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ドローン空撮[技術解説] - GPSハッキング

GPSハッキング

2014年11月3日発生の、「第9回湘南国際マラソン」にてのマルチコプター人身事故。
この事故を受けての啓発活動コンテンツの第三弾。
他人のマルチコプターをハイジャックして、マラソン大会程度は中止に追い込めます。

はじめに

まずは、以下の事実から。

GPSハッキングにより、第三者がマルチコプターを乗っ取ることは容易。
これに対抗する手段は、2014年現在は存在しない。

マルチコプター普及の最大の功労者はGPSです。
初心者でも手放しでもホバリング。
緊急時もホームポジションに自動で戻るなどと言う事も実用化されました。
これで、無限の夢の扉が開いたようなのですが・・・

GPSハッキングにより、夢の多くは一時的に閉ざされます。

「GPSハッキング」は、「GPSジャマー」より難易度の高い妨害方法です。
飛んでいる場所から遠方のターゲットに誘導するには、高度な技術を必要とします。
しかし、ホームポジションに着陸させずに、上空1,000mから自由落下させる。
これは、それなりの技術を持っている方は実行可能です。
スタート時間などか確定しているマラソン大会などでは、無人化で観客席にマルチコプターを降らせる事も容易に出来ます。

GPSハッキングとは?

機体に偽の位置情報を送り、嘘のホームポジションに誘導する。

これが、GPSハッキングの基本です。
仕組みは単純な物。
衛星からのGPS信号以上に強い、偽のGPS信号を送るのみです。
三次元空間での相対位置を割り出す必要があることから制御系プログラムの理解は必要。
機体側では、GPS信号を本物か偽物かを見破ることは出来ません。
パイロットは、突然暴走に入ったような錯覚に陥ります。
ハッキング後の挙動は、ハッカーの考え方次第。
例えば・・・
X軸Y軸は、本来のホームポジション付近に設定。
高度のみ、-1,000mとする。(地上からの相対)
この様なハッキングが実行された場合は・・・
・機体は、ホームポジション直上の高度1,000mに向かう
・1,000m到達後に着陸シークエンスに入る(ゆっくりと降下)
・バッテリーが切れた時に自由落下へ

こんなパターンも可能です。
X軸Y軸は観客席へ。
高度のみ、+100mとする。(地上からの相対)
この様なハッキングが実行された場合は・・・
・機体は、観客席の真上に
・機体の最大降下速度で観客席に突入

これらは、マルチコプターの自動着陸(障害が発生すると、ホームポジションに戻る)を悪用して成立しています。
この暴走の恐ろしいのが、周囲からはハッカーに乗っ取られていることがわかりにくいことです。
スタート地点からゆるやかに、観客席上空へ・・・
ホバリングに入ったと同時に、急速の降下開始。
重量機と組み合わせれば、破壊的な事故が待っています。
この様な事があり得る時代に入ったからこそ、最低限の安全を確保しなければならない。
イベント系空撮で重量機を飛ばすなど、あり得ない話とする根拠です。

マルチコプター空撮会社へのお願い
・GPSハッキングの危険性を受け入れて下さい

◆発注者へのお願い
・GPSハッキングの認識を空撮会社に確認してください(イベント系撮影の場合)
・必要以上に大きなカメラ(機体)は、リスクを呼び込みます

マルチコプター個人ユーザーへのお願い
・軽量機体のみの運用をお願いします

安全な空撮の理由 ◆0 [Zero]では・・・
技術解説の38) マルチコプターに関する特許出願の内容からご覧下さい。
この特許出願は、マラソン大会のスタートなどを撮影する際に、絶対の安全保障を行う事を目的の一部としています。
上記の技術解説でGPSジャマーやGPSハッキングに触れていないのは、そのタイミングではそれらの公開の必要性に迫られていなかったからです。

0 [Zero]は、当初から、「軽量機体命」のマルチコプター空撮を行ってきました。
軽量である必要から、FPV送信機すら搭載しないのが、0 [Zero]のスタイルです。
初期の機体では、搭載バッテリーの容量を減らし、「暴走半径を狭める」などという方向も試しています。
理由は明確で、GPSハッキング(マルチコプタージャマー含む)によりマルチコプター空撮の全てが禁止となる未来が想定に入っていたからです。
事業であるが故に、仕事量の波を極力抑えたい。
故に、最重要の特許出願を機体開発に先行させています。
GPSハッキングにより、全てのマルチコプター空撮が原則禁止。
この際に、業務を止めない為のヒモ付きマルチコプターの特許です。

コラム1:東京オリンピックでマルチコプターは飛ぶのか?

0 [Zero]では、「東京オリンピックではマルチコプターが飛ばない」と予想します。
理由は、このページでも取り上げているGPSハッキングやGPSジャマーの存在。
会場周辺にGPSハッキングを仕掛けられれば、止めることが出来ません。(現実的なコストの範囲で)
2014年11月の段階で、田舎の小さな空撮屋がGPSハッキングによる危険性を述べているのです。
2020年の段階で、「想定出来なかった」という言い訳は通らないでしょう。
マルチコプタージャマーの技術解説にて述べていますが、GPSに頼らない空間認識を実現しないと安全は保証されません。
この新しい空間認識装置は、東京オリンピックに間に合わないと考えています。

コラム2:もう少し、GPSハッキングを掘り下げます

上記で東京オリンピックを出したので、以下を例にします。

Q1:「メーン会場を飛んでいるマルチコプターをスカイツリーに衝突させる事は可能か?」

A1:「可能です」

本格的にGPSハッキングの勉強をしないと、確実な答えが述べれないことから推測となる事をお許し下さい。
GPSハッキングは、ハッキング用の電波が途切れるとハッカーの意思が機体に伝わりません。
メーン会場の離陸ポイントをホームポジションと推測し、スカイツリーの展望台を、「偽のホームポジション」とします。
離陸と同時にハッキングを開始し、暴走を開始するまでは容易です。
問題は、高速で移動するマルチコプターに対して、ハッキング用の電波を途切れさせないことになります。
途切れてしまえば、本来のGPS信号が指し示す、本来のホームポジションに戻ってしまいます。
GPSハッキング装置が入ったままなら、エリア内外を往復しバッテリーが切れた段階で墜落します。
暴走が目的ならこれでもOKなのですが、このハッカーが狙うのはスカイツリーへの衝突。
ならば、メーン会場とスカイツリーの中間地点からの送波でハッキング出来るか?
これは、少し困難かも知れませんね。
例えば、メーン会場からスカイツリーまでを数ブロックのエリアとして区分け。
リレー方式でスカイツリーまで誘導。
これなら、いけると思います。
なお、GPSハッキング装置を開発するのは合法。
費用も、びっくりするほどは必要ありません。
これを用いる事のみ非合法。

GPSハッキングよりも2014年現在で怖いのは、マルチコプタージャマーとなります。
現場の風を計算しながら、マルチコプタージャマーをON。
機体は、ホバリング高度を維持しつつ風下に向かいます。
ターゲットである観客席などを越えて安全なエリアに入りそうなら・・・
ジャマーをOFF。
機体は、GPS復帰によりホームポジションに戻ろうとします。
程よく戻ったところで、再度のON。
これを繰り返してる間にバッテリー切れを狙います。
これでも、目的は十分達成出来るはず。

少し目線をかえます。
このGPSハッキングの犯人を特定することは可能か?
う~ん。
余程、犯人が間抜けで無い限りは特定は無理です。
特に、複数のGPSハッキング装置をリンク出来るレベルの方なら、足跡は残しません。
少なくとも、私には逃げ切る自信があります。
会場で、常駐の監視員を置いても・・・これもムリです。
会場外からでも、ジャミングは可能。
これは、新しいテロの形と成り得ます。
つまり・・・近い将来ニュースとなる暴走パターンなのです。

コラム3:GPSハッキング装置は市販されるか?

2014年現在は、販売は確認出来ませんでした。
ただし、仕組みを解説した英文pdfは見つかりました。
しばらくは、簡単にGPSハッキングが出来る時代にはならないと思います。
※マルチコプタージャマーの警戒は怠らないように

GPSハッキングは、無人機への対抗手段として普及すると睨んでいます。
装置自身は複雑な物でも、高価な物でもありません。
ある程度の量産が出来れば、ノートパソコン+α程度の価格にて販売は可能です。

公開日:2014/11/12
最終更新日:2014/11/12
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