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ドローン空撮[技術解説] - オクトコプター初フライト

オクトコプター初フライト
キャプチャ画像

評価に困る・・・

2012年4月17日に、オクトコプターが初フライトを行いました。
※このページの制作は4月18日

0 [Zero]としては初の完全自社設計且つ、初のオクトコプター。
マグネシウムフレームや可変重心。
折りたたみ可能なラダーフレームなど、試験的な要素が満載された機体です。

当然ですが十分な考察の結果を形にしています。
当初はDSLR機として設計。DSLR機の開発凍結により、サイズを落としたのがこの機体です。
初フライトに不安など無かったのですが・・・

フライト性能が良すぎで評価に困っています。

・重量:2,000g以下 2.0kgクラス6モーター(第一期大規模改修済み)と同等
・モーター:FSD2830 2.0kgクラス6モーター(第一期大規模改修済み)と同等
・プロペラ:9インチGWS3枚 2.0kgクラス6モーター(第一期大規模改修済み)は10インチ
・配線類に無駄な重量
・高度計非搭載
・スキッドは半分搭載

重さは同一で、プロペラ性能は劣る。
重心関係はカメラつり下げ式としては理想的。
フレーム構造が同様なら、ヘキサコプターとオクトコプターの純粋な比較となるのですがフレーム構造は別物。
上空フライト時の第一印象を言葉で表現すると・・・
これなら目隠しでも飛ばせる!でした。
機体はパイロットが打った舵に正確に反映。
この精度が一桁上がりました。
あまりに精度が高いことから、機体が見えなくなっても計算だけで機体を呼び戻せます。
今までも、十分な、「寄り」を行っていますがこのレベルをひとつ上げることが可能になりました。

この機体に何か問題はあるのか?と自分に問うと・・・

何も無しとしか答える事が出来ません。
具体的に「悪い」と指摘出来る性能項目が何一つ見つからないのです。
最初期のプロトタイプなどトラブル噴出で当然なのですが・・・
初フライトから、妙なオーラを発している機体になってしまっています。

悪いところを、「改善」して性能アップを図るのが当然の流れなのですが今回だけは違います。
「このまま大きくすればDSLR機のベースは完成」というところまで、初フライトから到達してしまっています。

個別に機体性能を解説します。

折りたたみ式オクトコプター

1:折りたたみ可能

0 [Zero]のサイトで、「折りたたみ」などという記述が出るのは初めてです。
これは基本性能が一定レベルに達していないのに、折りたたみを考えるのは無意味という観点から。

左右のアームはネジ1本で折り曲げられる構造になっています。
このネジはスキッドの取り付けも兼ねていることから、プロペラを外しネジを4本緩めれば変形完了。
この構造で、10インチ対応のオクトコプターまでは収納可能であることは当初から計算済み。
今回の機体はマグネシウムフレームの軽量化メリットを試す為に、9インチ対応で設計しています。

このケースの大きさがバルーン空撮と併用できるギリギリの大きさ。
関連器機も含めて2セットまではバルーン空撮専用車両に搭載可能です。
つまり、この機体を実用化出来た段階でバルーン空撮とマルチコプター空撮の併用が実現されます。
地味な性能ですが0 [Zero]の実務では非常に大きな意味を持ちます。

雷雨直前の折りたたみ式オクトコプター

2:段違いラダーフレームによる視認性の確保

前後のフレームは視覚的に通す。
左右のアームを前後通しのフレームの上に取り付けることにより実現しています。
これは上空での通り精度を確保するという観点から。
敢えて通しのスキッドは付けていませんが良好な視認性であることは実フライトにて確認。

ただし・・・
視認用のスキッドを持つ、高機動タイプの方が総合的には視認性に優れます。

スキッドが無くても良好な視認性はこの次の展開を予想してから。
DSLR搭載機ではCMや映画の撮影が本業。
これらの現場では想定出来る最大限のフライトテクニックが要求されます。
機体のフライト経路と、カメラの方向は厳密に指定されるのが当然。
場合によっては上空にてピントやズームも発生。
ここまで来ると、一人のパイロットで全てをこなすのは不可能です。
この段階でハリウッドスタイルのスキッドレスを採用。
パイロットは指定経路をトレースすることに専念。
カメラマンが全てのカメラコントロールを外部モニタにより担当。
そのハリウッドススタイル・スキッドレスの視認性向上が目的です。

結果は狙い通り。
スキッドレスのオクトコプターとしては十分な視認性。

ステディカム・グラインドカムに対応

3:ステディカム・グラインドカムに対応

機体中心にはフレーム材が存在していません。
バッテリーマウントを外せば、カメラから通しのステディカムが搭載可能。
静バランス・動バランスの観点からはグラインドカムと呼んで良いでしょう。
機体設計の初期から、ここはDSLR搭載機としては譲れないポイントでした。

ジンバルはあらゆるタイプが搭載可能。
ラダーフレームのメリットのひとつです。

一般的な放射線状のフレーム構造と比べると、ラダーフレームはモーターからカメラまでの振動伝達距離が長い。
これもマグネシウムフレームによる減衰を狙ったコンセプトでは有効な構造です。

ポイント=振動は距離が長いほど減衰する。

初フライト時は一般的に「防振材」とされるいっさいの材料を用いていません。
カメラ単体の振動は(フラフラと揺れる)は問題でしたがローリングシャッターは微量です。
プロペラは精度の低いGWS9インチ。
APCやGWSの10インチなら・・・

可変重心コンセプト

4:可変重心コンセプト

この初フライト仕様ではバッテリー直下にジンバルの支持軸を設定。
カメラの自重で水平を保ち、揺れはダンパーで押さえるという設計です。
初フライトの状態ではフラフラとカメラが揺れてしまい失敗。
ダンパーのチューニングか、制御サーボを用いるかの検討中です。
もしくはグラインドカム構造か・・・

初フライト仕様の最大のポイントは「可変重心コンセプト」
一定の方向に機体が進んでいる場合はその方向に進むのに最適な重心位置にマルチコプター自身が変形するという代物です。
仕組みは上記のカメラのつり下げ方法に準じています。

前進として例えます。
機体が前に傾くと、ジンバルは自重により地面と垂直になる。
結果として、重心は機体の進行方向に移動。
モーターのパワーはずれた重心を補正することではなく、進むことにより多く使われる。
従来型構造の場合は前進時は重心に後ろに動きます。
これはとても不自然と感じての可変重心コンセプトの実体化でした。

コラム:それは本当に「画期的なのか?」

2012年現在、世界中のマルチコプターに関するサイトでは、「画期的」「独創的」「新構造」などの単語が乱舞しています。
それが本当に画期的かと言われると・・・

個人的には「カラーバリエーションのひとつ」としか感じません。

それら自称「画期的」を拝見して、本当に「凄いな~」と感じた例は一例のみ。
それ以外は視覚的に奇抜で有ることを狙った(狙っていなくても)商品のみ。
多くは実性能への影響は微妙という「画期的」
なお、今回の機体の自己評価は可変重心コンセプト以外は、「普通」
可変重心コンセプトが成功すれば「画期的」の表現を用います。

なお、本当に「画期的」且つ「有効な性能」なら特許取得に動くのは当然の事。
特許出願をしていない段階で、その技術は、「独創性が無く」「実務で効果がない」事の証明をしてしまっています。
本当に使える技術なら、特許出願が当然の流れ。
0 [Zero]でも、本当のところは一切公開せずに特許出願を行っています。
※本命の特許出願内容は当分は非公開。

なお、このページにて機体の詳細を書いていると言う事は・・・
これらには特許性無しと言う事を意味しています。
もしくは・・・ 特許請求項に含まれているのカモ知れません。(真似をするときは気を付けてください)

マルチコプターの世界で本当に「画期的」は今後も出現しないと思っています。
視覚的には、「画期的」は出てきますがそれは実性能に影響が少ない物。
複数のモーターで浮力と推進力を得るという基本部分は既に「詰んで」います。
私も含めて、そのカラーバリエーションを増やしているに過ぎません。
ただし・・・
カラーバリエーションにもセンスの差が出ることは言うまでもありません。
マルチコプターという素材の味を引き出せるバリエーションを如何に引き出せるかが勝負です。

このマルチコプターの基本を理解しないまま、バリエーションを増やすのは全く持って意味が無いところ。
薄々とは感じていましたが初フライトで確証しました。
マルチコプターはオクトコプター一択
このオクトコプターの諸性能を如何に洗練させるかが0 [Zero]の今後の動きとなります。

◆同業者向けの重大なヒント
「ヘキサコプターのラダー精度に不満がありませんか?」
オクトコプターなら、構造的にこの問題を解決してくれます。
私もヘキサからスタートしていますので、「オクトにすれば、良くなるのだろうな・・・」と思っていました。
初フライトの結果は、「やはり」でした。
ヘキサコプターとしては、「小さいプロペラと軽量機体」
これは対風性能も含め安定性という観点からは不利な条件。
上空のラダー操作は映像を乱す大きな要因であるために操作は慎重に行っていました。
もしくは撮れないと諦めていました。
他社はラダー起因の姿勢の乱れは、「放置」もしくは、「気づいていない」と解釈していました。

実務に例えると・・・
ゆっくりと走行している車両を後方から追い越しながらパン。
そのまま、上空まで引き。
この様なフライト動作をすると、パンの瞬間にどうしても映像(機体)が乱れる。
通しのまま、一連の撮影が出来ない・・・
※カメラは別軸とするハリウッドスタイルなら可というツッコミは無しで・・・

今回の2.0kgクラスオクトコプターなら、この操作が一発で決まります。
例では車両に例えましたがこれが人物でも可。
今まで(ヘキサコプター)が何だったんだ・・・と言うほどにあっけなく・・・

オクトコプターはカメラ操作に有利という意外にも、フライト安全能力も高い(こちらが本命)
映像は綺麗で、安全になる。
やはり、プロはオクトコプター以外の選択肢が無い事が確認出来ました。
この点に関しては積極的に0 [Zero]のマネを推奨します。

公開日:2012/04/18
最終更新日:2012/12/06
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