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ドローン空撮[技術解説] - 注文者責任のとらえ方の変化に関して

注文者責任のとらえ方の変化に関して

2014年11月3日発生の、「第9回湘南国際マラソン」にてのマルチコプター人身事故。
この事故を受けての啓発活動コンテンツの第七弾。
今回の事故は、注文者責任を問われることになるのか?

はじめに

民法第716条
注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。
ただし、注文又は指図についてその注文者に過失があったときは、この限りでない。

以下は、注文者責任に関しての技術解説です。
2012年の公開である事から内容が少し古くなっています。
参考としてご覧下さい。
25) マルチコプターの事故と注文者責任

ここでは、「第9回湘南国際マラソン」のマルチコプター墜落事故後という目線で注文者責任を考えてみます。

普通に考えれば、注文者に過失は無い

過去の判例から、どのような事態になると注文者責任を問われることになるのかを推測します。
※マルチコプター空撮に関する判例は無い事から

・請負(空撮会社)が、「飛ばさない」と言っているのに、「飛ばせ」と指示した
・注文者(発注元)が、「人の上を飛ばせ」と指示した

この様な事があった場合に、注文者責任を問われることになります。
普通に考えれば、この様な事は有り得ません。
今回も注文者は、請負に全てを任せていると思われます。
つまり、今回の事故では注文者責任は問われないと推測します。

ただし・・・
今後は、注文者責任の変化が起こります。
今回の事故により、「マルチコプター空撮は危険」という認識を持つ切っ掛けとはなりました。
関係者は、この様に認識をする必要性が出てきました。
「マルチコプターが危険」という認識が浸透すると、注文者責任の解釈は大きく変わる事になります。

これからは、空撮発注の指示をした方が注文者責任を問われる可能性がある。

これからは、湘南マラソン大会の事例により、「マルチコプター空撮で怪我人は発生する」
危険と思える撮影手法を発注しているのですから注文者責任も生まれます。

事故以前
注文者:マルチコプター空撮には危険が無い (その様な誤認も致し方ない)
※注文者が、「危険が無い」と感じても当然

事故後
注文者:マルチコプター空撮には危険が伴う (第9回湘南国際マラソンの事故を知っている立場ならこの様に捉えられる)

イベント会場でマルチコプターは飛ばせるか?

今回の事故により、プロが携わっても事故は発生するという事実が証明されています。(当たり前の事ですが・・・)
※このページのコラムに記しますが、説明責任を果たしていないという段階でプロとは認めたくはありません。
一般の方が知らなくても、マラソン大会(イベント)の主催者なら今回の事故を認知していて当然という環境下で考えると・・・

イベント会場でのマルチコプター空撮は禁止

無難という観点から、この判断が適切かと思います。
まずは、大会主催者によるオフィシャル空撮の禁止。
協賛なども含めて、全ての関係者による空撮の禁止。
大会エリアに関しては、一般の方も含めて空撮禁止のお願い。(ここに関しては、拘束力が無いことから)
細かい規定は一切必要ありません。
「わからないから全てを規制」
この件に関しては、これが正しい選択です。

既に、マルチコプター空撮が人身事故を起こすという可能性は示されました。
次の、重大事故が発生した場合は、厳罰が望まれることになると思います。
その際に、このページをご覧になっている方が該当者にならないためにもイベントでのマルチコプター空撮禁止をおすすめします。
イベントなので・・・
お祭り・ライブ・人文字撮影など、多くの方が集まる空撮全てに該当します。

もしも私(0 [Zero]の開発者)がイベント主催者側で意見が言える立場なら・・・
「しばらくは、空撮を控えませんか?」と提案します。
「しばらく」とは、マルチコプター空撮の立ち位置が明確になる時まで。
少なくとも、2014年11月以降にイベントでマルチコプターを飛ばすと言う事は、少なからず潜在的なリスクを放置したと取られかねない状況です。
過去にも、弊社が安全性の観点から断っている様な案件が、説明責任を十分に果たせないと思われるレベルの業者が請け負ったという事例が見受けられます。
十分に歴史のある業界なら請負も選査されています。
しかしながら・・・2014年現在は、玉石混淆という状況です。
そして、この状況は数年では解決しません。
なお、「人の上を飛ばさなければ、大丈夫」という判断は早計です。
過去にも、斜め方向に暴走して客席に墜落という事故は発生しています。
つまり、見える範囲全てを墜落想定範囲とする必要があるのです。

◆注意:
無条件の禁止推奨ではありません。
今回の事故でも、重量級の機体を人物直上で運用したことが最大の問題なのです。
※イベントの特性を考えると、どんなに距離をもっても重量機投入は認めたくありません
軽い機体に限定すれば、「怪我人は出ますが、死亡事故の可能性は低くなります」
つまりは・・・
ある程度のリスクは承知の上で、死亡事故を出さない運用・発注をする。
これが、正しい方向かと思います。
軽い機体に限定して、人物の直上には入らない。
このポリシーのみで、大きな問題となる事故のほとんどを防ぐ事が出来ます。

コラム:空撮会社の説明責任

重要な事なので、何度でも書かさせて頂きます。

2012年11月18日
岐阜県大垣市にて、伐採の見学に参加していた小学生が、長さ3m・重さ5kgの枝の落下で亡くなっています。
これをマルチコプターの落下に当てはめれば、答えは直ぐに出ます。
プロペラガードなどを用いても重量機なら死亡事故に至ることは、この事故からもわかります。
軽さは絶対的な正義です。

「重さ5kgの枝の落下で死亡事故は発生する」
5kgなどという機体を第三者の真上で飛ばすなどと言う発想は出来ないはずです。

手持ちの機体から、今回の機体(警察発表では4kg)を持ち出したのには理由があるハズです。
もしかすると、注文者から搭載カメラの指示があったのかも知れません。
それをクリアするには、結果として重量機になったと・・・

ここで、本題にはいります。
この時に、「この機体はマラソン大会では飛ばせません」と注文者に明示するのが、空撮会社の説明責任です。
もしも、注文者が強行するなら、このページに記している注文者責任が発生します。
この空撮会社の説明責任に関しては、義務づけされていないと言うかも知れませんが・・・
考えれば解ることは、書くまでも無いのです。
素人である注文者が判断出来ないリスクに関しては、請負側に説明責任が発生するのです。
プロである方は、この点に関しての意識をお願いします。

そしてもう一点。
事故後には、「言った、言わない」が問題になります。
この様な重要な指示は文章として残す事をおすすめします。
もしも、いろいろな観点から文章化が難しいというならば・・・
0 [Zero]の様に、ポリシーを自社サイトに記載しましょう。
0 [Zero]の場合は、空撮に携わる全ての社員が同一のポリシーで動きます。
立入禁止区域なども、料金表からワンクリックの範囲で、以下の様に明示しています。

立入禁止範囲:基本編から抜粋
立入禁止範囲の規定 2014年現在は、様々な自称プロが出てきています。
ラジコン空撮というは、本質的に大変危険な職業です。
一歩間違えば、他人の命や財産を奪うという自覚が必要な仕事です。
説明責任に関しては、どのようなタイプのプロでも発生する事。
これを機会に、自社ホームページに同等レベルのポリシーを記載されることを希望します。
0 [Zero]を真似るのも結構。
具体的な記述を心がけ、制定日・改定日も明確に表示してください。
これを出す前に、営業に走るのは・・・プロとしての自覚が足りないと言い切ります。

公開日:2014/12/03
最終更新日:2014/12/11
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