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ドローン空撮[技術解説] - プロペラバランス

プロペラバランス
GWS 1060 プロペラバランス取り

マルチコプター空撮の画質に大きな影響を及ぼす、プロペラのバランス取りについて考えます。

ホビー向けのプロペラバランサーを一部改良して使っています。
基本はホビーと全く一緒。
全てのブレードの静バランスを可能な限り取ることを目的としています。
このバランスが取れていないと、上空にて微妙な振動が発生。
フレームを経由して、カメラに振動が入る事から画質が悪化します。

ホビー用途なら問題とならないレベルの振動も、ブロの空撮画質としては致命的な振動と成り得ます。

バランス取り完了

バランス取りにテープは使えない

←バランス取りが完了したプロペラ。

マルチコプターを用いる他社と、2012年2月現在での大きな違いがバランス取りに関する考え方です。

0 [Zero]では削り出しのみでバランスを取っています。

3枚プロペラのバランス取りは一般的には重たい2枚のブレードにバラストを貼って取ることになります。
他社の機体写真を見てみると、プロペラにテープが貼ってあることがほとんどです。

このテープを用いるバランス取りは以下の大きな欠点をもっています。
・テープが剥がれると、バランスが崩れる
・微妙なバランス取りがテープでは出来ない

どちらも、0 [Zero]としては無視できない項目。
以下で詳しく解説します。

◆テープが剥がれると、バランスが崩れる
バランス取りのテープは非常に小さな物です。
移動中に剥がれてしまっても気がつく事は困難。
上空で剥がれてしまっても、飛行性能には一切影響が出てきません。
しかし・・・
映像には致命的な影響が出てきます。
「離陸前のチェックでは問題無し。しかし、撮れた映像にはプレが入っている・・・」
上空でバラストテープが剥がれると、「あり得る」現象です。(確実とも言って良い)
やっかいなのが映像を確認しないと、最終的には判断出来ない事。
離陸時は良くても、肝心なシーンに入るとブレが発生と言う悪夢のようなパターンも想定できます。

◆微妙なバランス取りがテープでは出来ない
これが最大の理由。
空撮に用いる3枚ブレードのバランス取りはホビー用からさらに極める必要があります。
テープ一切れでは微妙なコントロールが出来ない。
完璧を求めれば、削る以外の答えはありません。

コラム:動バランスはどうしているのか?
GWS3枚プロペラ

過去の経験から、「プロペラバランスは非常に重要」と考えていました。
ガソリンヘリ(GSR260)にて、「レシプロエンジンでは振動を抑えきれない」という結論に達し、ロータリーエンジンにてCubicVRを撮影していたのです。
メインブレードは静動ともにしっかりと出すクセがあります。

マルチコプターに用いる3枚ブレードの動バランスはどうやって出すんだ・・・
調べて見ましたが現実的なコストの範囲で完璧な動バランスを出す方法は無いという結論に至りました。

開発項目は多岐に渡るので、プロペラの動バランス問題は放置して各所の開発を進めていました。
その仮定で、何セットかのプロペラバランスを取っていると一つの発見がありました。
GWSの1060は、「重心点の偏りに同じ傾向がある」事に気がつけました。
簡単に言うと・・・
正回転は簡単にバランスが取れるが逆回転は難しい。
※GWS 1060限定

その都度違うではなく、一定の法則がプロペラバランスの取り方の過程にあるのです。
つまり、成形物であるプロペラの重量バランスの崩れ方は傾向がハッキリとあるのです。

何を言いたいかと言うと・・・
静バランスに「傾向」があるなら、動バランスにも「傾向」があるのではないか・・・

後はテストベンチと向き合うまでです。
A : 先端を削って静バランスを取ったプロペラ
B : 中央を削って静バランスを取ったプロペラ

この二つをベンチに掛けて、実際の振動を観察。
一定の法則が見つかったら、CとDのペラを用意。
この過程を何回か繰り返すと、GWS1060の逆回転ペラの動バランスが「ある程度」取れるようになります。

やり方は紹介しますが「どこを削れば良いのか?」は非公開。
これがノウハウという物です。

【加筆:その後のプロペラバランスに関して】
このページを最初に記したのは実務開始前の開発初期。
1年以上が経過し技術は向上していますが・・・
この時点とバランス取りの方法は一切変わっていません。
実務に投入しているペラはこのページでも取り上げているGWS10インチ。
これに、8インチのエンルートの樹脂ペラ。
この2種類が実務で用いているプロペラです。
どちらも、削りだしでバランス出し。
ベンチにかけて動バランスの傾向観察。
加筆日:2013/04/05

公開日:2012/02/17
最終更新日:2013/04/05
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