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ドローン空撮[技術解説] - バルーン空撮屋の都合

開発中のバルーン空撮用カメラスタビライザー
送信機・・・たくさん

DJI WooKong Mに関してDJIからの回答待ちとなっています。
ショップ-代理店-DJIというルートです。
DMSSという日本独自の機材に関しての問い合わせ。
回答は、年明けになるかも知れません。

平行して進めている0 [Zero]側での検証は、機材不足(テスト用の送受信機)が一時的に品切れ(及び、発売直前)であることから進むことが出来ない状況です。
これを書いているのが12/24。
年内中の解決を望んでいるのですが・・・
困難かと思っています。(正規ルート・0 [Zero]共に)

今回のポイントは、JR(日本遠隔制御)のDMSSの存在。
S.BUS(双葉電子工業)なら、DJIの開発環境と一緒。
当然、相性も起こす可能性も低くなるハズ。

ここで不都合を起こすと認識してるDMSSが何故必要なのかを解説します。

ポイントは・・・
バルーン空撮とマルチコプター空撮で送信機を共用したい。

ここを理解して頂かないと、0 [Zero]がDMSSを欲し、複数送信機の使用に躊躇するのかを理解することが出来ません。

0 [Zero]と普通のバルーン空撮会社との違い

メンテナンス中のスタビライザー

国内でスタビライザー付きジンバルを自作しているバルーン空撮会社は0 [Zero]のみです。
安全運用と高い信頼性。プロとして誇れる画質。
この全てを叶える答えが「ジンバル自作」でした。
世界というレベルで、ライバルが存在していないと言えるのが0 [Zero]のバルーン技術です。

←まもなく実務投入の最新ジンバル。
機械的なスタビライザーと、ヘリ用のジャイロを組み合わせて消費電力と精度をバランス。
バランサーとなる専用受信機バッテリーを動かすことにより、水平精度とスタビライザー効果のバランスを取るというコンセプトです。
基本的設計は2年前の開発時とかわりませんが、さらなる設計の合理化が進められています。

フレーム部分は、全てカーボン。
ヘリコプターのスワッシュプレートに該当するパーツも、カーボン削り出しという究極のバルーン用スタビライザーです。
現行のスタビライザーは、設計レンズ以外が装着されると微妙に水平精度が落ちるという欠点がありました。
※レンズの重さにより重心センターが動く為。
これに関しても、レンズ交換の際に重心補正を可能とした新設計のフレーム。
これにより、どのレンズでも完璧な水平精度の保証が可能になりました。(機構は、画像に写っていません)

この様に最先端を自負している0 [Zero]の目線で、同業者の送信機を考えます。
多くの同業者で用いられているのは、フタバかJRの廉価送信機。
具体的には、6CHクラスが用いられています。
一般的なバルーン空撮のジンバルは、パン・チルト・シャッターレリーズの3chで仕事が可能です。
故に6chもあれば十分。(これがもっとも安価とも)
0 [Zero]のジンバルは、6サーボ(一つが接点)・9chにて制御されています。
チルトに2サーボ。
スタビライザーに2サーボ。
パン(送信機側から速度調整)に1サーボ。

ラジコンヘリ空撮(業務)に用いられている送信機よりも、複雑なミキシング機能を必要としています。
バルーン空撮機材の開発当初(6年くらい前)から、9chクラスのプロポを標準としていのには、この様な理由がありました。
本当は9chでも足りていません。(送信機2台コントロールなども試作済み)

DSX9

中級以上の機能が必要

メインで用いていたのはJR PCM9XⅡ(DSX9)。

←3年前の開発中の撮影ですがメイン・スペア・耐久テスト用など、4台を購入しています。

ラシコン機器とカメラというのは、似ているところがあります。
プロの機材としては、どちらも「信頼性」が重要。
「撮れていませんでした」という言い訳が効かない世界でとても重要な性能評価項目です。

信頼性という観点では、何も言うことのない優秀な送信機です。
通常のラジコン空撮や普通のバルーン空撮では、十分すぎる機能。
しかし、0 [Zero]では、もう少し機能が欲しいと感じていました。
さらに上級機という選択肢もあったのですが・・・
問題が発生したら即時に交換。
この観点から、購入価格が押さえられる中級機をメインとした過程があります。

なお、送信機に関しての考えは、あくまで、「バルーン空撮屋」としての目線です。
ラジコン空撮のみの空撮会社なら、別の選択肢となります。

車載式バルーン

軽量化が宿命

0 [Zero]のバルーンは、車載式という特徴があります。
国内で実用化されている、フルサイズデジタル一眼レフ+高画質レンズ搭載可能な車載式バルーンは0 [Zero]のみ。
この実現には、徹底的な軽量化がポイントとなっていました。
スタビライザーの徹底的な肉抜きは、この実現の為。
軽量化を進めると安全率が向上することから、永遠に軽量化の研究は進められます。

この軽量化に、テレメトリーは大きな貢献が期待出来ます。
具体的には気圧高度計の統合。
現状システムはグライダーに用いられる気圧高度計(受信機電圧・温度計)を別体にて用意しています。
DMSSに用意されているテレメトリー機能を用いると統合する事が可能になり50g以上の軽量化が期待出来ます。
普段から、0.1g単位(カーボン材の厚みと肉抜き)で軽量化を行っている者には夢のようなデバイスなのです。
マルチコプター側の送信機がどのような物になっても、2012年はDMSSにてバルーン空撮を行う事が決定です。

ハイテック・オーロラ9は非採用

ハイテック・オーロラ9は非採用

2011年の初夏にハイテックのオーロラ9を3台ほどテスト購入しています。
目的は、GPSによる高さ情報のテレメトリー機構。
気圧高度計の統合化のテストとして行われていました。(弊社サイトでも今まで非公開)
購入前に代理店に質問をしても、必要とする情報(主に精度)が得られなかったことから、独自にテストを行いました。

結果として不採用。

高さ方向の精度が実務レベルに達していませんでした。
GPSでは思うような高さ方向の精度が出せません。
GPSアンテナも複数購入し、「選別」を行ったのですが・・・
また受信機の選択肢の少なさ(その時点)から、軽量化も予想程実現出来ないのも採用を躊躇する理由になりました。

WooKong Mが高さ方向の精度が高い事が今までのテストで確認が出来ています。
これに大きく貢献しているのが気圧計に他なりません。
オーロラ9によるGPSの精度テストのノウハウが今回にも生きています。

次の震災に備える

0 [Zero]のラジコン(マルチコプター)空撮への復帰は、当初予定よりも早いタイミングで実施されました。
当初予定では、2015年頃になると考えていました。
理由は十分な技術の成熟を待つという観点から。

マルチコプターは、一日毎に新技術が出てくるという状態です。
機材価格は日々安価になり、各所でノウハウが蓄積されているという状況です。
早期の参入は、より多くのコストと検証手間を必要とするという観点から業界を静観していました。
今回の様な、DJI WooKong MとDMSSの相性の検証などが想定していた「不必要な手間」でした。

希望の一本松

「なぜ、参入を前倒ししたのか?」
それは、東日本大震災の発生。
そして、義援バルーン空撮(外部リンク)の実施経験から。

バルーン空撮は、「見ている者を和ませる」という効果があります。
マルチコプターも含め動力を用いて空撮する手段では、あり得ない効果。

これから数十年に及ぶ復興の記録を残すには、最適な空撮方法と言えると思います。

東日本大震災

福島第一原発周辺での経験

←2011年4月16日撮影。
福島第一原発から7km(浪江町請戸)

震災から一ヶ月が経過しても、震災直後のままとなっていました。
道路は、ガレキにより行く手を阻む。
周囲には捜索の手が及んでいない住居と車両が点在しています。

この様な災害の最前線で必要なのは、「バルーンの和みと安全性」よりも、「ラジコンヘリの機動性」
バルーンでも高さを稼げば、浪江町請戸地区 2011年4月16日[CubicVR](外部リンク)の様な有用な撮影は可能です。
しかし、機動性が高い車載式バルーンでも自ずと限界がある。
バルーンでは、震災直後の水が引かない状況下にて「100m先の状況が知りたい」という現場の声に応えることが出来ない。

当初予定を早めてまでマルチコプターによる空撮に参入したのは、次の震災に備えたいという気持ちから。
空撮が出来るという「力」を、正しい方向で発揮したいという思いからです。

なお、2011年7月のラジコン空撮の再開を決めてから、具体的な行動(テスト機体の購入)をしているのは12月。
「誰も(子供でも)が容易に空撮を可能にする」
このデバイスに関しての特許出願を第一優先として行動していました。
これが一段落したのが10月。
国内外からマルチコプターの情報を収集していたのが11月。
動きが迅速な0 [Zero]にしては、開発速度が遅いと感じた方もいると思います。
実際は、いつも通り「段取りよく」ラジコン空撮再開の準備を進めていました。

送信機の統合化=荷物を可能な限り減らしたい

荷物

←2011年4月4日撮影
陸前高田市 奇跡の一本松の根本

これが被災地のバルーン空撮の実情。
が奇跡の一本松の根本。
がバルーン持って移動しているアシスタント(私)
がシャッターを切っているカメラマン

撮影時は、瞬間8m/sの強風。
安全性の観点から、バルーンを持っているのが私という布陣です。
この瞬間は、バルーンのポジションを確保しようというところ。
無数のガレキを乗り越えながら移動をしています。

宮古市田老地区の旗
被災地での撮影の実際

←2011年4月3日撮影
宮古市田老地区 水門の上の日章旗の撮影現場

が被写体。
が本来の橋の位置
が転倒した橋桁

マルチコプターを用いれば、この様な位置からの撮影が容易になります。
今後の撮影時には、マルチコプターを背負って現場を移動することも想定する必要があります。
この際に可能な限り機材を軽量化したい。
不要なカメラや送信機は、基地となる車両に残したいところです。

大前提として、バルーンはテレメトリーによる軽量化効果からDMSSを採用。(これは確定)
長距離を徒歩で歩いて被災地を撮るなどの場合は、可能な限り機材を少なくしたい。
現状では、送信機一台と高度計の受信機。
これを、送信機一台とマルチコプター一台としたい。

震災前なら、「コストと手間は押さえたい」というのが開発者であり経営者である私の本音でした。
今回の震災を経験した今は、「コストと手間も現実的な範囲で度外視」が現在の見解です。

DJI WooKong Mも二つ目の購入で、製品間のバラツキはハッキリと認識出来ました。
もしも、代理店などが「相性」として今回の件を片付けるなら・・・

DJI WooKong Mのさらなる購入。
そして、選別。
優秀なコントロールユニット(信頼性の高い)をエース機に搭載。
信頼性が劣るユニット(代理店的に正常品)は、テスト機。
もちろん、WooKong Mの非採用という可能性も残ります。

バルーン開発の際も、様々な開発困難を乗り越えています。
そして、世界的に類を見ない機材の開発に成功しています。
今回のマルチコプター空撮機材の開発も本気で取り組んでいます。
安全性・信頼性・画質などで、改善余地があるならば、0 [Zero]は見逃しません。

公開日:2011/12/24
最終更新日:2014/12/05
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