バルーン空撮[技術解説] - 特許出願までの道程

空撮の歴史を創ることができる、空撮バルーンが開発出来ました

垂直に上がる車載式バルーン

株式会社 0 では、バルーンに関する特許申請を2009年3月に行いました。
ラジコンヘリコプターによる、空撮コンテンツ開発から6年。
バルーンによる空撮機材の開発から2年。
ついに、ここまで到達することができました。

←2008年12月28日撮影
車載式バルーンとしては、完璧と呼べるまでの性能に達しました。
他の会社が「撮影できない」という条件で、この飛行姿勢です。
吹き流し バルーン繋留角度解説
このページにて詳しく解説されています。

2006年12月 : 本当は産業用ヘリコプターを採用する予定でした

CubicVR撮影用ラジコンヘリコプター

バルーン空撮の参入前は、ラジコンのヘリコプターにて空撮コンテンツの開発を行ってきました。
画質の向上の為に、ラジコンとしては採用の少ないロータリーエンジンを採用。
その排煙をコントロールするために、自社で燃料の配合を行っていたという経緯があります。

なお、ロータリーエンジンの研究は、高画質化の検討の延長線上。
電動ヘリコプターが一般的になった現在ではメリットが少ないエンジンです。
※この当時から、徹底的に社内で開発をするという土壌はありました。

ラジコンヘリコプターで空撮業務を行うと痛感する事があります。
墜落事故による様々なダメージです。

・人的、物的な損出
・仕事を発注したクライアント
・事故を起こした弊社
・事故を起こさなかった、同業他社

空撮の事故は、全国ニュースになりかねません。
農薬散布のラジコンヘリが墜落した程度なら・・・(これは、相当数発生してます)大きな問題になりません。
航空写真ナビの撮影など、都市部を当初から想定したことから墜落事故の可能性は徹底的に排除する必要がありました。

最初に行ったのが、産業用ヘリコプターメーカーへの問い合わせです。
GPS内蔵(自動運転が可能)で、ペイロード数十キロ(弊社の撮影機材は5kg程度)にて、価格は1500万円程度。
減価償却にメンテナンス費用を考慮して計算すると・・・

1フライトで5万円のフライト原価が必要という計算が行えました。

サーボ この価格(機体が1500万円)は、大きな障害にはならないと考えていました。
空撮事故に最大の配慮をするなら当然の金額と思えたからです。

機体を導入する方向で、技術的な話をメーカーと進めたところ・・・
予想外の設計の甘さが露呈しました。
機械的な信頼に関しては、1500万円の産業用ラジコンヘリコプターは、30万円程度のホビー用ラジコンヘリコプターそれほど変わらないという衝撃的な事実です。
具体的には、「主要部の二重化がされていない」という点で指摘できます。
←赤い矢印がサーボと呼ばれる、ヘリコプターの姿勢を制御している部分です。(ホビー用)
通常のラジコンヘリコプターでは、メインローターの制御に3個のサーボが用いられます。
この一つにでも障害があった場合は、墜落の可能性は極めて高くなります。(即時墜落という事もあります)
この様に重要な部品なのですが、ホビー用のラジコンヘリコプターは、「価格的な問題」と「余剰浮力が少ない」ことから二重化がされていません。
二重化とは、同じ機能を有するパーツを2セット用い、トラブル発生時にも性能を確保するという考えです。
例えば・・・エンジンを二つ搭載する。一台のエンジンが止まっても50%の出力を確保する。などとなります。

高価な産業用ヘリコプターは、十分な予算も余剰浮力も確保されています。
当然、主要なサーボや受信機などは二重化。場合によっては、GPSユニットなどもと考えたのですが・・・全て一重でした。
エンジン冷却などは、空撮という用途用に強化されています。(上空でエンジンが止まりにくくするため)
しかし、制御部分に信頼性に関しては大きな疑問となりました。
そこで、メーカーに以下の問い合わせをしました。

0[Zero]:「もしかすると・・・サーボに何かあったら墜落ですか?」

メーカー:「その通りです・・・」

この時点で、産業用ヘリコプター採用の可能性は消えました。
ラジコンのトラブルの定番と呼べる制御部分に関しての信頼性は、価格から考えると低すぎると考えました。
なお、ホビー用でも100万円程度の飛行機などになると、制御部分は二重化されてきます。
0[Zero]では、飛行機による空撮も考えていますが主要制御部分は二重化が当然と考えます。

2007年2~5月 : バルーン空撮で世界を目指す

最初期のバルーン

産業用ラジコンヘリコプターは、安全性に疑問がでてきたことから中止となりました。
安全性を最優先し、次の候補はバルーン空撮となりました。
早速、国内のバルーン製造会社(多くは、アドバルーンなどの製造会社)に問い合わせを開始。
問い合わせの際には、以下の具体的な質問を行っています。

・2.5kgのペイロードをクリアするための最小サイズ
・バルーンの耐久性(定期交換の期間)
・風速3m/s時の繋留角度

シンプルな質問です。
空撮に携わっているならば、即答できて当然な内容です。
この質問に対して、質問の一つでも納得できる返答が出来た、バルーン製造メーカーは一社もありませんでした。

値段は、立派でした。(値段の話しかしないところも・・・)
しかし・・・ 性能の保証も出来ないよな代物に支払う金額としては納得できる金額ではありませんでした。

この段階で、バルーンの納入先を海外に求めることになりました。
ラジコン機器やカメラは、日本は最先端ですが、空撮用のバルーンに関しては後進国であることがわかりました。
空撮の需要が高い国々の方が、バルーンが進んでいるのではと思ったのです。

結論から述べると・・・
「その通り」でした。
海外のバルーンは、目安となるペイロード・対風性能・使用ヘリウムガス量が明確にWebサイトに記載されていました。
(海外の事ですので、結構アバウトですが・・・)
価格についても、十分納得出来る金額でした。
仕上がり(見た目)は、国内製造品が良いでしょうが、実務性能は海外製バルーンが数段上回るな・・・というのがその時の印象です。

これを購入してしまえば、話は早いのですが・・・
「ポチッ」と出来なかったのです。
理論だった研究の末に行き着いている形に見えなかったのです。
もちろん、現場で鍛え上げられた道具感はあります。
しかし、洗練されていないのです。
最新の素材に、ラジコンヘリコプターによる空撮CubicVRの開発によって得ることが出来たノウハウを投ずれば・・・

空撮用のバルーンなら、世界のトップを狙えるぞ・・・

元々は、産業用ヘリコプターの導入を考えていたのです。
この予算と今までのノウハウをバルーン開発に投ずれば、バルーンのダウンサイズを図りつつ国内のどのバルーンよりも高性能とする目処は、開発当初から立てられました。
目標は、4t車程度の専用車両にての移動を確保しつつ、実務で想定される範囲の風で、国内トップクラスの性能を有すこと。
これは、ある素材を採用することにより、容易に実現出来ると卓上では計算出来ました。
その素材とは・・・

エバールです。

このページにて詳しく解説しています。
従来のバルーン素材である塩ビから、エバールに材料を置き換えることにより機体重量を大幅に削減。
結果として、バルーンサイズのダウンが可能に=前面投射面積が低減。
ますます、ダウンサイズが可能に・・・との目論見です。

最初期のバルーン そこで、最初に購入したのがエバール製の国産バルーンです。
ダウンサイジングの最大のポイントは軽量化。
その鍵を握るのは、もっとも軽量化効果の高いバルーン素材の置換と睨みました。
耐風性能の低いことを承知して購入したのが、このバルーンです。

この機体からスタートし特許の出願までは、外注にて5機。
社内にて、それ以上の数の試作バルーンを創ることになりました。(この部分も、特許出願が完了したことから公開することが可能になりました)

他社から購入した最初のバルーンが飛んだ日を今でも覚えています。
わずか2m/sの風(そよ風以下)で、繋留角度は45度を下回りました。(特許申請済の最新世代なら、80度以上)
「バルーンは、ここまで風に弱いのか・・・」
社員の多くが、その初フライトに参加しましたが、「こんなのが仕事になるのか・・・」と思ったことでしょう。

2007年6~2007年10月 : バルーン開発開始。ポイントは時速18km/hの空力

板翼の電動飛行機

2009年現在は、ラジコンヘリコプターによる空撮は、リチウムポリマー電池による電動機に変わりつつあります。
2004年頃に、このリチウムポリマー電池の研究を兼ねて、発泡材による小型電動飛行機の研究を行っていました。
この電動飛行機の研究は、幾つかの発見がありました。

・時速18km/hでは、空気抵抗は無視できる
・板翼でも、十分な浮力が確保出来る
・軽量化は、破壊強度を見極めてから安全率を加える

この一つでも欠けると、車載式の風に強いバルーンは生まれませんでした。
特に需要なのが、「時速18km/hでは、空気抵抗は無視できる」です。
これは、日本製のバルーンに多く見られる根本的な設計ミスです。
風に流されることを嫌うあまりに、実機の飛行船の形を模しています。
もっと極端なのは、ミサイルの形状に近いような物まで存在します。

人が乗れる飛行船風速27.8m/s=時速100km/h

弾道ミサイル風速7000m/s=時速2520km/h

特許申請済バルーン風速5m/s=時速18km/h

空気抵抗は、風(速度)の二乗に比例します。
空気抵抗が重要なスポーツ(自転車競技)などを体験するとわかるのですが、時速40km/h以下程度の速度では、それほど空力は重要ではありません。
ましてや、空撮バルーンで該当する、時速20km/h以下の速度では・・・飛行船やミサイルの形は不要なのです。
ここに気が付いていないと・・・永遠に風に強いバルーンは生まれません。

空力については、海外の軍用スペックバルーンを見ると勉強になります。
北極圏にて風速30m/s(台風と同等)に対応・・・などという化け物みたいなスペックでも、形状は非飛行船型です。
実際の飛行機が身近にあることから、空力に関しての考えた方は日本人よりも進んでいます。

唯一の飛行船型の試作バルーン

飛行船型も試作

試作機の中には、このような細長い機体も含まれていました。
この機体は、海辺などの一定方向からの風しか吹かないという条件ならば、それなりの性能を示します。
しかし、都市部など、風向が変わる条件では、極端に風に弱い事も判明しました。(画像は、河川敷の現場にて)
この様な形状の試作は1回しか行いませんでした。
これは「飛行船型は飛びが悪い」ことが確認できたため、その後の流線型の機体の開発を止めてしまったためです。

時速18km/hでは、流線型にするよりも風に正対することの方が遙かに重要です。

2007年11~2008年3月 : 風を浮力に変換するコンセプトの具体化

垂直に上がる車載式バルーン

この時期は、様々な理論を形にしていた時期でした。
大きなテーマとしては、「風をどのようにして浮力に変換するか」と「上下を含む風への対応」です。

そのタイミングで、興味深い海外製のバルーンに触れる機会がありました。(他の空撮会社から、スポットでの貸し出しを受けました)
←写真は、その当時の0[Zero]のバルーン

◆海外製・高性能バルーン
その性能は衝撃的でした。
2009年3月現在の0[Zero]のバルーンでも、風速10m/s以上の信頼性という項目ではかないません。
(それ以外は、0[Zero]の方が優れますが・・・)
国産バルーンでは比較対象のない衝撃的なバルーンでした。
風に対する信頼性は、何も言うことはありません。
敢えて欠点を考えると・・・

・繋留角度が、ほどほど
・風速1m/s以下の風では、バルーンが揺れる
・強い風では、3名でも運用に不安がある

このバルーンの飛行姿勢を目にしたのは大きな収穫でした。
0[Zero]では、この時の経験を生かしテスト機を一台制作しました。
この時に採用されたコンセプトが、特許の申請項の重要なポイントとなりました。

ここから、0[Zero]のエバール製バルーンは、飛躍的な対風性能を身につける事になりました。
このコンセプトが形になった、2008年3月から、このページを書いている2009年3月まで、風による空撮業務のキャンセルは1例もありません。
中には、最大風速10m/sを超えるような案件も含まれます。
さらに重要なのは、0[Zero]の空撮の回数です。
パノラマ空撮ギャラリーなどで紹介されているのは、ほとんどは業務外の空撮です。
例えば、蔵王のパノラマ撮影は、仙台と山形にての空撮業務の終了後に行われています。
(業務で撮影された画像は非公開)
これ以外にも、無数の業務での撮影実績があります。
お客様から公開許可を頂けていない案件はご紹介できないので、パノラマ空撮ギャラリーでの公開は一部なのです。

このページを書いているのは、2009年3月17日です。
直近の一週間の空撮業務は・・・(業務以外のテストは除いています)

  • 3/12 愛知 雨天での不動産物件撮影
  • 3/13 山梨 風速4m/sにて、土木撮影。直近に送電線あり
  • 3/15 東京 風速4m/sビル風にて、マンション景観撮影
  • 3/16 山梨 6時間連続撮影。撮影カット数700

このペースと困難な条件にも関わらず、完成率100%を誇っています。
既製バルーンを使っている頃は、慎重に撮影タイミングを図っても完成率は60%前後でした。

2008年4~2008年12月 : 車載化により、開発速度がスピードアップ

車載式バルーン

エバール製バルーンの実用性能が確立できたことから、バルーン空撮専用車両を導入し、機動面の強化を進めることになりました。
予定通り、現場到着から撮影まで10分という、ラジコンヘリコプターに準ずる機動性を発揮する空撮がバルーンで可能になりました。
この車載化は、バルーン開発においても大きな出来事でした。
ヘリウムガスを廃棄しないことから、いつでも気軽にテストが行えるというメリットです。

今までは、1時間の時間を掛けてテストの準備。
テスト終了後は、30分程度でヘリウムガスを廃棄して撤収。
これらが、ヘリウムガスを消費せずに、準備から撤収まで30分で完了します。
テストのコストと時間が圧倒的に少なくなったのです。
これにより・・・1日に3回のテスト(制作を含む)も可能になりました。
夜景撮影機材の開発などがハイピッチで進んだのは、車載式バルーンの採用が陰にありました。

また、夜景撮影の開発は、予想外のバルーン性能向上のきっかけとなりました。
夜景は、撮影の特性上、バルーンを上空で止める必要性があります。
昼間の撮影では、問題とならない細かいバルーンのブレを丹念に潰すことになりました。
夜景撮影が可能なほど、上空で止まるバルーンとなった車載式バルーンは、昼の撮影でも驚異的な性能に進化していました。
開発の最終段階での、性能の上乗せは嬉しい誤算でした。

吹き流しこの様な風でも、垂直に上昇するバルーンになるなど開発当初は想定出来ませんでした。
0[Zero]のバルーンは、世界トップクラスのバルーンと呼べるまでになりました。

2009年1~2009年2月 : 特許出願の為、世界中の特許情報を調べる

特許の申請項の一部

←特許申請項のイメージ
風速5m/sにて、80度の繋留角度になるまで0[Zero]のバルーンは性能向上を果たしました。
このタイミングで、バルーン本体の特許申請を行うことになりました。

特許の申請・取得には、世界中に同様な特許の取得・出願が無いかを調べることになります。
この際に、改めて0[Zero]のバルーンの独自性・革新性が確認できました。
同時に、既に出願されているバルーン空撮に関する特許申請が、十分なテストをされずに出願されていることも確認できました。
特に、国内のバルーン関連の特許出願にこの傾向が強く出ています。

0[Zero]は、数多くのバルーンの試作とテストから、形状を見ただけで、そのバルーンの癖まで読めるまでになりました。
ネットで検索して出てくるバルーンの形状は、全て検証した結果です。
様々なバルーンに存在する「癖」を打ち消すには、どのような改良が有効かも推測できます。

・風速2m/s以下での首振り=垂直尾翼の面積と取付位置の不備
・細長いバルーンのピッチング=揚力バランスの欠如
・ビル風による高度の異常低下=水平尾翼の存在が原因

海外でパテントが取得されている、バルーンも基本的には0[Zero]と同じ考えなのですが・・・
理論が整然としてないことが確認できました。
「何となく、この形にすると風に強くなる」という程度です。
今の、0[Zero]のバルーンは、なぜ風が吹いても垂直に上昇するのかを理論立てて説明できます。
効率よく風を浮力に変化するという0[Zero]のバルーンは、風速10m/sでも一人で運用出来ます。
風速5m/s以下では、繋留角度70度を保証。
しかも、ヘリウムガスを現場で廃棄しないエコバールとなりました。

0[Zero]は、航空写真ナビなどのソフトも自社開発を行う空撮会社です。
世界トップクラスのハードウェアも自社にて開発・製造を行っています。
ここまで、自社にて開発から実務までを行う、バルーン空撮会社は世界でも例がありません。
美しい画像を安全・迅速に撮影するには、徹底した理論の検証の元に成立している、ハードウェアとソフトウェアが存在しています。

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