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ドローン空撮[技術解説] - SONY SEL1018は、マルチコプター空撮に使えるか?

SONY SEL1018は、マルチコプター空撮に使えるか?
α7RとSEL1018

注意:
このページは、マルチコプター空撮によるスチール撮影という前提で、α7RとSEL1018(NEX向け広角ズーム)のフルサイズ使用の組み合わせで述べられています。
評価内容は一般用途と大きく異なります。
ご理解の程をお願いします。

いつも通り結論から。

使い手の技量を試される組み合わせ。
基本的には推奨しません。

2014年の前半と限定すると一定の存在価値はあります。
しかし・・・これ以外の選択肢も豊富にあります。
新規に敢えて購入するレンズでは無いという評価です。(フルサイズ流用として)

SEL1018
なぜ、このレンズを購入したのか?

研究心から、APS-C流用を試して見たくなりました。

業務で用いるスチールカメラは、2005年以来(CANON 5D)フルサイズで統一されていました。
手元には、APS-C専用の世代の新しいレンズは一本もありません。
NEXは、発売直後に入手していますが純正レンズは簡単な試写の後に即時に処分。
手元のボディは、Gマウントレンズ(京セラコンタックス)にて使われていました。(業務撮影には用いません)
このSEL1018は、NEXにてマルチコプター空撮を実施している空撮会社が採用している可能性が高いレンズです。
この写りを確認したいというのも購入動機のひとつです。

完全な研究のみが目的ではありません。
必要性能があれば、業務投入も考えています。
その業務は、マンション眺望撮影。(バルーン空撮)
様々な商品グレードのあるマンション眺望撮影の中から、クオリティの高さを求められない商品。
具体的には・・・
・出力はA3程度をカバー出来ればOK
・数を必要とする事から撮影コストは安価である事
・画角は歪みが酷くならない範囲で広い程よい
・撮影後の加工は必須
・本命は、ツァイスの単焦点レンズ(未発売)

今までは、デジタル一眼レフと広角ズームの広角端などで撮影された素材をベースに加工されていました。
もちろん、マウントアダプタでEF・Fマウントを付ければ完了なのですが・・・
マウントアダプタの重量も加算すると、レンズの重さが少し辛い。
SEL1018なら、マウントアダプタ無しで225gと軽量。
つまり、軽量な超広角レンズというのが最大の購入動機です。

写りはどうなのか?
SEL1018

←四隅付近で実用になりそうなところから等倍で切り出し。
※APS-Cの範囲

フルサイズとして評価すると・・・
周辺減光は、後処理で問題無し。
周囲のながれも、焦点距離を選べば、「なんとか」
樽収差も想定の範囲=緻密な仕事には使えない
最大の問題は、どの焦点距離でも四隅の甘さ(APS-Cの範囲外)はどうしようも無いというレベル。
どの焦点距離でも、トリミングをしないという前提では、このレンズは使い物になりません。
言い方を変えると・・・
「トリミング前提で画像加工技術があれば、簡易的な広角レンズとして成り立つ」とも言えます。
もっと言うと・・・
少し広いAPS-Cと考えれば、極めて有効とも言えます。
こうなってしまうとフルサイズの意味があるのかとなってしまいますが・・・
実務では、画質が悪くても僅かに余計に写ることで救済されるという事も多く出くわします。
画像加工の技術があれば、特定の業務には投入可能。
画像技術が無いなら、重量が増えても普通のレンズをつけることを推奨。
手元にあるなら活用も考えて良いと思いますが、狙って購入するレンズではありません。

APS-Cとして評価すると・・・
空撮を用いた広告写真としては落第点。
一般の方を対象とした万能(どっちつかず)のレンズです。
NEXとSEL1018なら、RX100で十分ではないか?という結論に至ります。
画質は不十分。
重量的にも中途半端。
画質重視なら、最新設計の単焦点+α7R。
重量重視なら、RX-100を推奨します。

後玉で写りは予想出来る
SEL55F18Z SEL1018

空撮に用いるレンズの重要性能のひとつ。
それは・・・
四隅がシャープな事
この性能を予想するには、レンズの後玉でわかります。(フルサイズミラーレス前提)
左側=SEL55F18Z α7R(フルサイズ)対応
右側=SEL1018 NEX(APS-C)対応

α7Rの性能を全て引き出すのは、受光部に垂直に像を届ける必要がある。
これを具体的に証明しているのが、SEL55F18Zです。
このレンズは、フランジバックの短さとフルサイズというα7Rの素性を最大限活用する為に最適化されたレンズです。
過去に、この様な大きく受光面に近い後玉は見たことがありません。
頭の中では理解していたのですが、現物が目の前に来ると驚きます。(その攻めた後玉から)
実写テストでも驚愕という表現が相応しいとんでもない性能を示しました。
55mmというある意味で中途半端な画角なので需要は多いと思えないのですが・・・
α7Rの真の性能を見たいなら試すべきレンズです。

SEL1018は、後玉径が小さいことから何mmを用いても四隅の改善はありません。
10-18mmですので中間付近以降は、フルサイズに使えそうなのですが・・・
それは違います。
15mmの焦点距離は、あくまでAPS-Cサイズで最適化された15mm。
それ以外の写らない範囲(フルサイズの四隅)は、画質の考慮は一切されていません。
今回の購入は、このムチャをするとどの程度の画質劣化があるのかを見切る事目的のひとつ。
この点に関しては、「APS-C専用レンズのフルサイズ流用は基本的に業務撮影に使えない」という答えにたどり着きました。

0 [Zero]では、テストとして直近の実務に投入します。
その結果が良ければ、過渡期は、このレンズで該当する実務を消化します。
サードパーティーも含めて、このレンズよりも総合的に優れるレンズは程なく出てくると予想出来ます。
その時点で退役となります。(早ければ半年で役目を終えます)

まとめると・・・
手元に高級広角ズームがあるなら、それを用いるべき。(重量が問題とならないなら)
待てるなら、正式対応のFEマウント広角レンズを待つことが吉。
重量の関係から、短い期間でも、このレンズのスペックが必要なら・・・購入しても良いでしょう。
ただし、それ相応の画像加工技術を持っていることが線引きの基準です。
つまり・・・
ほとんどのマルチコプター空撮を用いたスチール撮影のプロには不要のレンズ。
トリミング代を持った、広角APS-Cという使い方が受け入れられる画像加工を得意とする方のみ可。
クロップするなら、α7Rを使う意味は無し。
やはり、使用する方を選ぶレンズですね。

公開日:2014/01/08
最終更新日:2014/01/22
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