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ドローン空撮[技術解説] - 首相官邸屋上のドローン落下事故に関して

首相官邸屋上のドローン落下事故に関して

2015年4月22日に発見された、首相官邸屋上のドローンに関して。
ドローン空撮実務に携わるプロとして考察します。

・ドローン法とテロは別問題
・飽和攻撃を想定しているか?
・ラジコンの趣味レベルで、100kmを飛べる100km/hのUAVは自作出来る
・ドローン賛成派の視線ではリスクは語れない

ドローン法とテロは別問題

既に流れに入っていますが、ドローンに関する法整備が進んでいます。
どのような整備が進んでも、最初の重大テロを防ぐ事が出来ないと考えています。

有毒ガスを上空から散布する。

この様なテロを簡単に出来るようになってしまったという認識が必要です。
テロを起こす者には、法規制など・・・当然の事ながら関係ないことです。
・花火大会の群衆に硫酸散布
・都心部でサリン散布
・旅客機に意図的にドローンストライク

法整備は、商業利用などの為に必要。
テロ対策には、特定機材の販売と使用の禁止まで踏み込んだ対策が必要です。
可能性は示されたのですから、勇気を持って特定機材の販売の禁止まで踏み込んで欲しいと願っています。
・FPV禁止(画像転送装置を用いて、目標まで誘導が可能)
・GPS自律飛行禁止(自動操縦にて、目標まで移動)
この二つを止めないと、有視界外からのテロを防ぐ事が出来ません。
早い話が、2010年のラジコン空撮まで時計の針を戻すしか、テロを防ぐ方法がありません。
この方向に向かうと、2015年現在のプロは仕事を失います。
※それ以前もプロは存在したわけで、そう言う方々は問題無し。
テロと商業空撮のどちらが重要かと問われれば、自ずと答えは出ると思うのですが・・・

飽和攻撃を想定しているか?

重大なテロなど、やる気になれば誰でも出来てしまうのです。
ここから先では、もう少しテロに関して掘り下げます。
テロは、同時多発且つ単独犯で犯すことも簡単。
ドローンによるテロの想定が始まっても、ここまで踏みこんだ意見は、今の時点では少数かと思います。
ドローンの多くは自動飛行が可能です。
テロの犯人の基地から、複数の機体を複数の目標に同時に向かわせることも容易です。
特に専門知識は必要としません。
購入したままの機体を非改造で、このテロは可能なのです。
仮に、ドローンテロ対策チームが出来たとします。
サリンや放射線から爆発物まで。
あらゆる危害に対策するチームです。
これらは、同時に10機のドローンでテロを行われると機能しません。
これが飽和攻撃と言われる古典的な攻撃方法です。

ラジコンの趣味レベルで、100kmを飛べる100km/hのUAVは自作出来る

2015年4月25日加筆:
これを書いている段階で容疑者は出頭しましたが、ログとして以下は残します。

今回の首相官邸屋上に落下したドローンの操縦者は、ラジコンマニアと言うよりも一般の方に近い者と推測します。
技術のあるラジコンマニアなら、ファントムをベース機として選択しません。
自身の技術レベルを隠匿する目的なら、機体の塗装などは施さないハズです。
フライト技術が有る方なら、屋外機でプロペラガードも付けません。
一般程度の技術レベルで、目的を達成しようという工夫を施した機体と読み取りました。

もしも、一定水準以上のラジコンマニアが国内で入手可能な違法な器機まで用いてテロ用の機体を制作したとすると・・・
「100kmを飛べる100km/hのUAVは自作出来ます」
特定のエリアで発煙筒を自動点火したり、何かを降らせたり・・・
この様な事は、比較的容易に実現出来ます。
10年前なら、この様なマニアは比較的特定が簡単でした。
部品は、ラジコン店や電子部品店から入手することになります。
機械部品や制御部品も、ある程度の専門性が必要でした。
制作の過程の足跡から犯人を追いかけることが出来ました。
ところが、2015年現在は、この状況に変化が起こっています。
部品と知識の入手は、ネットから可能。
周囲に悟られることなく、ラジコンマニアは技術を向上させる事が可能になっています。
このタイプのマニアがテロを実施すると、犯人特定は非常に困難になります。
つまり・・・
100kmを飛べる100km/hで飛行出来るUAVでテロを起こしても、犯人を特定出来ないという事も有り得る時代になっています。

この隠れマニアがテロ起こすと想定します。
目的地に着いてもガソリン残量が多い大きな燃料タンクを搭載し衝撃で発火する装置を自作します。
目標から100km離れた人目に付かない場所から夜間に離陸。
この機体は、2015年現在の国内の重要施設は防ぐ手段がありません。
この様な機体が突入してきても、甚大な被害にはなりません。
建物内の要人殺害などを狙うには、破壊力が低すぎます。
ただし・・・
週に1回、この機体が特定の場所に定期的に飛来する・・・
防御側がどんなに準備しても、突入を防げないという状況が繰り返される。
この様な愉快犯がいつ出てもおかしくないという想定は必要です。

なお、電波法の改正で対ドローンを行うと言う流れも出ていますが・・・
この手のGPSを用いる飛行機タイプのUAVには、効力がありません。
目的が、一定範囲への重量機体の墜落なら・・・防ぐ手段はありません。

また、今回の機体が、「高度な改造が施された」とされていますが、この点に関しては違うとコメントします。
プロペラやモーターの交換は、自動車整備に例えるとオイル交換程度の最低限のメンテナンスです。
量販店でも消耗品として、普通の販売されています。
この記事を書いた方は、量販店の売り場にて状況を確認してみて下さい。

ドローン賛成派の視線ではリスクは語れない

今回の報道で、様々なドローン関係の方々が取材を受けているのを拝見しました。
多くの方は、ドローンバブルに乗っかっている方々なので・・・
最悪を想定した上でのコメントではありません。
もしかすると・・・想定出来ていないという可能性すらあります。
技術解説ページでは、重量に関する記述が多く見受けられます。
ドローンの事故時の被害を決定付けるのは、フライト総重量です。
以下を、いつものように示します。

2012年11月18日
岐阜県大垣市にて、伐採の見学に参加していた小学生が、長さ3m・重さ5kgの枝の落下で亡くなっています。
これをドローンの落下事故に当てはめれば、答えは直ぐに出ます。
プロペラガードなどを用いても重量機なら死亡事故に至ることは、この事故からもわかります。
軽さは絶対的な正義です。

今回の事故から、過去の湘南マラソンを掘り下げている報道なども拝見しましたが・・・
あの事故は、死亡事故となる可能性が十分あったと踏み込んだ方は確認出来ませんでした。
0 [Zero]としても、1kg前半に収まるファントムなら、それなりの技術を習得した方のフライトは良いと思います。
しかし、3kgを超える様な死亡事故を想定するレベルの機体が一般の方の視界の範囲を飛ぶ事は、いかなる理由からも規制すべきと思います。
免許制となり、届け出機のみしかフライト出来ないとなっても、重量機の無制限なフライトには断固として反対します。
2015年現在でドローンを用る多くの同業者に対して、ドローン(マルチコプター)から撤退しろと言い切ります。
ドローン(マルチコプター)が構造的に抱えている固定ピッチの問題が、こちらには発生しません。

まとめ

ここを記述している段階(4/25)に容疑者が出頭しました。
ひとまずは、解決の方向に向かいますので、このページをまとめます。

2014年11月の湘南国際マラソン墜落事故が一般の方がドローンの事故に気が付く切っ掛けとなりました。
さらに、ホワイトハウス無人機墜落事故と続きます。
この1年間は、ドローンは歓迎という方向で迎えられていました。
これが徐々に悪化してきて、今回の件で決定的に方向性に変わりました。
今後の注目は、諸外国と比較してどの程度の規制レベルに落ち着かせるかです。
以下のページでは、今回の事故の可能性を示しています。
116) マルチコプター全面禁止というシナリオ
その中では、一部規制から全面禁止まで考察しています。
今後は、どのようになっていくのか?
このページを見ている方の興味かと思いますので、この部分の今後の予想を記します。
「規制は入るが、お手盛りの内容。事故やテロは、今後も発生する」
この様に予想します。
ポイントとしては、「お手盛りの規制」です。
「産業の発展」という旗印の元で、重大テロの発生源を絶たないままで規制は入ります。
何度も記していますが、GPSとFPVに規制を掛けないとテロは防げません。
しかし・・・ここを封じると、2015年現在のドローンバブルに乗っている方の多くのバブルは弾けます。
故に、規制を引く側(ドローンバブル賛成派)は、ここまでの規制に踏み切れないと予想します。

0 [Zero]の宣伝を・・・

以下が、この一週間の0 [Zero]の業務でした。
特に、大使館付近の業務は、多くの同業者が非難する内容かと思います。
事実、この案件は他社で断られてこちらに回ってきました。
断った理由は、「電波が・・・」との事。(ドローンが暴走する理由を的確に理解すれば、飛ばせるのですが・・・)
平均風速10m/s超えも、同業者的にはNGなのでしょうが・・・(乱流が出ない、綺麗な強風なら怖くない)

・某大使館付近にて、業務にてドローン動画撮影
・某所にて、太陽光発電所の撮影を平均風速10m/s環境下で実施
・特許出願機の開発
・特許出願に関する打合せ

0 [Zero]の業務の多くは、普通の空撮会社が断る条件です。
その一方で、ゴルフ場の空撮のような、「美味しい」仕事は断っています。(今週も、お断りしました)

ポイントとなるのは、5月と6月に出願する特許の内容。
5月出願の特願A(仮称)は、ファントムクラス(軽量且つ固定ピッチ)の暴走事故の根を絶つ物。
6月出願の特願B(仮称)は、官邸の前で合法的にドローン空撮を実現するための物。
手前味噌となりますが上記の出願内容は、今後のドローン業界に大きな変化を起こします。
詳細は、出願後に公開となりますが、0 [Zero]の会社規模では消化しきれない内容です。
故に、出願後に公開に踏み切り、協力者を募ります。
「そんな、物があるはずが無い」と思うか方・・・
是非とも、0 [Zero]今後に注目して下さい。

公開日:2015/04/23
最終更新日:2015/05/02
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ドローン空撮[技術解説] 関連リンク

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