを開発する場合、メーカーが仕様や目標となる性能を決めてゼロに近いところからサプライヤーに製作を依頼するのですか? それとも、サプライヤーがある程度自主開発したものからメーカーが車種にあったアイテムを見つけ、さらに採用車種に合わせて仕様変更して搭載するのでしょうか?
引用元 : 「自動車メーカーとパーツサプライヤーの関係について - webCG」
https://www.webcg.net/articles/-/48162

回答例(webCG)
A:自動車メーカーとサプライヤーの関係は時代とともに変わっていますし、開発ポリシーもメーカーによって異なります。 そのため今回は「さまざまなパターンがある」という前提でお話しします。
引用元 : 「自動車メーカーとパーツサプライヤーの関係について - webCG」
https://www.webcg.net/articles/-/48162

以下、私の回答。
A:まあ、案件毎に異なりますよね。

自動車メーカーとパーツサプライヤーの関係について

質問者はミッション開発に関して、「ゼロに近いところからサプライヤーに製作を依頼するのですか?」と問いています。
この「ゼロから」の部分をどのように解釈するかによって自ずと回答は変われハズです。
例えば・・・
・DSGを新規開発
・6速を7速化

前者ならコストと時間は莫大に必要。
後者なら少なめ。
このくらいは自動車業界にいなくても想定出来ます。
こういうところも含めて、多田さんは「さまざまなパターンがある」と回答しているのでしょうね。

お題目であるミッションで大規模な完全新規案件は、DSG(DCT)以外に該当する物はありません。
これ、過去に3台を購入しています。
1台目(湿式) アウディA3 2.0 TFSI
2台目(湿式) VW Golf7 ALLTRACK
3台目(乾式+ハイブリッド) VW Golf8 Variant

1台目の購入は、'06年ですので一般にDSGが知れ渡る前の時代です。
もちろん、DSGのネガティブな情報は無く、最新のミッションを経験したいという思惑からの購入でした。
その結果、耐久性に不安を感じて早期に手放してしまっています。
なお、購入の段階では乾式DSGはありませんでした。

2台目の購入は、'17年。
その段階では、DSGは壊れやすいという常識は出来上がっていた時代です。
社員からゴルフの指名買いであったことから、それでは乾式よりも壊れにくいであろう湿式を狙って購入しています。
カタログ燃費は乾式と比較すると劣りますが大物が壊れるよりは遙かにマシです。
なお、購入時に、「長期に所有しません」と断ってから購入しています。

3台目は、'23年に、乾式DSGの電動サポートの耐久性を確かめるためにGolf8を購入しています。
素の乾式DSGは完全に除外していました。あの耐久性の無い乾式DSGが改善されたかの確認が購入の主目的です。

なお、DSG搭載のA3が発売された当時のAudiはミッション祭りをしていました。
・ステップ=トルコンAT(A3やA4)
・DSG(TTとA3)
・CVT(FFのA6)
・MT(RS4)
その後DSGに舵を切るのですが、色々なミッションを模索していたのがこの様な点からも見え隠れします。
結局のところ、サプライヤーからのおすすめでも自社の商品に積んでみないと最終的な判断はしていないと言うことでしょうね。
その際にも、売れ行きが細いところから試していきます。
特に、A6のFF車に搭載されていたCVTは異色でした。
なお、DSGは初代TTの3.2Lから搭載していきます。
本当は、これを入れたかったのですが、流石に1.8L想定にエンジンが大きすぎると感じてパスしています。
なぜ、ここでDSGを取り上げたかというと、このミッションは構造的に機械的な消耗を避ける事が出来ない構造になっています。
量産車に搭載されて20年程度の時間が経過していますが、未だに改良は続いているという状態です。
この様な改良も、「開発」に入る事から取り上げました。
昨今のDSG+電動サポートの部分はサプライヤーからの提案であったことは予想出来ます。
また、当初から乾式と湿式の両建てであったことはメーカーからの要望だろうと推測出来ます。
※北米向け
結局は素人が外部から推測してるので答えに行き着くことは無いのですが、実情と出来上がった商品の雰囲気から・・・このくらいは感じ取れますね。

なお、引用はしませんが、あるライターさんが、VWの保証が国内は諸外国と比較すると短い事をDSGと絡めてぼやいていました。
これ、この方の認識不足です。(主として商売の都合)
国内は、当然ですが渋滞が多め。
平均的なドライバーを想定すれば国内の保証を短くするのは当然と言えます。
※DSGは停止の回数と比例して消耗する。

なお、私は当初から都市部でDSG搭載車を購入することをおすすめしていません。

コラム:ドローン開発とサプライヤー

ここでは、開発現場の例としてドローン業界とサプライヤーの関係について記してみます。
ご存じの方も多いかと思いますが自動車メーカーやサプライヤーも多様化の一つとして飛行体の開発を行っています。
有名どころでは、デンソーが橋梁点検用のドローンを開発していました。
そして、撤退しています。
少し専門的になるのですが技術的な話をしてみます。

まず、橋梁検査という現場では一般の環境よりも風に対する性能が求められます。
絶対的な風の強さよりも、頻繁に向きがかわる風でも安定して飛行することが求められます。
自動車で例えるとオーバーハングを切り詰めてマスの集中。エンジンはフラットトルクでAWD。
こんな感じになります。
これ、完全にラリーカーですね。

なお、ドローンは3次元機動が可能。
そして、風も3次元で考慮する必要がある。
デンソーは、特に上昇気流に着目された構造でした。

1/18 HONDA CR-X

デンソーは、ここで一般的なドローンとは異なる機構にて解決しようと挑みます。
それが可変ピッチクアッドコプターでした。
※画像はラジコンヘリコプターの可変ピッチ機構です。

普通のドローンは、モーターとプロペラが直結されていてプロペラピッチは固定になっています。
この場合は、推力のコントロールはモーターの回転数の変化で生み出します。
デンソーのドローンは、プロペラビッチが可変とされていたことから、通常のドローン以上の反応速度で推力の変化が可能でした。
そして、固定ピッチよりも広い範囲の推力変化が可能でした。
これも自動車に例えると、4ATの時代に7ATを持っていた様な物です。
正し、自動車にも言える事なのですが、ミッションの出来の良さのみで勝ち残ることは出来ません。
立場的に特定の企業に対していつも通りのコメントを残すわけにはいかないので控えますが・・・
「ミッションのみでは戦えません」
このミッション以外の武器が少なかったのでは?と感じました。
デンソーですので自社の技術で十分な独自性は出せたはずなのに・・・

私も橋梁検査想定で様々な特許出願をしていますが、代表的なところでは・・・
・検査デバイスと機体の距離を離せる機構
・擁壁に接触時に狙った角度に機体を傾けるプロペラガード
・地上電源供給機体の最適化
・複数機体連動
・非GPS環境下の自己位置推定

機構の多くは完全新規であることからある程度開発コストと時間を必要とする。
実は、この新しい機構の開発の為に、サプライヤーさんと連携する場合もあるのです。
そして、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)と繋がる場合もあります。
私が絡むとどうしても完全新規の部品を必要することが多く、特にこの傾向になります。
でも・・・普通のドローン関係の会社はアイデアがありませんので、既存のパーツを組み合わせて形を作る。
ある意味で、デンソーのドローンも二次・三次サプライヤーからの通常品を組み合わせただけと言えます。
でも、ドローンは聡明期ですので、本当は新規開発の部品を大量に必要とする段階なんです。
そして、この必要性を語っても理解されることは少ない。
よく、ドローンが普及しない理由として規制緩和にあると指摘される方がいます。
これ、大きな間違いです。

ドローンの性能が向上しない理由は以下の通り。
・ドローン開発者が思いつかない
・革新的な発明がされても周囲が理解出来ない

今でこそ、ドローンの重心位置は自動車以上に重要であるという気が付きは広がりつつあります。
でも10年くらい前までは、回転翼を用いるという点のみで下重心が良いと普通に語られていました。
私の発明により受賞している、CEATEC JAPAN 2018「CEATEC AWARD 2018」経済産業大臣賞は、この重心に関する特許を用いています。

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