ドローン空撮[技術解説] - リチウムポリマーバッテリー

リチウムポリマーバッテリー
KyPOM K6 35C 2600mAh

本格的な実務開始の準備として、動力用バッテリーを20本購入しました。
購入したのは中堅どころの普及品。
プロが用いるリチウムポリマーバッテリーとしては並以下のブランドを選んでいます。

0 [Zero]の、「いつも通り」なら、高級品(高性能)を用いて万全となりそうなのですが・・・
動力バッテリーに関しては考え方が少し異なっています。

・マルチコプターは絶対的な能力を必要としない
・高性能バッテリーは能力低下が突然やってくる(というイメージがある)
・重量増も、現在のところは無視できる(他に落とすべきところが散在)

機体開発が終盤にさしかかれば、「削り代」として高性能な軽量バッテリーに向かう可能性は高いと考えています。
しかし、開発初期は絶対的な性能よりも経験を積むことを重視。

ここまで(3ヶ月弱)に300回のテストフライトを消化。
その間に様々なトラブルが出ているのですがバッテリーに関しては一回もイベント無し。
マイナス10度の条件下にて、カバーをしなくてもフライトを行っていますが
感じられるような性能低下は無し(もちろん、テストとして)
また、価格が安価であることから、一線級のバッテリーよりはスペックも低め。

つまり、「実績」と、「低能力=高寿命」に魅力を感じ、テストで用いた物と同一銘柄を第一期の正式バッテリーとしました。

リポバッテリーの全数検査

全数検査

上空でのバッテリートラブルは即時墜落を意味します。
定期的な交換や、不安を抱える個体は使用しないことは当然。
プロであるならば、もう一歩の配慮が必要です。

重要部品であるバッテリーは自分の目で状態を確認するしか安心出来る方法はありません。
極論ですがモーターなどは、「ひとつ止まっても大丈夫(特定の機体に限定)」と言えます。
しかし、バッテリーや受信機などのバックアップを設定出来ない場所に関しては考えられる限りの配慮が必要です。

配線不良のリポバッテリー

配線不良のリポバッテリー

配線の付け根が「盛り上がっている」個体が多数確認出来ました。
この様なバッテリーは内部のハンダ不良が発生している可能性が高いと言えます。 仮に、不良レベルに達していなくても、明らかに不安を抱えていること明白です。

なお、今までにテスト購入している10本程度のバッテリーにはこの様な物は一切ありませんでした。
(故に、このメーカーを信用したとも・・・) 今回のロット特有なのか、今までがラッキーだったのかはわかりません。
しかし・・・
運用結果に、少しでも不安がある場合は2回目の購入がありません。

ハンダ不良のリポバッテリー

この出っ張りの原因はハンダ不良。
即時に危険があるのではないのですが運用中にトラブルの芽と成り得る不良です。
尖ったハンダが保護材を突き破り短絡。
可能性は少ないですが想定出来るトラブルです。

この様な部分は熱を与えすぎないように気を付けながら、尖った部分を修正しています。

絶縁不良のリポバッテリー

外観だけでは安心出来ない

これは少し怖いタイプの不良です。
矢印の部分のテープが少し足りません。
ギリギリ接着されているという状態。

こういうタイプのミスを放置(見落とす)メーカーの体質はチェックするべき。

こういうタイプの不良は外観からの発見は不可能。
発見にはここまで分解する必要があります。

なお、黒いスポンジも寸足らず。

リポバッテリー

何故、全数検査が必要なのか?

このページを見て、ご自分のバッテリーを点検することは自由ですがこれを元に販売店にクレームを出すことは避けて下さい。
私がチェックしたバッテリーは全て「正常品」です。
空撮業務を行う目からすると、「そのままでは使うことが出来ない品」となりますがホビー用途なら問題無し。

今回の20本は致命的(バッテリーの寿命までに具体的なトラブル発生)な個体はありませんでした。
マイナス端子のハンダ不良は不満ですが使えない範囲ではありません。
何故か、プラス端子には一切の問題無し。

今回のロットの中から、「不器用」な方が組んだと思われるバッテリーは即時にB級品に降格。
特に問題が見つからなかったバッテリーをA級とします。
さらに、ハンダの状態などが良い、「ベテラン」が組み立てたバッテリーをエースとして選別。
A級品以上は半数しか取れませんでした。

全数検査の最大の目的には選別にあるのです。

特に慎重の配慮を必要とれる実務で、迷わず選ぶ事の出来るエースのバッテリー。
数は少なくても、これを探していました。
高級なブランド品でも、最終的には全数検査が必要。
ならば・・・
普及品の中から、質の高い物を選別しても得られる結果はそれほど変わりません。

高級品の未選別より、普及品の選別品を選びます。

なお、B級品も実務には用います。
自分の手により修正はされていることから、大きな不安はありません。
しかし、A級品よりは工場内にて不要な熱が入っている事は容易に予測出来ます。
つまり、A級品よりも寿命を先に向かえる可能性はB級品の方が高いと言えるのです。

テストフライトなどにも積極的にB級品を使用。
常にA級品はストレスのない使い方。
B級品は積極的にストレスを与える使い方。
ここ一番ではエースの登場。

B級品が一本も寿命を迎えていないなら、A級品は安心して厳しい業務に採用出来ます。
全体の寿命判断の目安はB級品が最初に動作不安を起こしたタイミング。
これなら、シビアな実務の際に、トラブルを起こすことがありません。

コラム:プロが用いるリポバッテリーは、「黒」
A級バッテリーとB級バッテリー

A級B級の二つに分けられたバッテリーは最終的には黒い熱収縮チューブに収まります。
バッテリー台帳に記載されて、複数回の充放電テストに入る事になります。
もちろん、ここで不安な結果を出してくる個体は迷わず「捨てる」事になります。
初回の充放電テストで、「落ちた」バッテリーは迷わず捨てる事。
ここを迷うなら、ブロとしては失格です。

ここでの本題は、「黒いリポバッテリー」
これについて考えます。
色を黒くしているのはデザイン性からではありません。
キチンとした機能的な目的があります。

一般の方でも容易に推測出来るかと思いますが・・・
赤・青などでは撮影時に映り込みが入る可能性があります。
マルチコプターでは従来型のヘリコプターよりも被写体に接近する機会が多い。
さらに、映り込みの可能性が高まります。
仮に映り込みの危険性が無い仕事としても・・・
クライアントに改善余地があると見切られるのは都合の悪い事です。

プロが用いる三脚は一部の例外を除いて「黒」
これと理由は一緒ですね。
0 [Zero]が開発する機体はフレーム色も含めて「黒」を標準とします。
「つや有り」と、「つや消し」が選べるなら、同様の理由から、「つや消し」
「つや有り」の場合は表面をブラスト処理するのが理想と考えています。
現在の機体では金色のアルマイトなどで処理されているモーターを使っていますが・・・
いづれはこちらも対策を行う予定です。
機体の映り込みに気を使うのは一通りの開発が落ち着いた段階。
数年はそのレベルに至ること無いと言えます。
今の段階では出来る範囲から対策を行っていくという段階です。

本題に戻ります。
2012年2月現在はプロの多くはバッテリーを非改造(バッテリ内部の検査無し)で用いています。
まだ業務として軌道に乗っている業者が少ないからとも言えるのですが・・・
同業者としては少し心配です。
先行しているプロは「十分にテストをしています・・・」と記されていますが・・・
この一点からも、テストが不十分であることは容易に推測出来ます。

これを応用すると・・・
バッテリーの色を見ると、業者のポリシーが少しはわかるような気がします。

「黒」以外のバッテリーを用いている業者は安全意識が低い可能性が高い・・・

あくまで、可能性の話です。

このページをご覧になった同業者の方・・・
迷わず内部検査を行って「黒く」して下さい。
事故の可能性が少なくなる事は誰にとってもメリットです。
もちろん、0 [Zero]にとってもメリット。
誰かが大きな事故を起こしてしまうと、売り上げは目に見えて落ちる事になります。
安全に関するポリシーは業界内でシュアすることはとても重要と考えています。

公開日:2012/02/15
最終更新日:2014/04/16
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