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ドローン空撮[技術解説] - 3Dプリンタ打ち出し部品を信じるな!

3Dプリンタとマルチコプター

マルチコプターに用いる3Dプリンタ打ち出し部品に関しての注意点。
DIYの場合も、市販品購入の場合も空撮機材なら注意が必要です。

※3Dプリント出力サービスなどを用いる場合は、問題無しと思います。(保証はしませんが・・・)

注意:
このページは、2014年現在の安価な3Dプリンタ(FDM・10万円以下)を想定して書かれています。
FDMでも高級機材の場合や、「安価なFDMでも十分な知識を持ち合わせた手練れなら問題無し」
趣味とその延長の空撮機材としての3Dプリンタ打ち出し部品に絞っての警告です。
時間の経過と共に状況は良い方向に変わります。
この点を注意して読み進めて下さい。

Z軸の時間コントロールが重要

上記にて、「「安価なFDMでも十分な知識を持ち合わせた手練れなら問題無し」と述べています。
ここでの、十分な知識は、以下に回答が出来るかで計ります。

Q1:Z軸の移動速度が「早い」モデリング打ち出しには、どのような弊害がありますか?

Q2:Z軸の移動速度が「遅い」モデリング打ち出しには、どのような弊害がありますか?

この二つに適切(空撮機材に用いるという前提)に回答出来るなら、問題無いと思います。
これに答えられないなら・・・
空撮部品は打ってはいけません!
一歩間違えば、想定外の部品破損=墜落事故が発生する可能性があります。
部品の破損が人身事故になる可能性が高い空撮機材であることから、通常の3Dプリンタ運用等違うポリシーが必要です。

Z軸の移動速度が「早い」と形にならない
Z軸の移動速度が「早い」と形にならない

Q1:Z軸の移動速度が「早い」モデリング打ち出しには、どのような弊害がありますか?

A1:形が崩れやすい

3Dプリンタ(安価なFDM)を使いこなそうとすると、ぶつかる壁です。
ネットで探しても情報は簡単に出てくると思います。

←これが、具体的な失敗例。
①と同じ形状で②・③と打ち出します。
②はサポート材で埋もれていますが正常です。
問題は、③の形状。
X軸・Y軸の移動量が少ないことから短時間にZ軸の移動が発生。
ひとつ下のZ軸の形状が固まる前に、新規のZ軸を打ち出すことからタレが発生。
一度でもタレが発生すると、そこで形状が崩壊することから、それ以降の造形は失敗。

これを防ぐには、Z軸の移動時間を稼ぐ、ダミーをどこかに置けばOK。
この様な事は、一般的な3Dプリンタの打ち出しでは日常的にあり得ること。
失敗が目視出来ることから、空撮用途の3Dプリントとしては大きな問題にはなりません。
※この事は、ネットで調べても簡単に出てきます。

Z軸の移動速度が「遅い」と強度が落ちる
Z軸の移動速度が「遅い」と強度が落ちる

Q2:Z軸の移動速度が「遅い」モデリング打ち出しには、どのような弊害がありますか?

A2:強度が落ちる

ここからが空撮パーツに3Dプリンタを用いる場合のポイントになります。
量産をすると、設計時の強度が出てこない。

←これが、具体的な失敗例。
1個を造形=問題無し
10個を造形=強度不足

テーブルの精度やフィラメントの製造品質の確認。
打ち出し時の温度・湿度管理の徹底。
様々な、条件を整えても10個同時打ちのパーツは強度が出てきません。
行き着いた、答えは、「Z軸の移動速度が遅いモデリング打ち出しは強度が落ちる」でした。
気がつけた切っ掛けは、プリンタの一時停止機能。
この一時停止を行うと、その部分の強度が著しく落ちることが確認出来ました。
つまり・・・
ひとつ下のZ軸を打ち出してから、一定時間が経過すると基材の結合が弱まるという事です。
フィラメントは、高温にて打ち出されます。
それが、空間に出てくると温度が下がりつつ硬化。
適切に下がらないと、ラン(垂れ下がり)が発生。
温度が下がりすぎていると、適切に張り付かない=強度が落ちる
この様なメカニズムです。

なお、この現象は、多くの3Dプリンタ使用者は気がつけません。
0 [Zero]が、ここに気がつけたのは、破断ヶ所を任意に設定するという研究から。
研究を進めていたのは、「どの程度の力で、どこを壊すか?」
この様な事を研究していたことから、この微妙な強度の変化に気がつけました。
ここに気がついてから、同様な情報をネットで探るモノの・・・
同様な考えは出てきませんでした。
それもそのはず。
この様な方向からの3Dプリンタを研究するという必要性は普通はありません。
安価なFDM・3Dプリンタにて、安全・軽量な空撮部品の完成品を製作するという仮定で問題となります。

心配なら、丈夫に設計するが吉
破壊したスキッドパーツ

大量生産品も、強度テストに掛けること!
以下は、これがされていると言う前提にて話を進めます。

マルチコプターで3Dプリンタ打ち出し部品が使われそうな場所。
それは、3軸ジンバルです。
「特定のカメラに対応させたアーム」などが該当します。
このアームで怖いのが、「ジンバルとしての強度は問題無し。しかし、ある日突然ポキッと折れる」などという現象です。
FDM打ち出しのパーツを実際に壊すと、よくわかるのですが、一定以上の力が入るとポキッといきます。
そこまでは、しなり量も少なく耐えます。

・モデリングデータの販売・無償提供
・ショップオリジナルのFDM打ち出し部品
・飛行場仲間が製作したパーツ

全ては、想定以上の破断テストをフライト責任者が全数テストしてから責任を持って部品を採用していください。
「十分なテストしています」などという言葉は信用しないで下さい。
実際に用いるパーツで破断テストは実施しないと意味がありません。
2014年現在の安価なFDM(3Dプリンタ)打ち出しパーツは、信頼性が低いと決めつけて構いません。

3Dプリンタ雑談

3Dプリンタ内の温度

←3Dプリンタ内の温度を計測する温度計。
熱可塑であることから、プリンタ内の温度は監視する必要があると感じ、導入直後に取りつけました。
導入から一ヶ月以上が経過しましたが、この部分に関して必要なデータが取れました。
da Vinci 1.0は、プリンタ内の温度が50°でも問題無し。
※室温28°にて1時間程度の造形時間の最大温度

低温方向は、導入した時期(5月末購入)の関係から試すことが出来ていません。
現時点での経験からは、冬期も問題無しと推測しています。

3Dプリンタの保温

今回の、「量産すると強度が落ちる」のは、打ち出し後の温度が下がってしまうことが原因。
冷却ファンの回転数を落とすなどと言う制御以外にも、庫内温度を意識的に上げるというアプローチもあるかと思い、このような事もテスト。
もともとは、遮音目的だったのですが、結果としてプリンタ内温度上昇のテストも兼ねることになりました。
結果は、50°程度の温度では問題無しとなりました。

0 [Zero]の事務所では、この状態での稼働が日常になっています。
騒音に不満がある場合は、お試し下さい。
なお、事務所内は、樹脂素材が多い事から、夏場でもエアコンを切らない事としています。

テストピース

←これが、購入直後に打ち出したテストピース。
プリンタのX軸Y軸の精度と、各種設定項目の変化による重量と強度の確認を行っていました。
この様な事を第1優先に行っている事が、0 [Zero]らしいとも言えます。

そして、初期の感想。
この3Dプリンタは、非常に安価です。
Amazonなどで、7万円を切る価格にて販売されています。
その前提で、打ち出し部品を評価すると合格。
※後加工を前提とした空撮部品として

公開日:2014/07/05
最終更新日:2014/07/07
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