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ドローン空撮[技術解説] - ホワイトハウス無人機墜落に関する推測

ホワイトハウス無人機墜落に関する推測

ホワイトハウスを無人機の攻撃から守る。
この様な観点から、2015年のホワイトハウスへの無人機墜落事故を考えてみます。

はじめに

この事故により、多くの方が望まない方向に向かう可能性が上がった事は間違いありません。
様々なサイトでモラルや法整備などを述べられる事でしょう。
この方向は、0 [Zero]でも何回か取り上げていますので今回は割愛します。

今回の事故によりマルチコプターアタックが容易であるという認識が広まりました。
一部の報道では、「進入を許してしまったことが問題」という論調となっていますが・・・
それは、早計ですね。
今回の一連の流れは防御側からすると、想定シナリオの一つです。

0 [Zero]は、いつでも独自路線。
ホワイトハウスへの無人機攻撃を防ぐ立場ならどうするか?
この観点から、今回の事故を掘り下げていきます。

無人機のサイズ(破壊力)により対抗手段を設定

大型機=有人機のラジコン化(自立航行)などを想定
中型機以下=比較的低空から侵入するマルチコプターなど

大型機に関しては、簡単に流します。
公になっているところでは、NASAMSが配備されています。
ミサイルも含めて大型の無人機は、NASAMSにより防御されています。
ドローン(マルチコプター)を含めて、100kg以下の機体に関してはミサイルなどか必要無いことは言うまでもありません。
使ってしまうと、ドローンによる直接的な被害よりも惨事が待っています。
テロなどを目的とするなら、NASAMSを使わせればテロ側の勝利と・・・言えなくもありません。

ドローンをどのように防ぐか?

マルチコプターを含む小型のドローンは、現場付近からの離陸が容易です。
近距離から近づくことから、NASAMSでは対応出来ません。
また、10kg程度のマルチコプターの撃墜に100kgを越える地対空ミサイルを用いるのは現実味がありません。
これを防ぐには、周囲のパトロールなどにより離陸前に封じるのがベスト。
それでも全てを防げるわけではありません。
駐車中の車両のサンルーフから飛び立てるのが小型のドローンです。
離陸から数十秒で敷地内に入って来ると想定します。
この様なドローンアタックには、CIWSなどが有効に見えるのですが・・・
それも少し違います。
確かに、マルチコプターを確実に撃墜出来ます。
同時に流れ弾による、とんでもない二次災害が発生します。

マルチコプターによるホワイトハウス襲撃を防ぐ・・・
2015年現在で、もっとも有効と思われるのがGPSジャミングです。
敷地直上は当然として、敷地外の斜め上空にもジャミング波を出します。
周囲の自動車のGPSには実害無し。
低空から近づくマルチコプターのみに影響を与える。
比較的直進性の高いGPS電波だからこそ、有効な対抗手段です。
これにより、近づいてくるマルチコプターのGPSを無効化。
コントロールとFPVも同様に無効化。
全ての目を失ったマルチコプターは、どこかに墜落します。
大型機と言ってもマルチコプター程度の質量では、建物内の要人を殺害するのは困難です。
ピンポイントで要人を狙われる事を防げば目的は達成出来ます。

将来的にはレーザー兵器

ホワイトハウスのような場所では、実体弾で近距離から防御するというのは現実的ではありません。
数年後に配備されるのは、レーザー兵器。
流れ弾の二次被害は無し。
設備もCIWSと比較すると目立たない。
2013年の段階で、次世代のマルチコプタージャマーとしたのは、レーザー兵器でした。
その際には、「最低でも5年間は、この公開の必要性は無いと思っています」と記していますが、それは外れたことになりました。
2014年に中国で、対ドローン兵器としてレーザー兵器が実用化されています。

なお、レーザー兵器が配備されても、NASAMSは必要です。
レーザー兵器は空気により減衰・拡散することから射程距離が短めです。(最大でも数kmという単位)
実機を含めた大型無人機からの防御に、地対空ミサイルは必要です。

敷地内に墜落で、「予定通り」

今回の対応として、どちらが好ましいですか?

A:ジャマーにより、敷地内に墜落(ジャマーの存在は非公開)
B:近接対空兵器により、敷地外で撃墜

本当の危機ならば、迷うこと無く撃墜ですが・・・
DJI・ファントム程度なら事を大きくする必要は無いと考えます。
建物の中にいる限りは、100kg程度の機体に爆弾を搭載しても要人暗殺は困難です。
※爆弾を開けた空間で用いても効果は薄い
20kg以下の普通のマルチコプターなら、痛くもかゆくも無いというのが本当のところです。

しかし、何もしないのも問題です。
ホワイトハウス上空にて撮影された映像をネットに流されるのは問題です。
これを防がなければならないので、防衛圏内に入るマルチコプターはジャミングにより落とします。

ラジコンによるホワイトハウス襲撃は、数十年前から想定されていると推測します。
その想定の中では、建物の外に出なければ問題無しとなっていたハズ。
レーザー兵器の配備も当分は必要無いと思います。
これが必要になるのは、GPSジャミングを無効化する機体が一般化するタイミング。
地形を読み取りながら、GPSを用いずに指定の場所にたどり着ける機体が出てくる時です。
ボトルネックとなるのは、演算と地形読み取りの速度。
これらの機体はジャミングが効きません。
これに対抗する目的でレーザー近接兵器がホワイトハウスに配備されます。

本当に怖いのは無差別テロ

ホワイトハウスのように決まった場所を適切な人員で防御するのは容易です。
これから先も、無人機による効果的なテロは成功しにくいと言えます。
マルチコプターを用いた犯罪で、もっとも深刻なのは無差別テロ。
守るには、あまりに範囲が広く現実的な対抗手段が無い。
GPS打ち込みで、複数の機体を群衆の中に飛び込ませる。
単独犯で、これを可能とするのが2015年現在のマルチコプターです。

公開日:2015/01/27
最終更新日:2015/04/22
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