「某自動車サイトのQ&Aと同じ質問にブログもどきが答えます」の第十一弾。
			ここからはwebCGに公開された順にて追いかけていきます。
			今回は、復活一段目のお題目から。
		
			
			Q:ディーゼルエンジンは豊かなトルクが持ち味とされていますが、これを生かしたスポーツカーが見当たらないのはなぜでしょうか? 低回転域から最大トルクを発生する、ガソリンターボのスポーツカーは多いように思いますが……?
			引用元 : 「ディーゼルのスポーツカーが出てこないのはどうしてか? - webCG」
			https://www.webcg.net/articles/-/47477
			
			回答例(webCG)
			
			A:ユーザーの意識や社会的な枠組みの変化次第では、「ディーゼルのスポーツカー」が出てくる可能性は十分あるといえます。技術のうえで、それをつくることに問題はないのです。
			引用元 : 「ディーゼルのスポーツカーが出てこないのはどうしてか? - webCG」
			https://www.webcg.net/articles/-/47477
			
			以下、私の回答。
			
			A:世界的に考えてもディーゼルのスポーツカー出現の可能性は極めて低い。
			その理由に関しては以下で詳しく・・・
			
			webCGでは以下に関しても語られています。
			・ルマン24時間
			・スポーツカーのイメージ
			・トヨタ86
			
以下で個別に考えましょう。
 
			
			
			ルマン24時間レースの歴史を見ても、ディーゼルエンジンを搭載したプジョーやアウディのマシンが優勝した例があるように、“速さ”という観点では、ディーゼル車は“あり”ですよ。「ディーゼルの速いスポーツカー」はつくれます。
			引用元 : 「ディーゼルのスポーツカーが出てこないのはどうしてか? - webCG」
			https://www.webcg.net/articles/-/47477
			
			私のコメントに入る前に・・・
			仕事としてルマン24時間に出走している車両は研究対象としています。
			主な研究対象は抗力の低減。
			つまり、最高速を伸ばす空力です。
			なお、画像はルマン24時間でAudiが勝っていた頃の1/18の模型です。
			当時のライバルであったBMWとAudiの年式毎の違いを観察するのが仕事です。
			
			ルマンで勝てる車の基本は伝統的に、一に信頼性、二に空力と考えています。
			さらに政治力も考慮する必要があります。
			
			レースですので当然ながらレギュレーションが存在します。
			ここがディーゼル寄りになっていた時代があります。
			決して、ガソリン車よりもディーゼル車が根本的に優れていたから勝てたでは無いのです。
			その時代は日本ではディーゼルが悪者とされていたタイミングでした。
			その後、国内もディーゼルを後追いすることになるのですが、これも政治絡みです。
			ディーゼルを正しく理解するには原油や住宅の暖房の仕組みまで理解する必要があるのです。
			まず、ガソリンも軽油(灯油)も原油から精製される以上は、一定量が必ず存在することになります。
			どちらか一方しか消費しないという構造は許されません。
			そこで油税などを調整して重要の平均化を測る事になります。
		
 
			
			ルマンは他のレースカテゴリよりはマシですが、技術屋的な観点からは意味が無いが、経営者の観点からは必要なレギュレーションの修正が入ります。
			近年では、空力向上の強制的な規制です。
			目的は、どこのメーカーも似たような車両デザインとなっていた事を打ち崩すため。
			2010年代のルマンの車両を見て欲しいのですが、どこのメーカーも似通っています。
			※写真は2016年頃のトヨタとポルシェ
			
			これは決められた車両サイズの中で空力を詰めていくと行き着く先が同じだからと言えます。
			結果として差別化が困難になりレースでの勝利が販売に繋がりにくくなりました。
			これを打破するための、敢えての空力悪化の採用です。
			空力を上げすぎてはいけないのですから、結果としてデザインの余裕が生まれます。
			極端なところでは、プジョー9X8のウイングレス。
			2023年優勝のフェラーリ499Pも、2010年代の車両とデザインは全く異なります。
			空力屋的には、この二台は間違った車両です。
			でも、車を販売するという観点からはとても優れた車。
			
			無理矢理、本題に着地していきます。
			ルマン(早いスポーツカー?)とディーゼルは直接的な関係は無し。
			「早いスポーツカー」を作るのは・・・レギュレーションをさわれば何でも成立する。
		
			
			でも、どうしてメジャーにならないのか? ひとつの大きな要因は、「スポーツカー好きの、スポーツカーに対するイメージ」だと思います。
			引用元 : 「ディーゼルのスポーツカーが出てこないのはどうしてか? - webCG」
			https://www.webcg.net/articles/-/47477
			
			まず、つっこみたいのが、「どうしてメジャーにならないのか?」の部分。
			この書き方の場合は、少なくとも過去にディーゼルスポーツカーが存在していなければなりません。
			でも、私はディーゼルでスポーツカーと呼んで良い物が思い当たりません。
			人により意見は違うと思いますが、スポーツカーの最低要綱は以下と思っています。
			
			
			・2ドア
			・前面投影面積少
			
			
			走る・止まる・曲がるが正しく出来る事。
			これがスポーツカーの成立する最低の条件とすることに異論を挟む方は少ないと思います。
			判定に困るのが、BMW X6Mの様な車両です。
			もちろん、X6Mは、走る・止まる・曲がるが高いレベルで実現されています。
			とても優れた車である事は認めつつも、イメージの中のスポーツーカーとは一致しない。
			具体的にはクーペでは無い事。
			このクーペである事に重要な意味があります。
			まずは、ニュルブルクリンクのラップタイム(市販車)を調べて見て下さい。
			リストの上位は、2ドアで非SUVですね。
			そしてATですね。
			走る・止まる・曲がるは物理です。
			リアドアの存在は、剛性を下げて重量が増えます。
			これはラップタイムを削るには一向に貢献しません。
			現在の車両設計では「重量増=悪」という図式が必ずしも正しくありません。
			ただし、重量は無駄なドアではなくフレーム補強に用いるべきという考えで多くのスポーツカーは設計されています。
		
 
			
			個人的にはスポーツカーをタイムのみで語ることは意味が無いと思っています。
			路上で日常的に付き合える等身大のスポーツカーを好みます。
			
			そこで、日常使いのスポーツカーと考えると、MTが重要になってきます。
			日常ですので、絶対的なタイム削減よりも感覚を重視してのMT。
			そして、MTによるスポーツ走行とディーゼルは相性が悪い。
			ディーゼルは、その燃焼速度の関係から高回転には向かない。
			さらに、長年積み重なってきたシフトのタイミングなどがディーゼルとガソリンでは大きく異なります。
			2020年代に、わざわざ、MTスポーツカーを購入するとします。
			完全な贅沢品であることから、燃費や車両価格もある程度は不当。
			そこまでして購入する趣向品であるスポーツかーでは、シフトフィーリングが合わないディーゼルでは商品が成立しないのです。
			
ブログもどきでは、ディーゼルのスポーツカーが成立しないのは、「MTとの相性が悪いから」答えとします。
			
			実は、私が「トヨタ86」を開発した際には、真剣にディーゼルエンジンの搭載を検討していたのです。
			引用元 : 「ディーゼルのスポーツカーが出てこないのはどうしてか? - webCG」
			https://www.webcg.net/articles/-/47477
			
			トヨタ86(ZN6型 2012年 - 2021年)のデビュー時は、ディーゼル最盛期です。
			水平対向にディーゼルの用意はありましたので物理的には可能でした。
			最盛期と考えると販売サイドから要望が上がってくるのは当然です。
			ここで注意が必要なのが、クーペに乗る層が、すべてスポーツ走行を求めているのでは無いのです。
			高い速度域で長距離を走ると経験しますが、空力の悪さは何も得るものがありません。
			日本人にはイメージしにくいところですが、クーペでディーゼルのビジネスエクスプレスの需要はあるのです。
		
 
			
			数年前までは、BMW 8シリーズに840dの設定がありました。
			これ、4ドアクーペでは無く、2ドアクーペです。
			どんな人が買うんだ!とツッコミが入るのかも知れませんが・・・
			
			これ、私が検討しました。
			現在は無くなってしまいましたが業務形態がこれを必要とするならば、今からでも購入する可能性があります。
			
			20年くらい前には、初代TTをこの用途に使っていた時期がありました。
			人員は1~2名で長距離移動。
			機材はそこまで多くなく、悪路に入る必要は無い。
			そして、然るべき立場がある。
			スポーツカーでは無く、足の長い見栄えのするクーペが仕事で必要という層もあるのです。
			※私は、eVTOLなども含む航空機のR&Dを業務とする会社の代表
			
			販売サイドからの初代86のディーゼルの要望は、スポーツカー用途からでは無いのです。
			過去の私の様に、仕事で用いる足の長いクーペという需要からになります。
			※私が30代なら、候補になります。
			
「トヨタ86」にてディーゼルが検討されたのは、スポーツカーとしてでは無く、特定用途のビジネスエクスプレスとしてです。
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