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ドローン空撮[技術解説] - 選別落ちリチウムポリマーバッテリーの例

選別落ちリチウムポリマーバッテリーの例
テスト用リポバッテリ

テスト用として購入した、少数の動力(リチウムポリマー)バッテリーの中に選別落ち品が発生しました。
その選別落ち理由などに関して解説。

今回は、テストとして8本の購入です。
これは、数ヶ月後に予定されているバッテリーの入替候補としてテスト購入されています。
テスト目的は、品質の確認と実機でのフライトテスト目的から。
ここで良い結果が出た場合は、11月以降など外気温が低くなったタイミングで大量に購入を行います。

リチウムポリマーバッテリの製造年月
リチウムポリマーバッテリーを夏期に購入しない理由

今回の購入バッテリーは、2013年7月に製造されています。
購入は、9月初旬です。
店頭に入って直ぐに出荷されていることがわかります。
なお、8本全てが同じ月の製造ロットでした。
※該当店舗の在庫を監視し、新ロットが入ったタイミングで狙って発注しています。

ここまでロットに拘るには理由があります。
夏期の製造・流通では、高温によるダメージに不安がある。
リポは鮮度が命です。
何もしなくても能力は時間と共に低下します。
また、保管中の温度が高い場合も劣化は早く進みます。
これを避ける観点から、「店頭長期間在庫をさける」「夏期の製造ロットを避ける」などのポリシーが生まれました。
なお、0 [Zero]の事務所は、夏期の長期休暇などの際にもエアコンを止めません。
それは、バルーン空撮も含めて各種素材の劣化を防ぐ観点から。
これも空撮参入時からのポリシーです。

現在、メインとして用いているバッテリーは、昨年の12月に集中的に購入されています。
参考:50) リチウムポリマーバッテリー考察
ロットを揃えたいという観点から、複数の実店舗の在庫のロットを確認しながら揃えています。
購入直後のバッテリーを分解。
ロットを確認してから、店頭在庫の全てを購入しています。
これを大阪・名古屋・静岡のメジャー模型店で実施。
ここまで、リチウムポリマーバッテリーの質を揃える事に時間を割いています。

2年前の同様量バッテリーり
技術解説で取り上げる予定はありませんでした

今回は、リチウムポリマーバッテリーを技術解説で取り上げる予定がありませんでした。
撮影を行っていたのは、社内記録の為。
同じ製造元の商品でも、時間の経過と共に質は変わります。
その変化を記録する為のいつも通りの撮影です。

←なお、同じスペックのバッテリーは、2年前にも購入しています。
テストとして購入されて、実務には投入されていません。(内部検査が行われてないことから、オリジナルのパッケージ)
ページは起こしていませんが、メーカー・容量・ロットなど、様々な観点からバッテリーは大量に購入されています。

急遽技術解説で取り上げる事になったのは、「選別落ちが発生したから」です。
致命的な不良品ではありません。
あくまで、「疑わしい」という製品があったことから、テストも行わない=破棄 という判断をする事になります。
なお、このページなどを参考に、「販売元にクレームを出す」などと言う事は控えて下さい。
弊社が選別落ちという判断をした個体も、メーカー基準はクリアしているハズです。
恐らく、普通に使っても問題は無いと思います。
しかし・・・
可能な限り高い信頼性を必要とするプロの用いるバッテリーとしては不適格であったというだけです。
「プロの方には、同等の選別を実施する事を望みます」

怪しいリポ
ひとつだけ、収まりが違う

これが「疑わしい」と感じた個体です。
これ以外の個体には、矢印の位置にテープが一巻きされています。
8本中1本だけが、別の収まりです。
この一点のみで、「この個体が怪しい」と決めつけました。
※怪しいと感じたからこそ、分解前に個別に写真を撮っています。

怪しいリポ=予感的中
予感的中

左が正常品。
右がロット落ち。

矢印に部分には、マイナス接点の保護の為にフィルムが本来は付いています。
即時に、危険な状態とはなりませんが、長期使用の信頼性は確実に下がります。
新品直後のテストは問題無し。日々の業務使用でも問題無し。
ある日突然に、急激なトラブルを引き起こす。
この様な危険性を潜在的に持っている個体です。

ジャムったフィルム
フィルムは、ジャムッていました

フィルムは、この様に「ジャム」っていました。
フィルムは下に丸まっていたことから、本来の位置までカバーされていなかったのです。
ここまで内部検査を行えば、この様な信頼性の低い個体を選別することが可能です。

なお、このロットの半田付けは全て合格。
このメーカーの2年前は、品質が安定していませんでした。
この頃は、十分満足出来る品質と思います。(しかし、信用はしません)

さらに内部検査
選別落ちをさらに分解
この個体が、他の何かとは違う事は確定です。
不安材料を消す観点から、この個体は選別落ちとなりました。
※これ以降の、充放電テストにも回しません。

ここで、この個体の事を思い出しました。
燃焼テストの際に、不審に感じた個体です。
この個体は、さらに内部まで観察すると、「意味不明な文字」が確認出来ました。
その時の経験から、セル単体まで確認する必要があると感じ・・・
←ここまで、内部検査することになりました。
当然の事ながら、ここまで分解するとホビー用途にも使えません。
ここまで、内部を見ても特に問題と感じることはありませんでした。
この個体が、通常とは違う仕上げになったことの原因は不明です。
なお、各セルの電圧も問題は感じませんでした。

選別落ちリポに関する「まとめ」
まとめ
この個体は、通常と同等にパッキングはされます。
選別落ち品であることが記されて、通常用途からは外されます。
※燃焼テストや墜落テストに用います。

今回の選別落ち品に関しては、致命的な瑕疵は見当たりませんでした。
ただし・・・製造過程で、通常とは違う何かが発生している確証はあります。
この様な、僅かな兆しも見逃さないことが信頼性向上に繋がっていきます。
「疑わしきは、罰する」が、空撮のプロとしては必要な資質です。

コラム:リポ内部検査は、マネしましょう!

2013年の夏現在に、他社のサイトを拝見すると・・・
・撮影予約3日
・キャンセル費用
・機体使用料

これらが、提示されることが多くなりました。
この全ては、0 [Zero]のサイトからのマネです。
面白い事に、マネをされる方の多くは、新規の空撮参入者の方。
歴史を持った空撮会社は・・・ こんなところは真似ません。

料金システムなどは、その会社の特性に添った物であるべきです。
例えば・・・
0 [Zero]では、受注制限が時折発生します。
断る程に、仕事量があるからこそ「撮影予約3日」というシステムが出来ました。
意味も無く撮影予約をされると、必要とされている仕事もお断りすることになります。
故に、厳密なキャンセル料が設定されました。
空撮参入の初期には、撮影予約の限定も、キャンセル費用もなかったのです。
その時々の仕事量に応じて、現在のスタイルに至っています。
さらに、実際の撮影業務意外にも、このページのような無数の研究とメンテが実施されています。
これを根拠として機体使用料を個別に請求しています。
※もちろん、責任も取ります。

何を言いたいか・・・
「撮影予約日数を制限する程、稼働しているのか?」
「キャンセル費用が必要な程、他の仕事を断っているのか?」
「機体使用料を請求するだけの、ブロの整備を施しているのか?」
通ってきたからわかる道です。
新規参入の状態で、0 [Zero]と同等の料金システムは示するのはムリがあります。

本題に戻ります。
新規空撮参入者は、ご自分の都合の良い部分のみをマネしてきます。
このページのリポバッテリーの内部検査の様な、本当にマネして欲しい部分に関しては、ほとんどの方が無視しています。
空撮という仕事は、「ポリシーを問われる仕事」です。
2013年9月の現在は・・・
リポの内部検査を実施しているかが、その会社のポリシーを計る格好の材料です。

公開日:2013/09/10
最終更新日:2014/03/20
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