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ドローン空撮[技術解説] - Amazon Prime Air

α7とα7R

様々な産業にマルチコプターの採用が検討されています。
Amzonから発表されたドローンは、究極の用途とも思える「宅配」。

ここでは、宅配用途のマルチコプターという視線で解説を行います。

故意に落とされないか?

2013年現在は、マルチコプタージャマーを用いれば落とせます。
しかし、正式サービスまでには対応可能です。
十分な資金力を持って、本気の大企業が参入すれば・・・
0 [Zero]などを含めた、バックヤードビルドーは瞬殺。
DJIクラスも生き残ることは出来ません。

仮に、彼らが本気だとすると・・・
圧縮出来る物流コストと比べれば、マルチコプターの開発コストなど微々たる物です。

そこで、質問。
Q:故意に落とされないか?
A:次世代のジャマーを用いなければ落とす事は出来ない

この様に予想します。

投石などで地上からの物理的な妨害では、落とすことは困難です。
宅配予定地までは、高度200m程度で飛行。
予定地の上空から降りるという制御にて、飛行中の妨害のほとんどは防げます。
有効と思える「撃墜」方法は、ラジコンをぶつけるという方法。
マルチコプターでは、速度面で不利なので飛行機タイブが撃墜手段としては普及する事でしょう。
どちらにしても、非合法手段である事は言うまでもありません。

本当に安全か?

この点に関しては、声を大にして抗議して良い部分でしょう。
ペイロード2kgで、フライト時間は30分以上。
物理的には2013年現在でも制作可能ですが、「落ちたら人身事故が発生する重さ」になります。
サービス開始が5年後と仮定しても・・・
バッテリーもモーターも、2013年現在で、「詰んでいます」
劇的な性能向上は期待出来ません。
彼らは、5年程度で実現すると言っていますが・・・
個人的には、実現は遙か先と考えています。

仮に、0 [Zero]が基本仕様を固めているとすると・・・
・全てのモーター回転数の監視
・GPSを用いない自律飛行システム(映像視差など)
・高高度からの落下を想定した安全デバイス
・直下付近の人感センサ
・飛行中に積み荷が動く事(重心移動)を防ぐシステム
こんな事を考える事になります。

開発リーダーの技量

マルチコプターは、外観からある程度開発者の力量を予測することが可能です。
Amazon Prime Airの画像から推測出来るのは・・・
・素材関係の知識が低い
・空物のラジコン経験値が低い
・マルチコプターの基本的な物理特性の理解が浅い

一言で言うと・・・
「リーダーはチェンジしましょう」
以下で具体的に説明します。

◆フレーム=アルミ
使用用途から考えると、「フライト時間は長く、ペイロードは多く」という機体です。
稼働時間も長く、十分な開発と製造コストが与えられる事から・・・
フレーム素材は、カーボンとマグネシウムで悩みます。
これらよりも比重の高いアルミをフレーム材として用いる理由が見当たりません。
開発者は、「初期プロトだから・・・」と言うかも知れません。
そこは明確に否定します。
「初期から本命の素材にてテストするのが当然」です。
2013年の段階で容易に採用が出来る軽量部材を初期プロトで用いないという理由の検討がつきません。
もしも、0 [Zero]が設計しているなら・・・
フレームは、M1マグネシウムを推奨します。
理由は、「ダメージがフレームに残るから」
カーボンでは、パイプが潰れても「見た目は正常な状態に戻ります」
これでは、現場の人員がフレームにダメージが入っていることを見抜けない。
一方のマグネシウムでは、外部からダメージが入ると潰れた形状から戻りません。
アルミにも同様の特性がありますが、マグネシウムの方が遙かに軽い。
デメリットは、入手性の悪さですが・・・一般機では無いので問題とはなりません。

◆空物のラジコン経験値が低い
もう少し具体的に言うと、「ラジコン飛行機を飛ばした経験が無い」方です。
開発者は、ロボット工学出身と推測します。
確かにドローンなので、飛行機の知識は無くても良いと思えるのですが・・・
電費を下げて配達時間を短縮するのに、ラジコン飛行機の知識が必要です。
具体的には、「空気抵抗が大きい機体形状はデメリット」と指摘出来ます。

◆マルチコプターの基本的な物理特性の理解が浅い
「M2とM3のZ軸方向のオフセットが説明出来ない」
これが具体的な指摘となります。
優秀な設計者が入っているなら、形状の全てに意味が持たされています。
意味も無く、重量が増えたり、耐久性が落ちるような設計は排除するのが当然です。
また、ロスが無視出来る範囲でも、精神的に落ち着かない形状は避けるのも当然と考えます。(0 [Zero]が、このタイプ)
過去に、M1マグネシウムを、「打つ」という段階から、オクトコプターをフルスクラッチした眼で眺めると・・・
Amazon Prime Airの初期機体には、「機械としての凄味」を感じません。
使用目的が物流なので、空撮目的の機体形状と異なるのは、ある意味当然。
私が設計者なら、前進移動に特化した凄味のある機体は開発出来ます。
例えば・・・流滴型のフレームとか、移動時に用いる双胴のタグデットファンとか・・・

現在の開発チームは、制御系エンジニアが多いという事なのでしょう。
この制御系エンジニアがフレーム設計などを行うから・・・この様なポリシーを感じない機体が出来てしまいます。
ある意味「制御に関する開発代は、直ぐに詰みます」
そして、制御系のエンジニアは求人広告にて確保することが可能です。
この手の、新規分野の機体開発で鍵を握るのは、フレーム設計が出来るエンジニア。
リーダーは、ロボット工学系では無く流体力学出身のエンジニアが取る方が結果が出ると思います。
どこ出身でも、頭が柔らかいことは必須の能力です。

マルチコプターで物流は可能か?

水路・陸路での自動化は、私も認めます。
しかし・・・空路での物流分野での採用は、当分はダメですね。
まずは、自動車などから無人化はスタートでしょう。
そこで、様々な問題をあぶり出してから、空路に進出。
少なくとも30年間は、このサービスは封印すべきと考えます。
30年もあれば、空撮・調査などでマルチコプターも完成度を上げることでしょう。
法整備も、万が一のトラブル時の動きも納得出来るレベルになってサービス開始です。

オクトコプター
コラム:これは偶然なのか?

←この試作機が掲載されたのは、2012年4月の事。 Amazon Prime Airが発表される、20ヶ月前に遡ります。
この機体が、Amazon Prime Airのオクトコプターと極めて類似点が多いことがわかりました。
・角パイプフレームのオクトコプター
・スキッドの収まり
・横方向のフレームの収まり
・可変重心

物流でマルチコプターを用いる場合のポイントは・・・
・安全
・ペイロード
・飛行時間

「安全」は、オクトコプターにてクリア。
ペイロードと飛行時間の向上には・・・
「可変重心」が極めて有効です。

荷物の重さは変化する。
その荷物の重心点は一点では無い。
そして、どの重さの荷物でも可能な限りモーターの効率を上げたい。

この全てを叶えるのが、可変重心コンセプト。
そして、可変重心を容易く実現できるのがラダーフレームです。
目的がひとつなら、形も似通ってくる。
これは、納得出来るのですが・・・
Amazon機には機能を伴わない不可思議な形状が確認出来ます。
キャプチャ画像

それは、横フレームの不自然な段差です。
※上記したモーターのZ軸オフセット。
←写真の右方向に向かうフレームが、前後の通しのフレームの上に乗っています。
ここは、普通の設計者なら乗せずに、同じ高さで引いてきます。
それは、フレームの先に来るモーターの高さを揃える観点から。
初期のマルチコプターのフレームは、DIY比率の高い物でした。
技術の低い素人が制作したオクトコプターは、この様な段違いのラダーフレームとなる事もありました。
2013年現在では、この様な単純なラダーフレームは製品としては姿を消しています。

0 [Zero]のオクトコプターは、空撮用途として設計されています。
この時の段違いのフレーム構造には、明確な採用理由がありました。
2名体制の機体となった場合の、目通しのしやすさ重視。
これが、折りたたみ以上に必要な性能でした。
大型機で、パイロットとカメラマンを分業。
カメラは、機体の中心に可変重心として搭載。
スキッドは、離陸と共に排除。
パイロットが上空で綺麗な直線を出すのにスキッドか使えない。
この代わりとするために、前後のフレームを通すという設計コンセプトです。
つまり、空撮屋の都合で、段付きラダーフレームとなっているのです。
0 [Zero]でも、今後は2名体制の大型機を制作しますが・・・
スキッドレスの段付きラダーフレームになると明言させて頂きます。
段違いラダーフレームによる視認性の確保 公開日:2012/04/18

ここで、Amazon機体の画像を拝見すると・・・
同様に、フレームの段差有り。
そして、モーターはZ軸方向に不自然にオフセット。
十分な開発費用が用意されている機体としては、設計が明らかに不自然です。
そして、このページからも参照しているフライト中のYouTube動画。
そのフライト姿勢は、「軽いペイロードで、ゆっくりと移動」していることが見て取れます。
明らかに狙って、追い風に乗せているという機体の傾きです。
ここから、感じ取れるのは・・・
Amazonのオクトコプターは、可変重心タイプでは無いかという疑惑です。
Amazonが本気で動くなら、特許等で権利を固めるのは当然の事。
特許は、出願前に公開してしまった段階で特許性を失う。
今の段階では可変重心であることを隠したいと取れました。

このページが0 [Zero]のサイトで公開されたのは、2012/04/18です。
これ以前に、Amazonが特許を申請していないと・・・特許性は無いという事になります。
もしかすると・・・
私は、とんでもない失敗をしでかした可能性があります。
2011年の段階で、物流用途を想定した可変重心のマルチコプターに関する特許を出していたら・・・
もったいないことをしました。

それにしても・・・
物流分野での早期のマルチコプター参入は、想定していない分野でした。
そろそろ次の特許を出すタイミング。
今日思いついてた、物流特化機の特許を今出すか・・・・
少し悩んでみます。(主に資金面の関係からの悩み)

公開日:2013/12/03
最終更新日:2014/01/16
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