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ドローン空撮[技術解説] - 航空法改正

航空法改正

2015年12月10日から、官邸ドローン事件を受けた改正航空法が施行されます。
この日から、原則として届け出を行わないとドローンは飛ぶことが出来ないと理解してください。

30mルールの理解がもっとも重要

各所で改正航空法に関して述べられることから、細かいことはそちらに譲ります。
ここでは、「30m未満の飛行」を中心に、趣味のフライトでも、申請が必要な理由を掘り下げます。

承認が必要となる飛行の方法の中に、「30m未満の飛行」が触れられています。
・人(本人・関係者を除く)
・車両
・工作物(建物・電柱・電線)

これらから30mの距離を確保出来ないフライトは、申請の必要が発生します。
これには昔ながらのラジコン飛行機から、実務で用いるマルチコプターのすべてが該当します。
どんなに田舎の飛行場でも逃げる事は出来ません。
除外されるのは、200g以下の機体のみ。
実務でも趣味でも、該当するなら申請の必要ありと理解してください。

ここでのポイントは、「管理者から許可が出ているなら除外される」
つまり、実務で発生する太陽光発電所や工場の撮影も、敷地の中から撮影。
もちろん、自宅の庭なども問題なしと取れますが・・・
結論から述べると、許可を申請しないフライトは問題となる可能性が高いと考えてください。

真上からの太陽光発電所
申請が不要な例

←これは、届け出が不要な撮影例です。
ただし、離陸~撮影~着陸。
この過程の中で、30mルールに該当しない事が条件です。
仮に短編が60m以上確保されている敷地の真ん中からの垂直にフライトしアングルを固めるなら合法です。
しかし、敷地の周辺の道路に電柱があり、それが30m未満なら問題となります。
この例の場合は左の道路から30m以上離れないと、離陸出来ないことを意味します。

寄りの太陽光発電所
申請が必要な例

←これは、届け出が必要な撮影例です。
敷地内の電線は、道路上の電柱に向かっています。
この際に電線が30m未満となってしまっています。

周囲に民家が無い太陽光発電の場合も公道上に電柱は普通にあります。
畑の中の太陽光発電所を撮る場合も、この公道上の電線の関係から申請は必要と思われます。

構造物に近すぎる
申請が必要な例

←これは、届け出が必要な撮影例です。
離陸場所は、デッキ構造となり構造物に該当します。
デッキ以外は、断崖絶壁となりますが離陸は出来ません。
なお、別の場所から離陸しても、この場所に30mに近づくことが出来ません。

想像よりも高いところを飛ばなくてはならない

航空法改正

この電信柱は14m想定して書いています。
30mルールに準じると、45mの高さを飛行しないと問題とされることを意味します。
今回の改正では目視飛行も同時に義務づけされています。
しかし、小さな機体も30m確保の観点から比較的高い場所を飛ばなくてはなりません。
垂直上昇のみなら問題なし。
しかし、45m上空で100mストロークは・・・ファントムのサイズでは無理があります。

0 [Zero]は、ノーファインダーによる目視飛行のみを行ってきた空撮会社です。
そのパイロットをしても、ファントムクラスを45m以上の最低飛行高度を確保しつつ飛ばすのは困難で有るとさせていただきます。

60mの直径は易々と確保出来ない
60mの直径は易々と確保出来ない

四方を道路に囲まれて、そこに電線があると仮定すると・・・
直径60mの円の真ん中しか、離陸・着陸のポイントが合法とならない事を意味します。
これは、転々と住居があるようなエリアでも、申請をしないと飛行が出来ない事を意味します。
自分の庭でも、公道には電線がある事でしょう。
この電線から30m最低は離れないと離陸出来ないのですが・・・
普通の住宅の庭ではテストフライトは困難ですね?

この場所から離陸出来るか?
この場所から離陸出来るか? : その1

←この場所からドローンは飛べると思いますか?

答え=申請が必要

民家や電線からは30m離れていますが、畑にある構造物(ブドウ棚)が30m未満となります。
仮に土地の所有者に許可を取るとすると、「各々のブドウ畑の方からの許可取り」が必要です。
離陸後も、電信柱2本以上の最低高さの確保が必要なことは言うまでもありません。

この場所から離陸出来るか?
この場所から離陸出来るか? : その2

←この場所からドローンは飛べると思いますか?

答え=申請が必要

背後に柵が見えます。
これが30m以内なので許可申請が必要です。

この場所から離陸出来るか?
この場所から離陸出来るか? : その3

←この場所からドローンは飛べると思いますか?

答え=申請が必要

背後に柵が見えます。
これが30m以内なので許可申請が必要です。
仮に、この柵(赤白)が無ければ、この場所からは許可申請なしでも離陸可能と思われます。

まとめ:申請することが標準と考えるべき

上記は、0 [Zero]の事務所の周辺にて撮影を行いました。
日常的にテストフライトを実施してきたエリアです。
民家から十分な距離を置き、地形的に上昇気流が発生しやすいポイントであることから重宝してきました。
南風・西風・北風の条件下で数分の移動ですべて上昇気流の発生ポイントがあるという、テストには最適な環境です。
しかしながら、これからはテストフライト時にも申請する必要が出てきました。

このページは、ドローンを用いたプロが閲覧することが多いと思われますので掘り下げます。
プロである以上は、納品物が発生します。
客先に渡ると、そのデータは公になることがほとんどかと思います。
その際に、ストリートビューやグーグルアースを活用されると、「そのフライトは申請が必要なのか?」を後から検証される可能性があります。
さらに、申請の有無も基本的には誰でも閲覧可能です。
つまり、公開された動画や静止画から、それが改正航空法準拠かどうかが数分で調べられるという事です。

0 [Zero]の過去4年間のドローンを用いた空撮業務を調査した限りは、実務のすべては申請が必要という結論に至りました。
主な理由は、人との30mルールが該当します。
パイロットとアシスタントは関係者として、30m未満でも該当しません。(0 [Zero]の見解)
しかし、お客様は関係者としてカウントされないことから、30m以上離れる必要があります。

ここで、第三者の部分を補足します。
直接やりとりしている担当者は・・・関係者としても問題ないと思います。
それでは、社屋撮影をしている際に偶然通りかかった別の社員さんは関係者ですか?
偶然配達に来た宅配便のドライバーは?
0 [Zero]としては関係者の線引きは、フライト前にリスク説明が完了している方と解釈しています。
故に、マラソン大会の出場者は・・・第三者。
もしも、同意書を取っているなら関係者となるのでしょうが・・・裁判となれば負けますね?
ドラマ撮影の現場ではどうでしょうか?
撮影当日に急に決まったエキストラさんは、関係者ですか?(リスクを承知しているか?)
現場で、初めて顔を合わせる演者さんは・・・
重量機による事故は人命が失われるというレベルまで想定する必要があります。
2015年現在のドローンは、まだまだ発展途上と呼ぶべき危険な物。
第三者の解釈は、現状では甘いと考えています。
今回の改正により、第三者の財産と生命を守ると言う事で解釈は良いですね?
ならば、直接説明が出来ていない全ての方は、第三者と取らさせていただきます。
「書類にサインしているから~」では、それこそお役所仕事です。

話を戻します。
ほとんどの案件で、この第三者(0 [Zero]の解釈)が30m以内の条件でフライトしていると取れました。
つまり、「雪山の中の実景」などでもクライアントの立ち会いが無いというパターンしか、非申請で撮影出来ると取れませんでした。
ならば、今後はお客様に30m離れてもらうのかとなるのですが・・・電線や柵により結局は、30mルールに縛られる事になります。
故に、実務のすべては申請が必要という結論にいたりました。

つぎは、趣味のラジコンという視点から考えます。
ここも最低でも飛行場単位で許可申請が必要と取れました。
着陸エリアが、駐機場から30m以上離れている事はまれでしょう。
この駐機場に、フライト担当以外の方がいると、30mルールに該当します。
「飛行場のクラブ員なら関係者でしょう?」としたいところですが・・・
今回の改正を読み込むと、そのようには解釈出来ません。
あくまで、該当する機体のパイロットとアシスタントが関係者。
その機体とは関係の無いギャラリーは、30mルールに該当します。
そう簡単に検挙などと言う事態にはならないと思いますが、大手を振って遊びたいなら飛行場の代表者が申請することをおすすめします。
なお、30mルールは、都市部でも郊外でも同一です。
田舎の河川敷でも、2組以上がフライトする可能性があるなら申請することをおすすめします。

最後に、もう一度。
このページの主題は、「30mルールに基づいた許可取り」が主題です。
趣味も含めてマルチコプターのフライトは許可申請が必要である部分を掘り下げていますのでご注意ください。

公開日:2015/12/10
最終更新日:2015/12/10
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